【AI×デザイン特別企画】「AI」×デザインの未来とは?米国の先行事例からのヒント【3/3】

サンフランシスコと東京を拠点にデザインの力でグローバルビジネスを成功に導くBtraxのCEO、Brandon氏に聞く、これからのAI時代のクリエイティブとは?最終回である本編では、AIを武器にクリエイティブの可能性を広げる先行事例についてお聞きしました。
前編:ビジネスにおけるデザインのあり方と人工知能(AI)の本質とは?
中編:AI時代にクリエイターはどう生き残る?AIとデザインの未来

 

世界で台頭!「デザイン経営」企業と「AI」の関係性

今回のインタビューで筆者の印象に強烈に残ったのは「世界で活躍している企業はデザイン視点を経営の根幹に据えるか、イノベーティブか。これを重要視しないと勝てない」というBrandon氏のことばでした。

例えば、ここ10年で世界の企業の時価総額ランキングは大きく変動しています。
1位はアップル、2位はグーグルを保有するアルファベット社。いずれも、米国企業であり、ユーザー主導型でデザイン思考を巧みに取り入れた企業です。しかし意外にも、世の中でデザインの力の重要性が認められはじめたのは、ここ数年のことだと言います。

いわく「5~6年ほど前までは、ヨーロッパのアパレルや家具などのブランド以外ではデザインはそれほど重視されていなかったと思う」
ところが、「技術の成熟にともない、今日の世界ではデザインによる差別化が大きなポイント」となっており、「見た目がよいということに加え、その製品を使うことによるメリットの大きさや使いやすさといったユーザーの体験(UX)をも加味した『デザイン』が、勝敗を分けるようになってきている」のです。

アップルにグーグル、フェイスブック、そしてアマゾン。こうした世界をリードする企業に共通する特徴が、『ユーザー主導』『デザイン思考』であり、そして、そこに新しく”追加”された武器として登場したのが『AI』なのです。

 

Amazonやグーグル、先行事例に学ぶ「AI」×デザイン

それでは、「AI」を活用して新たに生み出されたデザインの事例を見てみましょう。【中編】でも紹介しましたが、Brandon氏が好事例として挙げたのはAmazon Echoと、グーグルが買収したネスト社のNest Learning Thermostatです。

・『Echo』
『Echo』は、高さ20cm強の円柱形のスピーカー型音声アシスタント(https://www.amazon.com/Amazon-Echo-Bluetooth-Speaker-with-WiFi-Alexa/dp/B00X4WHP5E)。

Alexa(アレクサ)という人工知能が搭載されており、音声で操作します。インターネットに接続されている家電を操作したり、音楽の再生、ネット上の情報を音声で提供したりするなど、さまざまな仕事をやってくれる、いわば〝執事”ロボットのようなもの。
ユーザーは「アレクサ、電気をつけて」「今日は雨が降るかな?」などと声をかけるだけで、Echoが電気をつけたり、降水確率を答えてくれるのです。料理中にレシピの続きを尋ねたり、Amazonでショッピングをしてもらったり、ジョークを言わせることまでできます。
アメリカでは2014年に発表され爆発的にヒット。日本語版の発売が待たれているところです。

AmazonのほかにGoogleも『Google Home』という同様の商品を発表しています。スマホを取り出して操作する手間すらも省いてくれるこのスピーカー型音声アシスタントは、新たな時代の到来を予感させるツールです。

・『Nest Learning Thermostat』
直訳すると「ネストの学習していく温度調節器」(https://nest.com/thermostat/meet-nest-thermostat/)。
アメリカの住宅における従来の冷暖房の調節は、壁についたパネルでON/OFF、あるいは細かい温度設定はできない調整バーがあるだけだったのが、このネストのデバイスを取り付けると、より快適な温度調整が可能になるだけでなく、スマホで外部からでも操作できるというものです。

