【撮影ディレクション】知っておきたい写真の基本〜前編〜

クリエイティブの経験はまだ浅いけれど、カメラマンに撮影ディレクションをする必要があるデザイナーやディレクター。あるいは、写真のディレクションが専門ではないけれど撮影に立ち会うことがあるプロデューサー、さらに営業や企画・開発担当者。そんな人の中で、撮影時に上手くコミュニケーションを取れなかった経験はありませんか?もしかすると、その原因はカメラマンと同じ言葉を共有していないからかもしれません。そして、一眼レフカメラでの撮影の基本を知らなかったことがその一因のことがままあります。そんな今さら人に聞きづらい基本をまとめました。恥をかいてしまう前にぜひ目を通してみてください。

 

以前に『【撮影ディレクション】カメラマンに上手く伝えるには?』として撮影を順調に進める上での重要な6項目をまとめました。
http://www.y-create.co.jp/forbusiness/photograph/

そこではお話ししきれなかった『知っておきたいカメラの常識6つ』を2回に渡りお話しします。

 

【1】シャッタースピード

シャッターが開いて閉じるまでの光を取り込む時間をシャッタースピードと言います。

シャッタースピードが遅い、つまりシャッターが開いてから閉じるまでの時間が長い時は光をたくさん取り込めます。写真は明るくなります。シャッタースピードが速いのは、その逆で光を少ししか取り込めませんので、写真は暗くなります。
写真の明るい暗いは、もう1つ「絞り」でも調整できます。
むしろ、シャッタースピードの重要性はその速さ自体にあります。シャッタースピードの遅い速いは、写真の表現に大きな影響を与えます

・シャッタースピードが遅い
シャッタースピードが遅い状態は、窓を開けてしばらくしてから閉めるようなものなので、外の景色を長い時間見ることになります。雲が動いて行くのも見えることでしょう。

シャッタースピードが遅いと世界=被写体が動いている時間を写すことになりますので、動いた軌跡が写真に「ブレ」となって残ります。
シャッタースピードを遅くして川を撮影すると、川のあちこちに現れる波や泡を長時間写すことになるので真っ白に写ったりします。あるいは、夜空の星の動きや車のライトの軌跡がくっきり残っている写真。これらはシャッタースピードを極端に遅くして撮影しています。夏休みに、手持ち花火で文字を書いて撮影して遊んだことがある方もいるのではないでしょうか。

・手ブレ
シャッタースピードが遅いと、窓が開いている時間にカメラを持っている手が揺れ動いてしまいます。これが手ブレです。一般の人で1/125秒がブレないシャッタースピードです。セミプロでも1/60秒が限度でしょう。以上の話は50mmぐらいの標準レンズで、望遠レンズになればもっとシャッタースピードを速くしないと手ブレしてしまいます。

・シャッタースピードが速い
反対にシャッタースピードが速い状態は、窓を開けてすぐ閉めるので、外の景色も少しの時間しか見られません。雲は、同じ場所にいるうちに閉められます。そして、カメラではこれはホンの一瞬の時間になります。雲でなく、落下する水滴も同じ場所でしか見られません。全ての物が止まった世界を写せます。

テクニックの部分もあるので一概には言えないですが、スポーツや動物など、動きが素早いものを取るときには、シャッタースピードを速くするとブレずに撮ることができます。

 

【2】絞り

絞りと呼ばれる光を取り込む穴の大きさを調整します。
穴を大きく開くと光がたくさん入り、明るい写真になります。小さい穴では光は少しなので暗い写真です。

穴の大きさにはカメラによって限界があり、最大を開放、最小を絞り込みと呼び、F1.4、F2、F2.8、F4、〜F22、F32のような数字で表します。数字は1つおきに倍々になっていますが、一番小さい数字がそのカメラの開放で、1つ隣の数字へ進むと光の量は半分に減ります。

例えば、F1.4からF2、F2からF2.8にすると光は半分、半分と減って行きます。
つまり、この絞りとシャッタースピードの組み合わせで、写真の明るさの調整をします。この説明は後ほど別の項目ですることにします。

そして、この絞りによっても、シャッタースピードと同様に写真の表現が変わってきます。絞りによって、写真のピントが合う範囲が変わるのです。その距離を『被写界深度』と呼びますが、仕上がりの写真にとって非常に重要なことなので次に別項目として取り上げましょう。

