海外のクリエイティブ事情~街の構造をうまく利用したミャンマーの企業広告

日本などの先進国とは違った個人商店や民間人を巻き込んだ形の広告が多いミャンマー。道案内の標識や日傘、お店の看板など、街ゆく人の目に留まりやすい場所に大手企業や外資企業の広告をよく見かけます。
今回は、そうしたミャンマーの広告事情を現地からレポートします。

 

個人商店の軒先に広告を出してもらう策略

日本企業の進出も年々増加し、発展の著しいミャンマー。それに伴って広告やPRを専門に行う会社も増え、数年前と比べるとミャンマーの街中でも大きな街頭広告を見かけるようになりました。

ミャンマー1
(近年増加している大型看板広告)

とは言え、街を歩けば通り沿いは昔ながらの個人で経営する飲食店や雑貨店がずらりと並び、目に飛び込むのは、そうした小さな商店の看板がまだまだ多いです。そうした事情をうまくいかし、大手企業や外資企業は、個人の商店に広告設置を頼むというケースがミャンマーでは一般的になっています。

実際、よく見ると個人商店の軒先にはいくつもの大手企業の広告を見ることができます。
街中のあちらこちらに広告を配置し、「商品を消費者の目に触れさせる機会を多く持つ」ということで、ミャンマーでの商品の認知をあげ、ブランドイメージを構築しています。

ミャンマー2
(個人商店の屋根看板。大手企業の広告が並ぶ)

商店の軒先は多くの人々の目に留まりやすく、そこに広告を出すことはとても効率がよいというわけです。そのため、広告を設置したい各社は個人商店を一軒一軒周り、広告を出してくれるように交渉しています。

 

広告掲載を条件に店の看板を制作することでお互いにメリットが

ミャンマーの大手ビール会社「ミャンマービア」を始めとする大手企業は、自社の広告を載せることを条件に、個人商店の看板などを制作してあげるという手法をとっています。

ミャンマー3
(ミャンマービアが作成した看板広告。「Unique」という名前のレストラン)

広告を載せたい会社側は、本来は広告会社を仲介したら高額な広告掲載料となるところを安く抑えることができます。
商店側にとっても、自分の店の名前が載ったちゃんとした看板を無料で作ってもらえるので、広告掲載を快諾しているようです。

また、店の日よけになる形の広告を商店に提供したり、日傘に広告を載せたりして、商店の人が人目につくように使える工夫した形態の広告もよく見かけます。
こういった商店の軒先に配置する看板広告はミャンマーでは欠かせない販促ツールになっています。

ミャンマー4
(携帯会社「MPT」が配布している、日傘の広告。町中のあちらこちらで使われている)

 

民間人のための道路標識を作り、そこに広告を載せる

ミャンマーには、公的な道の名前を案内する標識がない場所が多くあります。地図を見ても、道に標識がないので迷ってしまうことがよくあります。
そこで登場したのが、標識と企業広告が一体化したものです。

標識を作ることで、企業はイメージアップを図りつつ自社製品の宣伝もできるという、ミャンマーではよく見られる形態の広告のひとつです。
民間人のためにもなり、誰しもが見るものであるため、大きな宣伝効果を期待できるという、よく考えられた手法です。

ミャンマー5
(洗剤メーカーの広告に、道名「SAO SAN TUN STREET」も載せて、民間人の標識にもなっている)

 

まとめ

個人商店に一軒一軒交渉するのには時間も人も必要です。ですので、そういった余裕のある大手企業が、専用の車で個人商店をまわって広告を渡しているのをよく見かけます。新しく個人商店をオープンしたお店は、早く広告掲載の勧誘が来ないか待っているほどです。
道路標識にしても、大きな立て看板を作るのには当然コストがかかりますので、必然的に大手企業のものが増えていきます。
結果、携帯電話会社やビール会社などの大手企業が個人商店を囲い込むことになり、ミャンマーの街中には同じ企業の商品広告がたくさんあふれています。

個人商店や民間人を巻き込み、制するものが、街中でもいい場所に広告を設置できるというミャンマーの広告事情でした。

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*