【働き方改革:第3回】働き方改革はクライアント改革から

「働き方改革」をテーマにした当シリーズ、第3回目は「クライアントとの付き合い方」を考えていこうと思います。せっかく自社内で働き方改革をしても、クライアントからの依頼内容によっては、長時間労働を余儀なくされてしまうこともあるかもしれません。仕事をするうえでクライアントは重要な存在ですが、それ以上に大事なものは社員です。社員の健康を守り、生産性やクリエイティビティを保つためには、どのような対策を考えていくべきでしょうか。

 

クライアントからの理不尽な修正・変更依頼は「異常」であると認識するべき

プレミアムフライデーの導入や定時退社の徹底など、どれだけ自社で就業・残業時間を減らそうと努力をしても、クライアントからの依頼によってそれをすべてを返上し、何とかしなければいけない。そんな状況に陥ることが多いのが、クリエイティブ業界の特徴でもあったりもします。

筆者はグラフィックデザイナーですが、周囲の同業者と話をしていると「金曜日の夜に修正指示が入り、週明けの朝イチに再プレゼン」「校了間際に決済者がちゃぶ台を返し、徹夜で再制作」など、自社での改革を推進しているものの、クライアントの”ご意向”により、結局のところ、残業時間は変わっていないといったケースは枚挙に暇がありません。

「働き方改革」を旗印として働き方を見直そう、QOLを重視しようといった動きは歓迎されるべきです。それらが徐々に認知され広がりつつある現在であるからこそ、上述したクライアントへの対応は、「仕方のないこと」ではすまされなくなってきています。

”電通過労死問題”も未だ記憶に新しいですが、今年5月にもテレビ朝日のプロデューサーが過労死認定されるなど、クライアントありきの長時間労働は現実問題として、未だ根本的な解決には至っていないと考えても間違いではないでしょう。

ときに、厚生労働省が発表している過労死の労災認定について記された『脳・心臓疾患の認定基準の改正について』によれば、労働時間以外の認定基準について以下の項目が設けられています。

【就労態様】
不規則な勤務

【負荷の程度を評価する視点】
予定された業務スケジュールの変更の頻度・程度、事前の通知状況、予測の度合、業務内容の変更の程度等

クリエイティブ業界なら上記項目を一瞥しただけでおわかりかと思います。
現状をそのまま代入すると、予定された業務スケジュールの変更、業務内容の変更など、クライアントとのやり取りから生じるイレギュラーな業務となり、そのままあてはまってしまうのです。

私たちは普段、当たり前のようにクライアントから変更・修正依頼などを請け、作業をしているわけですが、これがどれだけ「異常」であり「危険」であるかがわかってくるかと思います。

少々大げさな物言いにはなりましたが、クライアントからの無茶振りを肯定する行為は「たまたま事故が起こっていない」だけで、アクシデントの種はすでに蒔かれていると考えても差し支えないでしょう。

 

契約内容の見直しと休日の明確化。「クライアント改革」への提案


では、上述した問題を解決するためにどのような施策を取るべきかといえば、いくつかの手段が考えられます。

契約内容を見直して修正・変更の回数を規定する(もしくは別途料金を設定する)だけでも、クライアントを牽制できます。クリエイティブ業界は「なあなあ」で仕事をすることが得てして多いため、修正・変更の取り決めなどは形骸化してしまいがちですが、改めてしっかりと社内共有し、徹底することで業務の負担に改善の兆しが見えるでしょう。

また「土日は休みなので連絡は週明けになる」、「長期休暇中は担当者もすぐには連絡できない」など、休日を明確にするだけでも効果が見込めます。

例えば、Web制作会社の「株式会社LIG」では、毎年GW休暇の折には「○○年度、GW休暇の予定をお知らせします」と題し、記事を自社メディアで公開しています。業務連絡にもなりますし、しっかりと社員を休ませる会社であると周知させることができる好例だと言えるでしょう。

自社メディアを運営していない場合でも「お請けしたいのは山々ですが、社則でして」とか、あるいは「弊社も働き方改革で…」と、会社やお上のせいにしても良いでしょう。相手によって言い方を変えればカドも立ちにくいかと思います。

「そんなことは知らない!」と反発するクライアントもいますが、そのような相手は切ってしまえば済むことです。
経験上、理不尽なクライアントと取引を停止して、プラスにはなれどマイナスになった記憶はありません。

 

自分たちから動かなければ、クライアントは変わらない


重要なのは、クライアントの意識を変えてもらうためには、こちらから積極的に働きかけねばならないということです。もちろん、配慮してくれるクライアントも存在します。しかし、ほとんどの場合、いくらこちらが「働き方改革」を行っていても相手には伝わりません。自社で長時間労働への対策や、働きやすい環境づくりをしたならば、それをきちんとクライアントにも通達するべきなのです。

ことクリエイティブ業界においては、制作物に明確な「正解」がありません。そのため、いくら働き方改革が浸透したといっても、この先修正や変更依頼がなくなることはないでしょう。

だからこそ、クライアントにもしっかりと説明するべきなのです。「言い難い」部分ではありますが、事が起きてからでは遅いですし、悪べき習慣はどこかで断ち切らなければなりません。前述した過労死は極端な例だとしても、プレイヤーのストレスが蓄積してしまえば事故が起こるのも時間の問題です。決して対岸の火事ではありません。

 

まとめ

改革を行った上できちんとクライアントに周知させれば、信頼にも繋がります。わらしべ長者とまでいかないですが、働きやすい職場には良い人材も集まることでしょう。

クライアントに対して「一言伝えて理解を求める」だけで、このような好循環が遅かれ早かれ自分たちのものになり実現へ向かえるとしたら、福利厚生を厚くするよりも採用にお金をかけるよりも、遥かにコストパフォーマンスが良いことだとは思いませんでしょうか?

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