10年後には2倍の市場規模に?! デジタルサイネージの未来は?

マンハッタンの中心部、タイムズスクエアの夜景にきらめく「デジタルサイネージ(電子広告)」。”宣伝用の画像や動画が現れる街角の大きなスクリーン”というのが、長くデジタルサイネージのイメージだったかもしれません。アナログ媒体に代わるものとしてデジタルサイネージは大きく市場を伸ばしており、この10年ほどで2倍の市場になると言われています。進化するデジタルサイネージの世界では、いまどのようなトレンドが見られるのでしょうか。

 

変わりゆくデジタルサイネージ

まずは、こちらの動画をご覧ください。

ボウリングを終えた男女がスナックを楽しもうとスクリーン前に立つと、センサーが顔画像を認識。年齢や性別を判断し、より好まれそうな商品をオススメ。
さらに、その場で自撮りした写真をSNSを通して送れば、自分たちもスクリーンの一部に。スクリーン上でゲームが始まると、自分たちのスマートフォンをコントローラーにして即参加。稼いだポイントで景品の飲み物をゲット。

インタラクティブなやり取りがどんどんと進む様子はまるで近未来のようですが、これは実際に「Lemon & Orange」というポーランドの企業が、「コカ・コーラ」社と提携し設置しているものなのです。

日本では、例えば駅構内のポスターがデジタルサイネージに置き換わり、静止画ではなく動画広告が流れるようになりました。これも大きな時代の変化を感じる流れです。
しかし、デジタルサイネージは、既に単なる宣伝や案内板の役割をはるかに超えた、エンタテインメント性の高いものになってきているのです。

 

AI(人口知能)やセンサーの進化でよりスマートに

前述の通りデジタルサイネージのコンテンツは、マス向けに決まったものを繰り返し流すのではなく、現実やその場にいる人に合わせて刻々と変化するものになってきています。

例えば、天気によってオススメの商品を傘からサングラスに変えたり、さらにカスタマーが入店した時点で「20代/男性/ハイキング・ブーツ着用」と認識し、彼の好みに合う情報を瞬時に出すなどです。
顔検出を取り入れた事例が車の会社「GMC」の掲示板。性別・グループか個人か・大人か子どもか。さらには表情から機嫌まで伺い、最適なメッセージを映し出します。

さらに”ディープ・ラーニング”による学習の積み重ねで、自動的に精度の高い内容になっていくことも期待できます。条件に合わせて出した情報が、売上に効果を上げられなければ異なった手法を試すなど、事前に設定するのではなく、自動で学習的にコンテンツを提供する媒体に成長していくことが予想されています。

 

スマートフォンとの連携がカギ

また、スマートフォンの普及により、個人同士がよりつながってやり取りができる方向へ進んでいます。

例えば、イベント会場でそれぞれが自身のスマートフォンにアプリをダウンロードし、写真投稿や人気投票を行うとそれが大画面のサイネージに”オンタイム”で表示されるなど、内容のリンクが可能になるのです。

さらに一定のエリアに入ると、スマートフォンにアプリのダウンロードを促すメッセージが届き、そこに直接情報を流すという、スマートフォン自体をサイネージ代わりにしてしまう動きも見られます。アメリカ大手デパート「Macy’s」では数年前から実施が始まっています。実際の行動とデジタルでの体験が一体化し、さまざまなポイントから顧客にアプローチするようになっていくでしょう。

 

ハードウェアの進化が与える影響

このようにデジタルサイネージは、アイデアやマーケティングによっていろいろな可能性を示しています。
そして、それを後押ししていると言っても過言ではない「ハードウェアの進化」によって、今後はより導入のハードルを下げてくれることになりそうです。

例えばディスプレイはよりスリムで美しくなり、消費電力も抑えられコスト減が期待できます。
これによって、今までのような広告や掲示板としてだけではなく、レストランのメニューや交通機関のサイン、病院や学校など、より多くの場所で利用されるようになり、身近なところで思いもよらないものが登場していくことが予想されます。

 

機能が進化して設置も容易になってきた今、デジタルサイネージはもはや広告や看板などの意味合いを越え、「場所づくり」に欠かせない”アイテム”のひとつになってきているのです。まるで映画のような未来感ある生活が、日常的に体験できる日もそう遠くはないのかもしれません。

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