【ちょっと一息。趣味の教室】ほっこり、ジーン、ほんわか。恋愛映画~クリエイターなら観ておきたい映画

さてさて、少し時間が空きましたが、趣味の部屋の再開です。映画紹介の第3回目となる今回は、恋愛映画を取り上げてみました。しかし、クリエイターに向けて紹介しているこのコーナーですから、当然クリエイターにプラスになる映画を取り上げます。動画デザイン、UI/UXデザインのヒントはもちろん、作品全体を楽しんで様々なデザイナーの想像力をかき立てることと思います。ぜひ、時間を作って観てみてください。損はしない作品ばかりです。
と、言うことで選び始めましたが、本数が多くなり過ぎました。前後編でお届けします。今回はやや古い恋愛映画。2000年以前の作品5本を紹介しますが、今観ても新鮮な感性を感じると思います。


 

初恋

(監督:ルイ・マル 出演:ジャンヌ・モロー 1958年フランス)
この頃のフランス映画界は、戦後の映画作家と一線を画して新しい映画を希求した運動「ヌーヴェルヴァーグ」が盛んでした。
監督のルイ・マルは、それらの監督たちとは交流せずに独自に新しい作風の作品を撮った才人です。「恋人たち」は2作目で、同じ年に25歳の若さで製作した「死刑台のエレベーター」で衝撃的デビューをしたばかりでした。

第1作である「死刑台のエレベーター」は、マイルス・デイヴィスがラッシュフィルムを観ながら即興演奏した音楽や、手持ちカメラで取られたパリの街などによりサスペンスフルな作品に仕上がっていました。一転、「恋人たち」は音楽もブラームスをロマンティックに使い、田舎町を舞台に淡々と話は進みます。
物語は人妻がパリからの帰り道に偶然知り合った若者と情熱的な一夜の後に、夫も家族も捨てて若者と去って行くと言う単純なものです。一見退屈な画面作りになりそうなストーリーを、見事に観る者の心に残る映像に仕上げました。

「死刑台のエレベーター」に続き主演となったジャンヌ・モローは当時ルイ・マルの恋人。その愛情がフィルムに定着したとも言われています。
 

華麗なるギャツビー

(監督:ジャック・クレイトン 出演:ロバート・レッドフォード 1974年アメリカ)
原作はF・スコット・フィッツジェラルド。「失われた世代」と呼ばれる、1920年代から1930年代にアメリカで活躍した作家の1人です。
彼は、理想の美女ゼルダ・セイヤーと知り合い婚約しましたが、彼の経済力に疑問を抱いたゼルダに婚約解消されてしまいました。その後、執筆活動に専念してベストセラー作を書き上げ、ゼルダと結婚をしました。

原作「グレート ギャツビー」の主人公も戦場へ行っている間に、愛し合った大富豪の娘デイジーが大金持ちと結婚してしまい、彼女の愛を取り戻そうと必死にのし上がり巨万の富みを得ます。
20年代のアメリカの上層階級の華麗な世界を舞台に一途な1人の男の想いが痛々しい作品です。

2013年にレオナルド・ディカプリオ主演でリメイクされていますが、筆者はこちらのロバート・レッドフォード版がより好きです。主役はもちろん、重要な脇役のニック・キャラウェイを演じたサム・ウォーターストンがたまらなく悲しげです。
 

マンハッタン

(監督:ウディ・アレン 出演:ウディ・アレン 1979年アメリカ)
ウディ・アレン作品です。コメディを中心に数々の名作を監督して来たウディ・アレンはまた、多くのラブコメディも作っています。そして多くはハートブレイク映画になっています。
(ややネタバレになりますが、この映画は一応ブレイクではないと言えます)

40歳を越えたTVライターの男と17才のトレーシーとの年の差カップルの話で、40歳の男は例によってウディ・アレン自身が演じています。理屈っぽく物にこだわりがあり始終話し続けています。他のウディ・アレン映画に比べてシニカルさよりもストレートさが表に立って感じるのは、17才のトレーシーを演じたマリエル・ヘミングウェイによるところが大きいでしょう。中年男を相手に真っ直ぐに応えて行きます。

NYの街のあちこちを美しく撮るのはまさに真骨頂。ポスターにもなったクイーンズボロブリッジを臨む深夜のベンチシーンは有名で、一時期観光スポットにもなりました。ちなみにベンチは映画のために用意されたもので現地にはありません。

この映画の2年前の77年に撮られたアカデミー賞受賞作「アニー・ホール」と姉妹映画のように語られることも多い作品です。
 

ベティ・ブルー 愛と激情の日々

(監督:ジャン=ジャック・ベネックス 出演:ベアトリス・ダル 1986年フランス)
かつて小説家を目指した男ゾルグと自由奔放な美女ベティ。出会いからたちまち激情の日々を過ごしていた2人は、幸せな時間を過ごしながらも、ベティの激しい性格もあり悲劇的な結末へと向かって行きます。

ベティを演じたベアトリス・ダルは、実生活でもかなり波乱万丈です。窃盗、傷害、麻薬で逮捕されたことがあり、40歳を越えてからボランティアで訪れた刑務所の囚人と結婚もしています。
ダルは映画の撮影時には20歳そこそこでしたから、監督のジャン=ジャック・ベネックスは彼女の中にベティにも似た破滅的な性格を見て取ったと言うべきでしょう。

赤裸々な性描写が話題になりましたが、映画全編はフランス映画らしい軽妙さとスマートさを持ち、会話、カメラアングル、ファッション、小道具類などとってもオシャレな仕上がりになっています。
また、ネタバレになるので詳細は書きませんが、ラストシーンはフランス映画史に残る名シーンになりました。
 

恋する惑星

(監督:ウォン・カーウァイ 出演:トニー・レオン 1994年香港)
とっても可愛い映画です。2人の警官とそこにからむ女性2人、この2組の恋の行方をポップなタッチで描きます。登場人物が不思議で魅力的。トニー・レオン、フェイ・ウォン、ブリジット・リン、金城武が軽妙なリアリティを持って好演しています。

公開当時、クエンティン・タランティーノ監督が大絶賛したと言うニュースもあり、日本でもファッション、音楽、デザインなどのクリエイティブ系人間の間ではちょっとしたブームになった作品です。あのシーン、あのセリフ、あの音楽、あのファッションと大いに語られました。
また、クリストファー・ドイルによる撮影は当時かなり斬新で、顔が歪むくらい広角レンズで女優に近づいたスタイリッシュな画面作りなどが大きな話題となり、彼自身も雑誌やTVで取り上げられています。

これから以後、ウォン・カーウァイ監督が日本でもよく知られるようになり、また亜流のよく似たスタイルの動画を生み出すことにもなりました。

 
いかがでしたか?今回紹介した5本は名作、公開当時の話題作、クリエイターの話題作でしたのでご存知の方もいらっしゃると思います。その方たちも含めて、これを機にご覧いただけたら幸いです。

<今後の連載予定>
次回の【ちょっと一息。趣味の教室】は、
『恋愛映画』の後編、2000年以降の映画を紹介したいと思います。

<過去の『クリエイターなら観ておきたい映画』シリーズ>
第1回 夏の名作ホラー映画
第2回 感性を刺激する映像体験
第3回 ほっこり、ジーン、ほんわか。恋愛映画Part1/2000年以前の秀作
第4回 恋愛映画Part2/2000年以降の秀作

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