
中途採用を行うとき、Webの求人媒体を使って応募者を集めたけど、イマイチぱっとしなかったということはありませんか?あるいは、人材会社経由で人材紹介サービスを利用しての採用時も同様に、コンサルタントと直接話をしたはずなのにターゲットからぶれた層しか挙がってこず、そのチューニングに時間を取られてしまうことがあると思います。
そんなときに大事なポイントとして「ペルソナ」について解説します。
■ペルソナとは?
ペルソナはもともとラテン語で「役者のかぶる仮面」という意味で、現在は心理学や宗教、美術など様々な場面で「人格」「登場人物」といった意味で使われています。
クリエイティブ業界でも、マーケティング用語としてよく使われるので、実は馴染みのある方も多いでしょう。
例えば、商品の広告キャンペーンにおいて、メインターゲットの人物設定・・・年齢・性別・家族構成・年収・趣味・価値観など、詳細なプロフィールを考えるかと思いますが、この”パーソナリティを持つモデル”のことをペルソナと呼んでいます。
■なぜペルソナを設定する?
大きく分けて2つのメリットが挙げられます。
1つは、求人をするということは、形はどうであれ「広告をし、集客をする」ことと同義だからです。
自社のHPであれWeb求人であれ、あるいはフリーぺーパーでもハローワークの求人票であっても、情報を告知し、そこに人を集めています。
これは、代理店・制作会社がイベント告知・集客の案件を受注し、Webサイトや交通広告、あるいはDMなどで集客をすることとまったく同じです。
現在の広告キャンペーンにおいて、細かさの程度はあれど、ペルソナを設定しないケースはほとんどないでしょう。
また、「20~30代・グラフィックデザイナーの実務経験がある方」での設定でいいか悪いかは想像がつくと思います。
もう1つは、自社内の方向性を固めることにあります。
よくある話が、現場と経営層でほしい人物イメージが違ったという話です。
現場では即戦力としてすぐ活躍できる人材がほしいのに、経営層は数年後を見据えて若年層の採用しか考えていなかった。そのため、現場の選考を通過する層は経営層の面接を通過せず、経営層が面接したい層は、書類選考の段階でポートフォリオ判断で落ちていた。
逆のパターンも然りですが、意外と多くの企業で起きている事象です。
それぞれの立場・役割がある中、いかにちゃんと会社の方針に沿った人材を採用できるか。
これには、候補者の母集団という問題と、社内での選考における意思統一が必要になります。
その際にペルソナは大切な役割を果たします。
■ペルソナ設定時の注意点
一方、ペルソナ設定には注意しなければならない点もあります。
特に大事で、かつよくある注意点は、人物像を絞り込みすぎることです。ペルソナを意識することは大切ですが、あまりにも詳細な人物像をつくり込んでしまうと、かえってそれが足枷となってしまう可能性が高くなります。
イベントへの集客のプロモーションを受注したけれど、その集客ターゲットがどう考えてもほんの一握りしかいないとわかったときの絶望感。無理なものは無理です。
その点では、ある程度ペルソナにも柔軟性が必要です。
そして、その柔軟性は、ペルソナそのものに対してもそうですが、特にそのときの景気観・市場観に対し意識をする必要があります。
ここ最近は、過去最低に近い失業率であることや、新卒採用も中途採用も「売手市場」であることがよく報道されています。
特にクリエイティブ業界やIT業界有効求人倍率が高く、人材不足の傾向が強い状況です。
そんな中で、「こんな人材にぜひ来てほしい!」という最高の人物像を描いて求人広告を出しても、望むような人材に振り向いてもらうのは至難の業です。自分たちの希望をひたすら押し通すだけでは、市場とのズレが生じてしまい、誰にも振り向いてもらえなくなるでしょう。
自社の規模感や業界での立ち位置なども踏まえた上で、冷静にターゲット像を設定していく必要があります。
また、ペルソナを設定する際には、「現実にこんな人は存在するのか?」と一歩下がって考え直すことも大切です。
例えば、現在は正社員の求人が非常に多く存在しています。
その中で「週5日・10時~19時・毎日22~23時帰り」「ガッツがあってスキルも高い30代前半の男性」を「派遣で長期的に」働いてほしい。だとすると、「正社員でなく、あえて派遣でその条件で働くメリット」が大きくなければ、難易度が非常に高いと言わざるを得ません。
■ペルソナは相談して作る
ペルソナを作る際は、どんなプロフィールが最適なのか、あるいは自社にとって単なる都合の良い人物像になっていないか、複数のメンバーで相談しながら作り込んでいくとよいでしょう。
そして、ある程度固まったら、今度は人材会社のコンサルタントや、求人広告の営業と話をして修正していくのがオススメです。
人材市場の状況は、業種・職種によってかなり違います。
同じデザイナー職であっても、マス広告系のグラフィックデザイナーと書籍のエディトリアルデザイナー、プロモーションサイトできるWebデザイナー、この3種でもかなりの違いがあります。
マーケティングの専門企業があるように、やはり人材・人材広告関連の企業には人材採用・採用市場についての情報やノウハウが蓄積されています。