【人事必読!】『外国人採用』をする際に知っておくべきこと

労働力不足解消のため、2019年4月から「入管法」が改正され、外国人労働者の受け入れ拡大の環境整備が整い始めています。政府は2025年までに50万人程度の外国人労働者の増加を見込んでおり、2020年までに留学生の受け入れを30万人に増やす取り組みも行っている状況です。
今回は、そんな外国人の採用を検討している会社の人事に向け、外国人を採用するメリットや注意すべき点、具体的な雇用手続きについて解説します。

 

「入管法」の改正と外国人の就業状況

「入管法」とは、正式には「出入国管理および難民認定法」のことです。これは、日本に出入りするすべての人が対象で、出入国時の管理規制・難民の認定手続きの整備が目的の法律です。

改正前は大学教授やエンジニア、経営者など「高度な技術を持つ専門職」と、日本の技術を学ぶ目的の「外国人技能実習制度」で技能実習生の労働が可能でした。
しかし、2019年4月から改正の入管法は、これまで認められていなかった「単純労働」など、外国人の受け入れを拡大し、深刻な人手不足の解消目的で施行。改正では以下2つの「在留資格」が新設されました。

「特定技能1号」
一定の知識・経験を要する業務に就く人材が対象で、日本語試験や簡単な技能試験に合格した外国人に最長5年の在留を認めます。
「特定技能2号」
熟練技能が必要な業務に就く人材と認められれば、在留期間の更新を長期可能とし、家族帯同も認められています。

厚生労働省によると、日本国内の外国人労働者数(技能実習生なども含む)は、2018年10月時点で1,460,463人。前年同期比で約18万人増え14.2%増、届出の義務化以降、過去最高を更新しています。

外国人を採用するメリットと何か?

外国人の積極採用を考える企業は少なくありませんが、ここではクリエイティブ業界での採用可能性も高い、優秀な人材が多い外国人留学生にフォーカスした形で、メリットを挙げてみます。

1. 優秀な人材を確保できる
2017年の将来推計により、日本の労働力人口は2065年には2016年より約4割減少とされています。つまり、優秀で高度な知識を有する人が多い留学生採用は、企業の「即戦力確保」につながります

2. 社員に刺激を与え、社内の活性化が見込める
日本に留学生として来日し、日本企業への就職を希望する留学生は意識とモチベーションの高い人が多い傾向です。そんな意欲的な留学生と仕事をする日本人社員にも良い刺激と社内活性化の効果が期待できます。

3. 海外進出時の戦力となる
彼らは言葉だけではなく、母国と日本の2つの文化を理解し、現地と日本企業の間のズレを解消してくれます。海外進出を考える企業では、スムーズなビジネス展開につながる可能性があります。
また、海外ネットワークもあり、正確な情報を入手しやすいメリットも期待できます。

4. 新しいアイデアが生まれる
異なる文化環境で生まれ育っており、日本人では考えられい新しいアイデアや発想が期待できます。新商品・新ビジネス展開のヒントの可能性も大いに出てきます。

現状クリエイティブ業界では外国人の新卒採用を積極的に行われており、むしろ定着化しています。国籍も東アジアや東南アジア以外に、ヨーロッパやアメリカなど欧米圏へも広まりつつある状態です。

採用前に注意しておきたい「ポイント」

そして、外国人留学生採用のメリットと併せて、採用前の注意点も必要です。

1.求人募集時の注意点
外国人留学生を求人する時は彼らのみ対象の求人はできません
職業安定法3条では「何人も人種、国籍、信条などを理由に職業紹介・指導などについて、差別的取り扱いを受けることがない。」と定められ、職業紹介事業者および派遣元事業主がそのような差別的取り扱いは禁止されています。

例えば、求人票に「◯◯人に限定・日本人応募不可」などは不可です。ただし、「日本語能力検定1級、◯◯語ネイティブレベル、TOEIC800点以上」などの募集条件なら問題ありません。

2. 「在留資格」を必ず確認する
採用にあたり在留資格を確認し、適切な就労ビザに変更する必要があります。外国人留学生の在留資格は「留学」ですが、そのままで採用日までに「留学ビザ」から「就労ビザ」へ変更し、在留カードで許可を得ていることの確認が必須は原則週28時間以内のアルバイトのみで正社員では働けません。

