【働き方改革関連法】第1回:ついに2019年4月施行!! そもそも「働き方改革関連法」とは?

安倍首相が2016年から政権の主要テーマとして取り組んできた「働き方改革」。その関連法案が今年6月に可決・成立し、2019年4月から施行されることになりました。残業規制や非正規労働者の待遇改善などが盛り込まれ、女性や高齢者も働きやすい社会を目指す内容となっているようですが、その実態は果たしてどうでしょうか? 法案の具体的な内容と今後の展望について解説します。

 

「働き方改革」が目指すものとは

戦後日本の高度経済成長を支えてきたのは、朝から晩までガムシャラに働き続ける「モーレツ社員」の存在でしたが、近年では過労死の問題なども増え、長時間労働に対する批判が高まっています。また、子育てや介護との両立など、さまざまな立場の人が働きやすい環境を求める気運も高まっています。

「働き方改革」というと、そういった個々人の働きやすさに目を向ける人も多いでしょう。
けれども、そもそも政府主導で「働き方改革」に取り組んできた背景には、将来における日本の深刻な労働力不足があるのです。


出典:内閣府「人口・経済・地域社会の将来像」

日本の人口は2008年の1億2808万人をピークに、2011年以降は減少を続けています。内閣府が発表している「日本の将来推計人口(上図)」を見ると、2030年には1億1662万人、2048年には1億人を割り込み、2060年には8674万人にまで減少すると予測されています。

しかも、少子高齢化により労働力の要である生産年齢人口(15~64歳)の減少が著しく、2027年には7000万人、2051年には5000万人を割り、2060年には4418万人になると見込まれています(国立社会保障・人口問題研究所の推計より)。

労働力が減少すれば、国全体の生産力が落ち、国際競争力の低下は避けられません。これを危惧した政府は、女性や高齢者などさまざまな人材が働き手として活躍できる「一億総活躍社会」の実現を目指し、働き方改革へと乗り出したのです。

 

働き方改革関連法の基盤となる3つの柱


2016年9月に「働き方改革実現会議」が設置され、多くの関係者や有識者たちが議論を重ねてきました。

改革には賛否両論が付き物。特に雇用ルールや労働市場の改革においては、関係者間の利害が対立しがちです。
この働き方改革関連法案についても「サービス残業や過労死を助長する」といった批判の声が上がり審議が繰り返されてきましたが、2018年6月29日の参議院本会議で可決・成立しました。

では、その概要を実際に見てみましょう。

働き方改革関連法は、従来の「労働基準法」や「雇用対策法」など、8つの労働関係法に改正を加える内容となっています。その基盤となるのが、次にあげる3つの柱です。

1. 働き方改革の総合的かつ継続的な推進
2. 長時間労働の是正・多様で柔軟な働き方の実現等
3. 雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保

この基本方針に基づき、以下のような形で改正が進められます。

 

1つ目の柱:働き方改革の総合的かつ継続的な推進

働き方改革の基本的な考え方を法律上で明確に示すために「雇用対策法」が次のように改正されます。

(1)法律の目的や理念
労働者の多様な事情に応じた雇用の安定、労働生産性向上の促進、労働者の公正な評価・処遇による職業の安定といった内容が盛り込まれる

(2)国や事業主の責務
国は労働条件の改善や均等処遇の確保、多様な勤務形態の拡充などの施策を講じること、また事業主はそれを実現するための環境整備に努めることが求められる

これによって、暗黙の了解的に自由な勤務形態が許されることも多いクリエイティブ業界では、ママクリエイターなどの雇用の拡充ができる一方で、逆に法に縛られ厳しくなる企業も出てくるかもしれません。

 

2つ目の柱:長時間労働の是正・多様で柔軟な働き方の実現等

具体的な施策を進めていくために、「労働基準法」、「労働安全衛生法」、「労働時間等設定改善法」において、次のような改正がなされます。

(1)時間外労働の上限規制の導入
年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間を上限とする

(2)年次有給休暇の取得義務化
企業に対し、年5日の有休取得を義務化する

(3)フレックスタイム制の見直し
フレックスタイムの清算期間を3カ月とする(現状は1カ月)

(4)高度プロフェッショナル制度の創設
高収入の専門職を労働時間規制の対象から外す

(5)勤務間インターバル制度導入の努力義務化
終業から次の始業までの間に、一定時間の休息を確保するよう努める

(6)産業医・産業保健機能の強化
事業者は、産業保健業務を適切に行うために必要な情報を産業医に提供すること、また産業医が行った労働者の健康管理等に関する勧告の内容を衛生委員会等に報告することが求められる

この改正が吉と出るか凶と出るか、クリエイティブ業界では難しいところがあります。締め切り前の忙しい時に、残業や有休などを考えているヒマもないでしょう。法の名の下に、結局「仕事を持ち帰り」ということも懸念されそうです。

 

3つ目の柱:雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保

正社員とパートやアルバイト、派遣などの非正規雇用者との待遇差をなくすため、「パートタイム労働法」や「労働者派遣法」などにおいて、次のような改正がなされます。

(1)不合理な待遇差を解消するための規定
パートタイム労働者や有期雇用労働者について、正規雇用労働者と職務内容等が同じであれば、均等待遇を確保する(同一労働同一賃金)

(2)派遣労働者を保護する規定
派遣先との均等・均衡待遇方式か、一定の要件を満たす労使協定方式、どちらかの待遇を確保する

(3)待遇に関する説明義務の強化
パートタイム労働者や有期雇用労働者、派遣労働者から求められたら、正規雇用労働者との待遇差の内容やその理由等を説明しなければならない

(4)履行確保措置と裁判外紛争解決手続の整備
上記の内容がきちんと遂行されるよう、行政による整備が行われる

これに関しては、会社側がきちんとした対応をしていけば、待遇差の不公平感やキャリア形成に一役買うことができそうです。
また、非正規雇用者への正当な待遇により、今まで以上に長く働く人や役職に就くチャンスも出てくることでしょう。

 

働き方はどう変わる?


以上のような労働関連法の改正により、さまざまな立場の労働者が働きやすい環境が整えられていくことが期待されます。残業規制や有休取得義務化などで過重労働が是正されれば、過労死やサラリーマンの自殺といった問題も減少していくかもしれません。

また、正規雇用者と非正規雇用者の間の待遇差が是正されれば、より多様な働き方を選べるようになり、時間制約の多いママクリエイターや介護などで仕事との両立が難しくなっている人たちも、働きやすくなることが期待されます。さらに、現在フリーランスで仕事を受けている人の中にも、柔軟な働き方によって、フリーランスとの兼業という選択もしやすくなるでしょう。

しかし一方で、「高度プロフェッショナル制度」や「フレックスタイム制の見直し」により、労働者がさらなる長時間労働を強いられる可能性があるのでは…といった懸念もあります。

第2回以降は、特に影響が大きい個別の事項の解説をします。
第2回では「残業規制」についてを予定しています。

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