 

【3】被写界深度

・「手ブレ」と「ピンぼけ」
まずピンぼけの話を少し。スマホ内蔵のカメラばかり使っている若い人の中に「手ブレ」と「ピンぼけ」を一緒にしているケースをたまに見かけます。

「手ブレ」は上で説明した通り、シャターと言う窓が開いている間に撮影者が動いてしまったものなので、横方向、縦方向など動いた方向への流れが感じられます。「ピンぼけ」は狙った被写体にピントが合わずに、他の場所のどこかにピントが合っていると思います。

ただし、わずかなブレで方向性が見極められない「手ブレ」や、画面の中のどこにもピントが合っていない「ピンぼけ」を見分けるのには経験が必要でしょう。

・被写界深度
では、被写界深度をお話ししましょう。

あなたが撮った写真を見てもらうと、目的を持ってピントを合わせたポイント(点)の前後にも、ピントが合っている部分があると思います。それは写真によって距離が長くピントが合っていたり、そのポイントのすぐ前後でボケていたりします。
このようにピントが合っている距離、カメラ方向からのその長さを「被写界深度」と言います。長い距離ピントが合っている状態を「被写界深度が深い」、逆を「浅い」と呼びます。

さて、前述の通り、絞りによって被写界深度が変わります。
絞りの数字を大きく、要するに穴の大きさが小さくなると、被写界深度は深くなります。また、逆にそのカメラの最小の数字、例えば1.4にして開放にすると被写界深度は最も浅くなります。

数字と穴の大きさが逆なので感覚的に分かりづらいかもしれませんが、「開放はピントが合わせづらい。絞り込みはピントが合わせやすい」と覚えておいてください。

・被写界深度が浅い
テーブルの上のケーキ皿にイチゴのショートケーキがあるとします。
開放にしてそのイチゴにピントを合わせます。するとイチゴの手前の生クリームがもうボケて見えます。ケーキの向こう側にあるコーヒーカップもボケています。テーブルの向こう側にあるイスはボケてイスと分からないかもしれません。

・被写界深度が深い
同じ設定を絞り込んで撮影すると、ショートケーキ全てにピントが合うのはもちろん、先ほどボケていたテーブルの向こうのイス、さらに向こうの壁の絵までをはっきり見ることも可能です。
このように絞りを調整して被写界深度を変えることは写真を全く違うイメージに仕上げます。

・被写界深度を変える要素
被写界深度は他の要素でも変わってきます。

a.被写体までの距離:近い=被写界深度が浅い / 遠い=被写界深度が深い
b.レンズの(焦点距離の)長さ:望遠=被写界深度が浅い / 広角=被写界深度が深い

つまり近い物を撮るとピントが浅く、遠景はピントが深くなります。これは実感しやすいと思います。

一方、b.の「望遠=被写界深度が浅い」について、近くの物を撮ると被写界深度が浅いはずなのに、望遠で遠くを撮っても被写界深度が浅いということに違和感があるかもしれません。
このようになるのは、望遠レンズは「最短撮影距離」と呼ぶ「ピントが合う一番近い距離」がもともと遠いので、カメラ→被写体の距離が遠くても、最短撮影距離→被写体の距離が意外なほど近いため、被写体深度が浅い状態となっているのです。

これは、実際に望遠レンズで撮影をしてみるとよくわかります。長い望遠レンズで遠くに立たせたモデルを撮影すれば、モデルにはピントが合っているが後ろはボケボケになった写真を撮ることができます。ファッション写真などで見かけたこともあるでしょう。

このように、被写体にピントを合わせ背景をボカすには、短焦点レンズで被写体に思いっきり近づくか、望遠レンズを使用するのが向いています。

 

さて、今回はここまでとしましょう。
カメラに縁のなかった人にはややこしい話だったかもしれません。実際に一眼レフで撮影してみると実感を伴えると思います。
次回は後編として、光量(露出)、ライティング、陰影についてお話しします。

【撮影ディレクション】
第1回:カメラマンに上手く伝えるには?
第2回:知っておきたい写真の基本~前編~
第3回:知っておきたい写真の基本~後編~

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