
「女性活躍」は今、政治でも企業内でも注目ワードの一つです。
2016年6月現在の女性の就業者数は、およそ2800万人とされています。育児・介護休業法の改正など、法律を用いて働く女性をサポートする流れはこれまでもありましたが、昨年、『女性活躍推進法』が施行されたことで、その流れはより加速化しているといえるでしょう。
『女性活躍加速化助成金』も、そのような流れの中で誕生した助成制度です。
■『女性活躍推進法』と『女性活躍加速化助成金』
男性主体の企業が女性を雇うには、それなりのパワーが要ることは間違いありません。
『女性活躍推進法』は女性が働くための環境を整えるための方法を企業に向けて具体的に示したものです。現状把握、計画の立案、実施、現状報告など、さまざまな内容が盛り込まれており、女性がほとんどいない企業の場合は、まさに「ゼロ」からのスタートとなります。
そんな中で知っておきたいのが、女性をさまざまな部署や役職につけることで受けることができる助成制度です。その名も、ズバリ『女性活躍加速化助成金』といいます。
国の法律に沿った内容で女性を雇い、助成金を受けることができたらありがたいですよね。
今から、その内容を順に見ていきましょう。
■『女性活躍加速化助成金』ってどんなもの?
『女性活躍加速化助成金』は、いわゆる「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)」の一環として定められた『両立支援等助成金』制度の一種として、新たに加わったものです。
この『女性活躍加速化助成金』の助成を受けるための具体的な方法は、ほぼ『女性活躍推進法』に沿ったものです。まさに『女性活躍推進法』を周知させ、実施させるためにできた助成金制度といっても過言ではないでしょう。
方法としては、まずは『女性活躍推進法』に基づく方法で、女性社員に活躍の場を与えるための数値目標を打ち出します。
次に、その目標をクリアするための取組内容と取組に関する目標を定めます。そして、実際に定めた数値目標や取組目標を達成した場合に、助成金を受けることができる、というシステムです。
その金額は最大で60万円!この助成制度には複数のコースが設けられているため、次の項目で具体的に見ていきましょう。
■助成金支給までの流れとコース紹介
『女性活躍加速化助成金』には、「加速化Aコース」「加速化Nコース」2つのコースがあります。
いずれも、取組目標、数値目標を達成した場合に選択することができるもので、「加速化Aコース」が取組目標、「加速化Nコース」が数値目標です。
実際に助成金を受けるまでの流れは、主に次のようなものです。
1. 『女性活躍推進法』に基づく行動計画を立てる
2. 最寄りの労働局へ計画を提出する
3. 行動計画に記された取組目標を実施し、女性活躍の場を整える
4. 取組目標の達成時点で、30万円ゲット!(加速化Aコース)
5. 数値目標の達成時点で、30万円ゲット!(加速化Nコース)
なお、4.の加速化Aコースの対象となるのは、労働者が300人以下の中小企業のみです。この300人には、正社員の他、パート・アルバイトなどの非正規雇用者も含まれるため注意しましょう。
人数制限が設けられている理由は、『女性活躍推進法』で定められた内容が義務化されているのが、労働者数300人を超える企業だということでしょう。つまり、努力義務で足りるとされた中小企業にも女性活躍の場を積極的に設けてもらうための助成制度といえます。
■コースに沿った目標の立て方とは?
『女性活躍加速化助成金』には、コース別にさまざまな要件が設けられています。
「加速化Aコース」の場合、
1. 行動計画を『女性活躍推進法』に沿った内容で作っている
2. 行動計画には、その計画期間、数値目標、取組目標、取組の実際の実施期間を盛り込んでいる
3. 行動計画には、長時間労働に対する対策を盛り込んでいる
4. 行動計画を雇用する労働者に正確に伝えている
5. 行動計画を「女性の活躍推進企業データベース」サイトにアップしている
6. 自社の女性活躍情報を「女性の活躍推進企業データベース」サイトにアップしている
7. 行動計画策定届を労働局に提出している
8. 計画期間内に取組目標を達成している
9. 労働者数300人以下の企業である
という、9つの項目すべてをクリアする必要があります。
また、加速化Nコースの場合は、
1. 要件に沿った内容で取組目標を達成し、「加速化Aコース」をクリアしている
2. 数値目標の達成内容について「女性の活躍推進企業データベース」サイトにアップしている
3. 数値目標達成と女性活躍推進法における認定を受けている、もしくは女性管理職の比率を同業種の平均値以上にアップさせている(労働者数300人を超える企業の場合のみ)
などの項目があり、特に影響力の強い大企業に対する厳しい数値設定が目立つ内容となっています。
■各コースの目標の立て方例と注意点
それでは、それぞれのコースに対する目標の立て方の例をいくつか挙げてみましょう。
例えば、これまで男性管理職しかいなかった企業の場合、まずは「管理職登用制度を女性にも拡大する」旨を口頭や通達などで労働者に周知し、実際に管理職として登用するための研修を行うなどの方法を「取組内容」として定める方法が挙げられます。
その後、実際に女性管理職を登用する人数を具体的に示すことで、これを「数値目標」とすることができます。この数値目標には、具体的な数字を示す他、男女比率のパーセンテージを示すことも可能です。
あるいは、男性総合職が多い企業の場合、総合職転換制度を女性に対しても実施するという「取組内容」を設け、実際に「数値目標」に沿った内容で総合職へ女性を転換させることで、クリアすることができます。
なお、『女性活躍加速化助成金制度』を利用するにあたって注意する点としては「事前に作成した取組目標や数値目標の内容をチェックしてもらう場がない」ということです。したがって、助成金を受けることを目指して取組目標や数値目標をクリアしたとしても、受給を受ける段階で労働局より「この内容ではちょっと・・・」とダメ出しをされてしまう可能性があります。
このような最悪な事態を防ぐため、計画の立て方については厚生労働省のリーフレットなどを参考にした上で、最寄りの労働局に事前に内容を見てもらうなどの対策が必要でしょう。
また、この助成金制度の目的が「女性の活躍推進」であるため、そもそも女性社員がほとんどの企業や、すでに女性が活躍できる場がふんだんに設けられている企業は対象外となるため、気をつける必要があります。
やはりこの点も、どの程度であれば対象外になるかはケースバイケースなので、必要であれば労働局に確認をされることをオススメします。