さらに注意点として、在留資格は許可された活動範囲のみでの就労なので、採用後の配属先や業務内容などが可能な活動範囲かどうか十分に確認し、資格変更を行うことが必要です。万が一、許可を得ないで働かせた場合、「不法就労助長罪」として企業も処罰の恐れがあるので注意です。
ちなみに、この罪に該当すると雇用主は3年以下の懲役、もしくは300万円以下の罰金に処されます。また、就労ビザには有効期限があるので更新時期も把握が必要です。そのため、企業担当者は入管法に関してある程度の理解が求められます。

3. 「労働条件」を明確にしておくこと
外国人留学生も採用すれば、労働基準法を遵守することになり個々の労働条件提示は書面提示はもちろん、明確な説明が重要です。日本人同士では「口頭の約束」での採用もありますが、言葉やニュアンス違いのトラブルもあり、離職防止も含めた入念な準備が大切です。
外国語の「雇用契約書」を準備すると良いでしょう。

また、労働基準法3条では「使用者は労働者の国籍などを理由に賃金、労働時間その他の労働条件で差別的取り扱いをしてはならない。」と定めてあり、外国人留学生のみ労働条件の厚遇はできません。

4. 外国人留学生の「日本語力」を確認しておくこと
外国人留学生は日本語を勉強してても、実際は読み書きが苦手な人などもいます。筆記試験や日本語能力試験などを活用し、日本語能力を確認しておくことが後のトラブル防止になると言えます。

また、採用時に日本語能力があまり芳しくない場合、企業側がある程度教えるのも方法の一つ。対応が難しい場合は、地域での日本語教室などの活用もおすすめです。
例えば、市町村や国際交流協会、NPOなど地域団体と連携した日本語教育への取り組みを検討するのも良いかもしれません。

5. 社内の受け入れ体制を整えること
まずは、どのような目的で採用するか、日本人社員の理解を得ることも必要です。日本特有の制度、日本にはない慣習など、説明を省略してしまうとトラブルにつながるので、日本語やマナー研修、上司と部下の定期面談なども必要でしょう。

万が一のトラブル時は社員同士での話し合いや改善も大切です。例えば、「空気を読む」「察する」など、日本独特の「暗黙の了解」は基本的に通じず、指示はしっかりと言葉で、かつ理解の確認が大切です。

外国人を雇用する際の「手続き」

次に、実際に雇用する時の具体的な「手続き」について考えます。外国人雇用では日本人とは異なる届出書類が必要なケースがあります。

1. 雇用保険の対象となる場合
「雇用保険」の対象なら、「雇用保険被保険者資格取得届」を雇い入れの翌月10日までに管轄のハローワークに提出します。また、離職時は「雇用保険被保険者資格喪失届」をその氏名と「在留資格」などを10日以内に届出なければなりません。
この際、「雇用保険被保険者資格喪失届」の備考欄に次項を記載し提出します。
・在留資格
・在留期限
・国籍

2.雇用保険の対象とならない場合
対象ではない場合は、雇い入れや離職の翌月末日までに、管轄のハローワークへ「外国人雇用状況届出書」を提出し、それと併せて次の書類を添付書類として提出します。
・外国人登録証明書またはパスポート
・資格外活動許可証または就労資格証明書

3.社会保険の対象となる場合
社会保険は、何人も労働者を「常用雇用」する場合に加入必須です。「常用雇用」とは、下記いずれかの条件を満たす人です。

A.1週間の所定労働時間、および1カ月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上
B.下記5つの条件を満たしている
(1)週の所定労働時間が20時間以上
(2)賃金月額が月8.8万円以上(年106万円以上)
(3)1年以上の雇用が見込まれる
(4)従業員501名以上(厚生年金の被保険者数)の勤務先で働いている
(5)学生ではない(夜間や定時制など、学生が加入できる場合もあり)

長期雇用が前提ではなく、社会保険加入で余分な保険料を払いたくない外国人労働者もいますが、「常用雇用」にあたる場合には加入が必要です。社会保険制度について丁寧な説明と理解を得ましょう。
手続きに関しては雇い入れや離職から5日以内に、日本年金機構や年金事務所に下記関連書類を届け出なければなりません。
・健康保険・厚生年金 被保険者資格取得届
・健康保険 被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)
・健康保険・厚生年金 被保険者資格喪失届

まとめ

外国人採用にリスクを感じたり、受け入れ態勢が不十分で二の足を踏む企業も少なくないかもしれません。しかし、現在の労働力不足の中、企業成長を支えるため外国人採用を視野にした採用活動は必ず必要になってきます。
これからの企業発展のためにも、日本人にはない外国人のパワーや可能性を信じ協働する道を模索することが必要でしょう。

社会保険労務士法人ユニヴィス 社会保険労務士 池田久輝

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