【クリエイティブ企業のマネジメント】 『すいません、ほぼ日の経営。』から学ぶマネジメントの考え方

目標達成のため、資源や人を緻密に管理する「マネジメント」の考え方は、経営的側面からも必要不可欠です。しかしそれを一歩引いて見た時、果たして会社や社員に即し、効率的であるかは別である場合も。
今回は、そんなマネジメントの考えに幅を持たせるべく、2018年10月刊行の『すいません、ほぼ日の経営。』を読み解きつつ、「ほぼ日」流の進め方や組織、そして根幹にある「糸井重里」氏の思いに迫ってみたいと思います。

 
■株式会社ほぼ日とは
コピーライターの糸井重里が代表を務め、オリジナル文房具等を企画販売する企業。
ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」は株式会社ほぼ日のビジネスの根幹であり、1998年の創刊以来、毎日更新する糸井重里のエッセイや、様々な業界ゲストを呼んだ対談コンテンツを展開。月間プレビューは数千万に及ぶという。
株式会社ほぼ日コーポレートサイト
 

「ほぼ日」流のプロジェクトの進め方とは?

以前、「ほぼ日」が株式上場するというニュースが流れ、あの独創的集団が利益を追求する市場原理に組み込まれてしまったら、「ほぼ日」らしさはどうなるのか?そんな心配をした人もいるかもしれません。

そんな「ほぼ日」では、日常どのようにプロジェクトが進められているのでしょうか。

一般的に新プロジェクト立ち上げの際は、見込まれる利益やリスクなど具体的な数字で検討し、成功の見通しが立って初めてGOサインが出ます。
けれども「ほぼ日」では、そういったマーケティングは行っていないそう。

糸井さん曰く、

――うちのプロジェクトは、誰かが「これをやりたい」と思ったときに、もう発生しています。

そして、そのアイデアを周りの人たちに話してみて、「それ、いいんじゃない」という人が集まることで、プロジェクトが進むのだそう。チームメンバーも、上層部が決めるのではなく、アイデアに共鳴する人たちが中心となり、「これはあの人にお願いしてみよう」と社内外に声をかけることで、自然と固まっていきます。

通常のプロジェクトで必要不可欠とされる顧客ターゲットの明確化、企画書や進捗報告なども、「ほぼ日」では一切ありません。一番大切にしているのは、企画者本人や周りが「本当におもしろいと思っているか?」ということ

――クリエイティブは、ひとりの人間が本気で「好き」「嫌い」の正体を探っていくところから生まれます。これは、忘れてはいけないことだと思っています。
商品を出すときも、「売れるかなあ」ではなくて、「これは売れるぞ、もう売れるに決まっている!」というものをつくる。なんとかそこまで持っていくようにするんです。

つまり「ほぼ日」のプロジェクトで重要なのは、マーケティング上の数値以上に、そこに関わる人たちの「強い思い」なのです。

 

「ほぼ日」流の組織マネジメントとは

このように、自然発生的にプロジェクトが生まれるのは、「ほぼ日」という会社が個人を尊重し、自由で独特な組織運営の賜物と言えそうです。

――うちが一貫してやってきたのは、「おもしろい場」をつくって、その中から「おもしろいアイデアが生まれてくる」ということです。

例えば、「ほぼ日」では4カ月に1回席替えをします。総務や営業といった部署は関係なく、完全なくじ引きだそう。つまり、経理の横にデザイナーがいて、その隣ではコピーライターが原稿を書いていたりするわけです。そうすることで「お互いの仕事を尊敬する気持ちが生まれてくる」と糸井氏は言います。

また、組織の在り方も縦割り式ツリー構造ではなく、人体模型図のような組織なのだそう。上下関係はなく、それぞれの役割を担う人がすべて繋がり、お互いに自由に関わり、補完し合ったりしているのです。

――会社は一つの「人格」で、その中に個性があったり性格があったりすると考えて組織を組み立てられないかと思ったんです。

そんな彼の思いが、「ほぼ日」という会社の潤滑油になっているのかもしれません。


引用:https://www.1101.com/hubspot/2011-07-20.html

上場の目的は「利益追求」ではなく「社会貢献」

「ほぼ日」は2017年3月、東京証券取引所のジャスダック市場に上場しました。優れたクリエイティブ集団として知られ、「ほぼ日手帳」など数々のヒット商品も手がけ、すでに一企業として十分に成功している「ほぼ日」ですが、糸井氏の中で少しずつ違和感が出てきていたと言います。