円形のシンプルな外観はまさに「スマート」で、外出時にOFFにしていっても帰宅時には快適な温度になるようにすることもでき、アメリカで爆発的ヒットに。AIのすぐれているところは、稼働すべき時間や温度設定、外気温や天候との関係などのパターンを学習して自動的に動いてくれるという点。
さらに、この「ネスト」は単なる冷暖房の調節機器という役割を超え、車や洗濯乾燥機などほかの企業の製品とも連携し、ユーザーの生活スタイルや嗜好に合わせて家電などを自動で動かすことができ、快適な生活を提供する「スマートホーム」のプラットフォームになろうとしていると言われています。(http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1505/21/news052_2.html

日本のメーカーも、スマート家電などと呼ばれる商品を開発しています。しかし、AmazonやGoogleが大きく日本を引き離している理由があります。

それは、ビッグデータ。

「AIはクラウドと連動させるのは必須」とBrandon氏は指摘します。「インターネットと結びつき、クラウドデータ、ビッグデータと連動させ、どんどん進化させていく」

「ネスト」の例であれば、1ユーザーの情報だけでなく、「ネスト」を使っているすべての人のデータが集められ、品質の向上に生かされます。ネストと連携した家電やその他の機器が自動で動きユーザーにとって最適な生活環境を生み出し、電気代も節約するというような「スマートホーム」構想が動き出していますが、ユーザーが増えることで多くのユーザーデータを得ることができ、さらにそれが品質の向上につながり、それがユーザーの増加という好循環となります。

GoogleやAmazonなどの企業は、世界中にサービスを普及させ、世界中にユーザーをもつ「プラットフォーマー」となることで、膨大なユーザーのデータを持っています。つまり、データから学習し向上していくという人工知能を活用するための強い地盤をすでに持っているということにつながるのです。

 

「AI」ができない領域にフォーカスを

「AI」×デザインといえば、サンフランシスコではなんと、AIがWebを自動で生成するWebデザインのサービスも出現したそうです。
ただ、Brandon氏によると、まだ実用に耐えるクオリティにはないようで、「ほかにもAIとうたっているところはあるけれど、現実には使えないことが多く、様子見の段階」とのこと。

現段階ではまだ、コピーライティングやロゴ制作といった面も含め、クリエイティブな方面でのAIの活用は黎明期。たとえAIに仕事を任せられたとしても、環境やトレンドの変化といったデータを積み上げた延長線上では測れない事態には、ヒトによるチューニングが必要になります。
「クリエイティブな分野でのトレンドや未来予測は、今のところまだ、人間の方が得意」とBrandon氏は話しています。また、アートとデザインの中間に位置する広告のクリエイティブはAIの苦手分野であるという話を前回の『中編』で取り合げた通りです。

反面「いつどこで、どういう広告を出すべきかを判断し、ベストなタイミングと場所で広告を出す、という仕事はAIが得意」とBrandon氏。
サイネージやオンライン広告はAIにぴったりの活躍の場。実際に、これはすでに数年も前からAIの活用が始まっていて、皆さんもWebやアプリを利用中に出てくる広告に「なぜこんなに自分の好きなものを知っているのだろう?」と思った経験がきっとあるでしょう。

その点では、『前編』で取り合げた通り『デザイナーの活用すべきプラットフォームが進化しているということ』であり、『AIを活用して、よりよいデザインをすることがデザイナーの仕事となる』のでしょう。

 

AIが発展すれば、ヒトはよりクリエイティブな仕事に集中でき、AIを活用した革新的な製品の開発にともなう新たなデザイナーの活躍の場が開けるのではないでしょうか。
Brandon氏の言葉「AIでクリエイティブの可能性は広がる」―まさにその通りなのです。

 

【AI×デザイン特別企画】
前編:ビジネスにおけるデザインのあり方と人工知能(AI)の本質とは?

中編:AI時代にクリエイターはどう生き残る?AIとデザインの未来

後編:AI×デザインの未来とは?米国の先行事例からのヒント

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