【ディレクターになるには?】10の力/後編:アイディア、見識、テクノロジーなど

ディレクターになるためのシリーズ、最終話の今回は、前回に続きディレクターに必要な10の力です。マネージメント力、ビジネス視点などにも言及します。職種により重みは違うと思いますが、Web関係、広告や販促関係、パッケージ、プロダクトなど様々な業界のディレクター、さらにはプロデューサーに必要となる力です。
絵が好きでデザイナーになった方には、ずいぶん遠くまで来たとの印象があるかもしれません。デザイン自体から離れていくと感じるでしょう。しかし、プロジェクト責任者であるディレクターには欠かせないものばかりです。事務職ではなくクリエイター視点で、なるべく噛み砕いて書いていますので、ぜひ最後まで目を通してください。

これまでの回でお話しした下記記事も参考にしてください。
第1回:まずはデザイナーの7つのスキルが重要
第2回:10の力/前編:見る力、コミュ力、積極性、実践力

 

5)アイディア

企画力、発想力、想像力、要はアイディアです。クリエイティブ系の進行役には繰り返し必要となります。
自らプロジェクトのプランを発案するケースも当然あるでしょうし、すでにプランは決定している場合でも、各所各所で必要になって来ます。この後に説明するマネージメント力、ビジネス視点においてもアイディアは欠かせません。

アイディアの発想法に関してはまた機会があれば書いてみたいと思いますが、多くの本、サイトがありますので参考にしてください。
例:http://www.y-create.co.jp/forcreator/books_2nd/

1つだけ書いておきますと、様々な発想法はありますがブレストはやはり有効です。
複数の参加者が一定時間、そのことを深く深く考え、思考を集中することがポイントです。そこから生まれた多くの案を検討できるメリットは大きいのです。

また、基本的な注意事項として、アイディア=思いつきではないことは身に染みてほしいと思います。
アイディアは常に解決すべき対象があります。最終的には、そのためのベストな方法を示すべきものです。その過程で、風変わりな面白いことを思いつく時もあるでしょう。それがベストな方法であることも多々あります。
しかし、その面白さにしがみついて本来の目的が達成できないのでは意味がありません。思いつきからアイディアへ昇華させることが肝要です。

対象のことを深く理解し、そこに関わる人の気持ちを感じ、反応を予測することも必要です。相手への共感力や感受性もアイディア発想には欠かせないと言えるでしょう。
そして、どんな優れた人であっても長年のうちに発想方法がマンネリ化しアイディアが劣化することはあるようです。常にチャレンジングな姿勢を貫いて欲しいと思います。

 

6)知識・見識、そして情報収集力

・知識
上で示したアイディアは「既存の要素の組み合わせ」ですから、発想のためには当然、組み合わせる要素=知識が豊富な方が有利です。

それ以外にもディレクターには知識は必須でしょう。

それは、仕事上クライアントから示される現状、背景、競合などの情報のことではありません。クライアントからの情報を掘り下げて社会的な背景などの知識を得ることは即戦力として役に立ちますし、その場では無関係と思われる知識が後々結びつくことも往々にしてあります。中でも社会学や認知心理学などの基本的な知識は役立つことが多いと思います。
ピンポイントで勉強することも大事ですが、一方で日頃から好奇心を奮い立たせて物事を見ていくことも大事です。

・見識
見識とは、数ある情報、知識から何を選択して行くかの判断と言えるでしょう。浅学で独りよがりな判断は論外です。
知識の吸収に伴って高まって行くとも言えますので、当初は謙虚に先人の声に耳を傾けることも必要です。

・情報収集力
仕事に直結する情報ですが、その収集力で仕事に差が出て来ます。まずクライントに関して、そのブランド自身、ブランドのターゲット、ブランドの競合、そして社会背景の情報を集めると思います。
その時に以下の4つの点を意識してみてください。
-時間軸=その情報の変遷を過去から最新情報まで探す。会社の沿革、売り上げの推移など。
-空間軸=関連事項を幅広く探す。海外情報など実際の地理的な空間、およびネットの情報空間で紐付いたものを探す。
-情報の濃淡=探している情報の関連度の濃淡。本流に対して、支流として小ネタ的なものも意識して探す。
-情報ソース=ネットだけに頼らず、人、場所、書籍なども探す。