――「どこか違うんじゃないの」という感じです。正体を探ったら、それはぼくらの会社の事業のサイズが小さいということでした。

――これからの時代のおもしろさというのは、誰かひとりがおもしろいと思ったものと、何億人がおもしろいと思ったものが重なるところにある。そういう時代に、ほぼ日が事業を続けていこうとすると、それまでの枠組みは窮屈かもしれないと思いはじめたんです。

上場すると、株主から企業成長や利益追求を求められます。でも、糸井氏は「利益や成長は結果であって、目的ではない」といいます。

――上場するにあたってぼくが話したのは、「こうすればもうかる」ということではなく、「こうすれば人がよろこぶ」ということでした。

――なにごとも大事なのは、根っこです。ほぼ日の事業のベースにあるのは、いつの時代も「人によろこんでもらえるか」ということです。

彼の話からは、株主も顧客も社員も皆が一緒になり、「ほぼ日」という船で新たな航路を切り開いていく、そんな企業像が見えてきます。理想論のように聞こえるかもしれませんが、本書にはそれを実現するためのさまざまな取り組みが描かれ、私たちが参考にしたい「経営」や「マネジメント」が出てきます。

 

「ほぼ日」が進める「働き方改革」とは

近年、「働き方改革」が重要なキーワードですが、これも「ほぼ日」は一風変わった施策を打ち出しています。

――一般的な企業の労働時間は一日八時間ですが、ほぼ日ではそれを七時間に短縮しました。そして毎週金曜日を「インディペンデントデー」として、ひとりで考えたり、自由に使ったりする時間にしました。簡単に言うと、労働時間を減らしながら、給料のベースを上げることに決めたのです。

世の中の「働き方改革」は残業時間を減らして社員に支払う給料も減らすケースが多いけれど、ぼくたちはその逆に挑戦することにしたんです。

この理由として「オフィスにいる時間が増えても生産性が上がるわけではない」、つまり「ほぼ日」での「生産性が上がる」は、「質のいいアイデアがたくさん生まれる」ということ。では、どうすればよいのか?

よく「集中して生産性を高めよう」と言われますが、「集中したからいい発想が生まれるわけではない」と糸井氏。日常的にクリエイティブのクセをつけたり、思いついたアイデアを誰かと話し、「もっといい考えがあるのでは」と問い続けることが大事なのだそう。

そのために「一人で考える時間」も重要ということで、「インディペンデントデー」を設け、この日は打ち合わせの予定は入れず、誰がどこにいるかチェックしないといいます。常に「アイデアが生まれる環境」を目指し、いいと思うことはどんどんやってみる。「働き方改革」に至っても「ほぼ日」らしさが表れているようです。

 

「ほぼ日」が大切にしているのは、ごく普通の当たり前のこと

いつも世間から注目されるユニークな試みを打ち出している「ほぼ日」ですが、本書を通し見えるのは、経営者としての糸井氏が大切にする至極真っ当でシンプルな思い。

――ぼくたちがほぼ日でやってきたことは、田んぼを耕すようなことばかりです。最近は田んぼを耕すようなことを、みんなが評価しなさすぎると思っています。丁寧に人の手の入った田んぼは、なにを植えてもきちんと育ちます。
そして日々、手をかけて田んぼを耕し続けると、さいごに人が育つんです。

――「ほぼ日」は買いものの場でもありますが、それを楽しむ街でもある。人が幸福に暮らしている状態、あるいは人が幸福に暮らしている場をつくりたい。そして、それに参加していたいと思って、ほぼ日をやってきたんです。

 

まとめ

「マネジメント」と言うと、「組織をいかに効率的に動かすか」ということばかりに目が向きがちです。しかし「ほぼ日」の経営では、常に「個」が大切にされ、一般的なマネジメントと対照的です。

顧客や社員にしろ、個人の思いや情熱を丹念にすくい上げ、効率性以上に主体性を重視する。一見、個人の自由度が高い組織はまとまりがなさそうですが、糸井氏、つまり経営者の「おもしろいものを本気で追求する」というぶれない信念が柱となり、クリエイターを底上げし組織を体系作っているのです。
これこそクリエイティブ企業に今後必要な、マネジメントとなっていくのかもしれません。

糸井氏の言葉には、クリエイターが仕事の上で心がけるべきこと、アイデアや自由な発想が生まれるマネジメントのノウハウが詰まっています。本書を読んで、「ほぼ日」流のクリエイティブとマネジメントを体感してはいかがでしょうか。

引用元:日経BP SHOPより_「すいません、ほぼ日の経営。」

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