『偽装請負』とは?~みなし制度にご注意を!~

前回の解説にて『みなし制度』の概要と違法派遣について触れました。
本解説では『偽装請負』についての解説をします。知らず知らずのうちにこの状態になってしまっている企業も少ないくないので、IT・クリエイティブ系の企業はリスクヘッジとして把握されることをオススメします。

 

前提として・・・

○「いわゆる」偽装請負「等」
厚生労働省・労働局などからの通達や解説を見ると「いわゆる偽装請負等」という表記で記載されていることが多いです。
今回の『みなし制度』においても同様の表記が見受けられます。

なぜ『偽装請負』と表記せず、「いわゆる偽装請負等」と濁し気味に表記されるのでしょうか。

これは「偽装請負」「偽装派遣」「仮装委託」など、発生している状態は同じであっても、言葉上では様々な表現・呼び方が存在していることが大きな要因となっています。
つまり『偽装請負』というのは総称に近いもので、実際に『みなし制度』に該当するかどうかというのは実態を勘案して判断することとなります。

ですので、契約の名前で判断するのではなく、「自社で雇用していない方に対して業務を依頼している」すべての企業の方が気をつけなければいけない内容と言えます。

○『みなし制度』が適用されるタイミング
前回解説した各違法派遣については、その派遣就業があったら即『みなし制度』が適用されます。
一方『偽装請負』の場合は、下記のような適用の流れとなります。

・派遣を免れる目的などの意思が介在した上で『偽装請負』を開始した場合
例:派遣は、派遣免許を取得している企業との契約が必要になるので、「請負契約」で取引をする

・免れる目的はなかった場合でも、『偽装請負』に該当する状態であると認識が生じた場合
例:労働者や労基署などからの指摘があって、状況的に『偽装請負』であると認識した

なお、後者の場合については、認識したタイミングが「就業開始前」であればその日から、就業開始後であればその翌日以降より適用されることになります。

つまり、『みなし制度』は適用までに猶予が設けられています。
その点からも、今一度確認をし、必要があれば体制の見直しなどを図ることが大事です。

 

『偽装請負』はどんな状態?

「注文者」「請負人」「労働者」の3者の関係性において、正常な「請負」は下記のようになります。
・「注文者」「請負人」間で請負契約が締結
・「請負人」の指揮命令/労務管理のもと、「労働者」が業務を遂行する

派遣との一番の違いとしては、「指揮命令・労務管理」が「請負人」~「労働者」間となることです。

20151209a

これに対し、『偽装請負』とみなされるのは下記のようなケースとなります。
(比べると一目瞭然ですので、派遣の仕組みも掲載します)

20151209b

つまり、「注文者」から労働者に対し直接の指揮命令や労務管理が行われた場合、実態は「派遣」であるにも関わらず「請負である」と「偽装」している=『偽装請負』と判断されることになります。
そして「派遣」であるにも関わらず派遣契約を結んでいないので『違法派遣』となってしまいます。

よって、「注文者」は『違法派遣』を受入していた企業として「労働者(派遣スタッフ)」を直接雇用する義務が発生します。

 

『多重請負』の場合は?

請負業務では、請けた会社が制作を行うのではなく、さらに他の会社などへ業務を依頼することがあります。
いわゆる下請け、孫請け・・・と呼ばれるものです。
世間からの批判的な見方により最近ではあまり表には出てこないですが、実態としては、まだまだIT業界などでも散見されています。

この場合でも、やはり『偽装請負』が発生するケースがあります
『偽装請負』の概念としては前述のものと同じで、「注文者」などからの直接の指揮命令・労務管理などが行われた場合となります。

では、「注文者」→「元請負人」→「下請負人」の関係性の中で、どの企業に『みなし制度』が適用されることになるのでしょうか。

結論としては、下記の通りです。
・『みなし制度』は「元請負人」に適用される
・「元請負人」~「注文主」は、『労働者供給(職業安定法)』に違反

20151209c

『多重請負』の際は更に気をつけなければいけない点があります。

・『みなし制度』が適用され、「元請負人」が労働者を雇用した
・「注文主」からの直接の指揮命令・労務管理が継続している

この場合、上の図では「下請負人」~「元請負人」間で『偽装請負』だったものが、今度は「元請負人」~「注文主」間で『偽装請負』が発生していることになります。
結果、「注文主」に『みなし制度』が適用されることになります。

○『二重派遣』の場合は?
『二重派遣』は『多重請負』に非常に近しい形態となっています。

20151209d

もし『二重派遣』が発生した際、『みなし制度』はどのように適用されるのでしょうか。

実は『多重請負』とは違い、『二重派遣』の場合は『みなし制度』は適用されません
「派遣元」~「派遣先」間で「派遣契約」が成立しているため『偽装請負』が成立しないためです。

※繰り返しですが、『偽装請負』は、実態は「派遣」であるにも関わらず「請負」と偽装していることを指します。

ただし、そもそもの話として『二重派遣』は『職業安定法第44条』に違反する行為となりますので、同法に基づいて罰則が適用されることになります。
(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)

 

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