 

7)テクノロジーの知識

上の知識とは分けて、テクノロジーの知識を別立てしたいと思います。デザインやクリエイティブに関わる人間はもちろん、21世紀の今に働くすべての人はテクノロジーの情報に注目するべきと考えます。

一般の我々がイメージするよりも遥かに速いスピードでテクノロジーは進化しています。
身近な自動車を考えてみても、自動運転など数年前には夢物語であったものがすでに自動ブレーキで部分的に実現し、完全自動化も射程距離に入っています。機械に仕事を奪われるといったような刺激的なワードがTVなどでも流しています。実際にどんな職種が5年後に存在しないかはともかく、影響を受けない業種はまず有り得ません。

そんな時代にディレクターを担うのであれば、当然、テクノロジーのニュースにアンテナを張り自身の仕事だけでなく、クライアントの業種にどのような影響があるかを把握しておくべきでしょう。
テクノロジーの影響について書いた本を1冊ご紹介しておきます。とても刺激的な内容です。ぜひ読んでみてください。

参考:「機械との競争」E.ブリニョルフソン+A.マカフィ(日経BP社 2013年発行)
https://www.amazon.co.jp/%E6%A9%9F%E6%A2%B0%E3%81%A8%E3%81%AE%E7%AB%B6%E4%BA%89-%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%8B%E3%83%A7%E3%83%AB%E3%83%95%E3%82%BD%E3%83%B3/dp/4822249212

 

8)マネージメント力

プロジェクトの進行に責任を持つのがディレクターですので、その終着点までの全管理=マネージメントが重要です。
プロジェクトを実際に推し進めて行くには多くの問題が絡んで来ます。一般的には「人、もの、金、時間」などと呼び、以下のようなことが考えられます。
・目標の設定
・人的資源の確保と管理
・資材調達と管理
・予算計画と管理
・スケジュール管理
・リスクの予測と管理
・チームのモチベーション管理

これらの各項目に枝葉の問題が生じますが、ここではクリエイティブに特化した点を1つ記しておきます。
それは「デザインしない」選択です。

デザイナー出身のディレクターの場合、どうしても「デザイン」したくなってしまう傾向があります。これはもちろん狭義の意味でのデザイン、装飾や見た目のことです。
プロジェクトの成果を優先して、英断を下してください。

 

9)分析力

分析力は上のマネージメント力に含まれるものと思いますが、クリエイティブの現場では感性、勘で判断する人も多いので強調しておきたいと思います。

分析とは「細かな要素に分けること」と辞書にはあります。
プロジェクトを管理する上で判断する場面が多々あります。その際に、それらの内容を細かな要素に分けて検討します。客観的に判断するためには、模式化、数値化など、先行するイメージから離れる客観的な視点が有効だと思います。

 

10)ビジネス視点

最後はビジネス視点です。優れたデザイナーは、すでに自身のデザイン物の成果を気にしていると思います。アクセス数は?売り上げは?評判は?…その成果をチェックすることから始めましょう

そして、やはりマーケティングは重要ですので、マーケティングを理解してデザインの目的を見つめるようにします。
やがては、クライアントの経営理念を理解し、そのプロジェクトの経営的な見地まで到達できれば、より戦略的な提案ができるようになります。
と、書けばカンタンですが、これは一朝一夕には身に付かない事ですので、ゆっくりと階段を登れば充分でしょう。くれぐれも拒絶感を抱かずに、実感のあるところから始めてください。

 

ディレクターへの道を示す3回シリーズ。境界線ははっきりしないデザイナーとディレクターですが、この2つは明らかに違う職種であることをまとめました。言葉がいたらぬ部分もあったかと思いますが、「あぁこんなことが必要な仕事なんだ」と言う概略は感じられたと思います。
抵抗感のあるデザイナーの人もいると思います。しかし、仕事をしているうちに「自分ならもっと違う計画で進める」などと感じた時がディレクターへのスタートかもしれません。そんな時に思い出して読み返してもらえると嬉しいです。
皆さんの成功を祈ります。

【ディレクターになるには?】
第1回:まずはデザイナーの7つのスキルが重要
第2回:10の力/前編:見る力、コミュ力、積極性、実践力
第3回:10の力/後編:アイディア、見識、テクノロジーなど

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