【後編】アメリカのスタートアップ企業インタビュー~採用・社内環境事情~

【後編】アメリカのスタートアップ企業

世界中でもっとも注目されている語学学習アプリ「Duolingo」のシニアエンジニアとして働く嶋英樹(しまひでき)氏に、アメリカのスタートアップで働くことについて徹底インタビュー。後編の今回は、採用や社内環境などについてです。日本とアメリカの両国で働き見えてきたものは、実力主義の採用プロセスと会社にいることが楽しいと思わせるコミュニケーションの仕組みでした。

>>前編(~ビジネス収益化のしくみ~)はこちら

【プロフィール】
嶋 英樹(しまひでき)
嶋英樹氏
1981年東京生まれ。早稲田大学卒業後、単身渡米。米カーネギーメロン大学コンピュータサイエンス学部にて博士号取得。
現在Duolingoのシニアソフトウェアエンジニアとして活躍中。

 

博士号保持者も多い、Duolingoの入社試験の裏側とは?

―大学の研究室からスタートアップに入る人もなかなか珍しいと思いますが、どんないきさつでDuolingoに入社することになったのでしょうか?

嶋:もともとカーネギーメロン大学のコンピューターサイエンスの博士課程にいる間、教授の下でサブとしてクラスを教えるティーチングアシスタント(TA)をしていました。その時の教え子がDuolingoで働いていたことがきっかけで、この会社のことを知りました。

―入社するまでにどういう試験があったのでしょうか?

嶋:まず仕事内容と経歴が合うかのチェックをするため、電話面接と課題提出があります。例えば、デザイナーだったら「仮にあなたがこういうデザインの依頼を受けたら、どういう風にしますか?」のような架空のプロジェクトの課題を出し、数日間後に提出してもらいます。私のようなエンジニアは電話面接をしながら、実際に電話越しで画面を共有しながらプログラミングの試験をしました。
そこを通過すると、今度はオフィスに呼ばれるのですが、ここでまた一日中面接です。45分から1時間のセッションが複数設けられ、さまざまな側面からプログラミング知識や技術のテストを行います。
その後、最後の一時間、社長と会い社風が合うかどうかを確かめてからオファーがくるといった感じです。こういった形の採用プロセスは、アメリカのテックスタートアップの会社では珍しくありません。

―一日中面接ですか・・・辛そう・・・。

嶋:日本では履歴書を見てその人の経験と人柄が採用の大きな決め手になるかと思います。アメリカの会社ではエンジニアやデザイナーなどは実際に課題を与えて、その結果をみるという実力主義の世界です。

―この会社は嶋さんのような博士号(PhD)保持者も多いと聞きました。

嶋:そうですね。今所属しているチームのエンジニア4人のうち、私も含めて3人がPhD保持者なので割合は高いと思います。最近アメリカの博士号保持者は研究室に残らずに民間企業に就職する人も多いので、そういったところも日本の環境とはまた違いますね。

 

遊ぶことが仕事になる。最先端スタートアップ企業の職場環境とは?

―会社の雰囲気はどんな感じですか?

嶋:会社には卓球台や、フーズボール、ビリヤードやシャッフルボードがあって社員70名の割におもちゃがたくさんありますね。ホーバーボードが置いてあってそれで移動することもあります。また、社員が自分の犬を連れてきたりするので、オフィスに常に3匹くらい犬がいます(笑)
他には、ランチやディナーはカフェテリアで無料でとることができ、スナックやドリンクも飲み放題で、ビールとかお酒も置いてある冷蔵庫もあります。

Duolingo社内

―それって素敵に聞こえますが、社員はずっと会社にいて仕事しろっていう意味ですよね?(笑)

嶋:いやいや、そうではないんです。社員が心地よく会社にいられるようにという配慮だと思います。
実際私の勤務時間は、大体朝10時半から19時くらいまでです。Duolingoでは就業時間が決まっていなくて、朝早く出社して4時に帰る人もいれば、午後1時に来て夜中までいる人もいます。

―そういう環境だとミーティングとかスケジュールするの難しくないですか?

嶋:ミーティング自体がとても少ないし、事前に時間が決まっているのでそれに合わせてみんな会社に来ています。例えば、毎週1回30分の全体ミーティング、チームミーティングとマネージャーと一回ずつくらいです。問題があるときにはチャットで解決したりするなど、なるべく意味のないミーティングを持たないようにしたり、参加者を精査しています。
Duolingoでは言語のアプリを作っているだけあって、社員は20カ国以上から集まる多国籍集団で、ほぼみんなバイリンガルです。ゲームナイトがあったり、新入社員が入ったら歓迎パーティーをしたり、社員旅行でコスタリカやメキシコにいったりと仕事以外で部署以外の人と交流できる機会も多いです。

―社員教育制度はありますか?

嶋:まだ社員70人の会社なので、体系的な制度はありませんが、「ペアプログラミング」というランダムに他部署のエンジニアとペアを組ませ、30分から1時間かけて一緒に問題を解決するということをしていました。ベテランの人がどういう風にプログラミングしているのかを学ぶことができるとてもいい機会でした。
また、チームミーティングに社長が参加したり、毎週金曜日にはQ&Aセッションを設け、社員のだれもが社長に質問をすることができます。そこでみんな今後の会社の方向性などざっくばらんに話ができるんです。また社長室というものがないので、社長もみんなと一緒に肩を並べて座っているので話しかけやすいんです。

その他には、うちの会社は平社員でも会社のストックオプションがあり、だれでも自社株を持つことができます。自分が仕事を頑張って会社の売上げが上がれば、株価も上がり自分にも利益がでるので社員のモチベーションにもなっています。

 

「大学の研究室に比べて世の中にすぐにインパクトを与えられる。1億5千万人のユーザーがツイッターでDuolingoがどれだけ役立ったかや英語が上達して仕事を得たなどを呟いているのをみると、自分のやっていることが人の役に立っていると毎日実感します」とグローバルで活躍する醍醐味を語っていただき終了した、今回のインタビュー。
常にユーザー視点に立った検証と施策を繰り返すことの大切さ、無駄なミーティングの排除、ペアプログラミング制度やマネジメントコミュニケーション術など、Duolingoには「どうせアメリカの会社だし」とか「日本は文化が違うから」ではすまされない、日本企業でも取り入れられるような社内環境改善のヒントがちりばめられていました。

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