【クリエイティブ企業のマネジメント】『クリエイティブ・マネージメント』から学ぶ必須スキル!

独特のセンスや考え方を持つ人が多いクリエイティブの現場では、チーム・マネジメントも一筋縄ではいかないことが多いもの。ちょっとクセのあるクリエイター達をうまく活用し、すばらしい制作物を生み出していくには、優秀なマネージメントが欠かせません。
そこで、一流デザインオフィスでの仕事の進め方を紹介した書籍『クリエイティブ・マネージメント』を参考にしながら、クリエイターを上手にマネジメントするために心がけたいポイントをご紹介します。

「マネジメント」をするということ

一般的にマネジメントとは「組織やプロジェクトを経営面も含めた部分から統括的に管理し、業務を円滑に進める」ことです。
どの業界でもその基本は変わりませんが、クリエイティブの現場では、クライアントが考える一般的なビジネス常識とクリエイターの奇抜な感性とのギャップを調整する、経営的な側面を見落としがちなクリエイターを正しい方向に導く、進行を管理するといったディレクターと重なる役割も求められます。

ここで重要なのは、クリエイターとディレクターの意図をうまく汲み取り満足できるように進めていく「バランス力」です。クライアントありきではクリエイターのやる気が削がれ、100%の実力を発揮できないかもしれませんし、現場に近いディレクターの立場や意見も尊重しなければいけません。

では、そのバランスをどのようにとっていけばいいのか。
今回、数々の一流企業の仕事を手がける有名デザインオフィスの例を参考に、優れたマネジメントの条件を考えてみましょう。

条件1 綿密なスケジュール管理ができる

アートディレクターの水野学氏が率いる『good design company(以下、gdc)』は、NTTドコモやルミネをはじめとする数多くの企業の仕事を手がけ、国内外の栄誉ある広告賞を多数受賞している人気のデザインオフィスです。
このgdcでマネジメントを担当する水野由紀子氏は、仕事を進めていく上で一番大切なのは「スケジュール管理である」と言います。

「私たちの仕事には必ず締め切りがあり、限られた時間でこなさなくてはいけません」

しかし、デザイナーやクリエイターは

「一度作業を始めるとクオリティを上げることに集中してしまい、時間の感覚がわからなくなってしまいます。そこで、実際に手を動かさない人間がスケジュールの管理をすることで、クオリティを落とさずに期限内に完成させることが確実にできるのだと思います」

gdcでは、プロジェクトごとにスタートから納品までにやるべき作業を90項目以上書き出したオリジナルの進行表をつくって共有、作業終了ごとに印をつけ進行を管理
そして水野氏は、社内で同時進行しているすべてのプロジェクトについて、この進行表通りに進んでいるかを随時確認し、進捗を把握しているそうです。

条件2 細やかなコミュニケーションがとれる

クライアントとクリエイターをつなぐのも重要な役割です。
そこで、双方とのコミュニケーションを大切にしながら仕事を進める、デザイン事務所『DRAFT』の中岡美奈子氏のマネジメント術を覗いてみましょう。

『D-BROS』という自社ブランドを展開するDRAFTで、このプロジェクトの立ち上げから関わる中岡氏が重視するのは、「クライアントと話しやすい関係性をつくり上げていくこと」
そのために、自分を飾らず、自然体でクライアントと接するよう心がけているそう。

「プレゼンテーションのときもへんにかしこまらずに、このプロジェクトにとって何が大切なのかだけを考えながら、どんなつたない言葉でも自分の言葉で話すことを大事にしています」

一方、デザイナーなどにクライアントの意向を伝える際は、彼らが最大のパフォーマンスを発揮できるよう、常に気を遣っていると言います。

「デザイナーはデザインに対して純粋な想いとプライドをもって作業をしていますから、あえて制限するような言い方はしないようにしています。クライアントに求められていることをきちんと伝え、でもそこに創造の余地をできるだけ多く残す。その点は非常に繊細でデリケート」

では、双方に違いがあったらどう対応すればいいのでしょうか。
「こちらが迷った状態で伝えないこと」が大事だと中岡氏は言います。そのためには、一番の優先事項は何かを正しく判断しなければなりません。

「クライアントとクリエイター、双方としっかりコミュニケーションをとり、互いの考えをそのプロジェクトに関わる誰よりも知っておくこと。そして自分なりに正しいと思う答えを導きだしておくことだと思います。そうでないと、“言っておけばよかった”とか“言えなかった”というような曖昧なことが重なり、双方の溝は大きくなってしまいます」

両者をうまくつなぐには、丁寧なコミュニケーションと、それに裏づけされた冷静な判断力が必要なのです。

条件3 ぶれない視点を持つ

著名なアートディレクターである佐藤可士和氏率いる『SAMURAI』。ユニクロや楽天など、数々の企業のCIやブランディングをトータルに手がけ、多くの成功事例を生み出しています。
「クリエイティブディレクション」という形で企業と関わることが多いSAMURAIのスタイルでは、そのほとんどが3~5年以上の長期プロジェクトです。
その期間、クライアントとよい関係を築き、最終的な成功へと導くためには、何が大切なのでしょうか。

SAMURAIのマネジメントとプロデュースを一手に引き受けている佐藤悦子氏は、「覚悟の共有をすること」が大事だと言います。

「目指すビジョンの実現に向けてクライアントが抱えている問題の本質をつかみ、問題解決のプロセスを共有しながら、最終的な形としてデザインを提案する」

という佐藤可士和氏のやり方を、言葉を尽くして説明、そして

「何をゴールとしてどういう“つもり”で取り組むか」

という心構えをわかり合うよう努めます。
これが難しい場合は、プロジェクト自体を引き受けない決断も必要だというほど、最初のスタートである「覚悟の共有」を重視しているのです。

それでも、クライアントと衝突することもあります。

「たとえクライアントと意見が対立したとしても、クリエイティブディレクターとして譲るべき点と死守すべき点を見失わずに物事を運ぶことが大切だと思っています」

と佐藤氏。
そのプロジェクトで一番大事なことは何なのか?という物事の本質を見失わなければどんな事態でも、ぶれずに乗り切ることができるのです。

このように、優れたものを生み出し続けるクリエイティブの現場では、優秀なマネジメントが行われています。自身が関わるプロジェクトの成功に、ぜひ彼らの信念や仕事スタイルを参考にしてみてはいかがでしょうか。

参考文献:誠文堂新光社_『クリエイティブ・マネージメント』

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