【助成金】2018年4月「時間外労働等改善助成金」が新設予定です

後を絶たない長時間労働にまつわる問題。国を挙げての取組が続いているものの、現在も長時間労働を理由とした労使トラブルが露呈し続けている状態です。クリエイティブ業界も長時間労働が多い業界です。そんな中、時間外労働に対する施策を取った中小企業に向けて助成を行う制度「時間外労働等改善助成金」が2018年に新設予定です。働き方の見直しを進めている企業も多いと思いますが、可能そうであれば、ぜひ助成金もセットでご活用ください。

 

どのような助成制度か

実は「時間外労働等改善助成金」は、現在稼働中の「職場意識改善助成金」が名称を変えてリニューアルするものです。

現行の「職場意識改善助成金」は、人数が少なく労働時間に対する意識が薄くなりがちな中小規模の企業向けに実施されている助成制度。
具体的には、所定労働時間を減らす方法や有給休暇の取得促進、残業時間の上限を定める方法、在宅勤務を可能とするテレワーク制度の導入など、職場全体の慢性的な労働に対しての意識改善対策を行った企業に一定額の費用負担を行います。
(過去に当コンテンツでもご紹介しています。「クリエイティブ業界のサポート的存在!「職場意識改善助成金」のススメ」)

この「職場意識改善助成金」制度が、本年4月より「時間外労働等改善助成金」として新たに生まれ変わることになりました。

 

4種類のコース設定

以前の制度も多彩な内容でしたが、リニューアル後の「時間外労働等改善助成金」は、主に次の4種類のコース設定より成り立っています。

1.時間外労働上限設定コース
2.勤務間インターバル導入コース
3.職場意識改善コース
4.団体推進

上記のコースのうち、1~3は、現存の「職場意識改善助成金」制度が拡充した制度。一方、4は新制度です。
各コースの具体的な内容や対象となる事業主の基準、助成金額をみていきましょう。

 

1.時間外労働上限設定コース

時間外労働に上限時間の設定を行った事業主に対して助成が行われるコースです。対象となるのは、相当数の時間外労働が行われており、次のa、bのいずれかに該当する事業主です。

a.時間外労働数が休日労働を含めて月に80時間、年間で720時間を超える特別条項付き36協定を締結している中小企業の事業主で、複数月、もしくは同じ月に複数の労働者が締結した時間を超える時間外労働を行った場合

b.時間外労働休日労働を含めて月に80時間、年間で720時間以下の特別条項付き36協定を締結している中小企業の事業主で、複数月、もしくは同じ月に複数の労働者が締結した時間を超える時間外労働を行った場合

上記項目に該当した事業主が、次のような対応を取った場合は、その対策にかかった費用の4分の3の金額を助成金として受け取ることができます

a.平成30年度・平成31年度に有効である36協定の内容を、
「時間外労働数が月に45時間、年間で360時間以下」に設定した場合 ⇒ 上限150万円
「時間外労働数が月に45時間超~月に60時間以下」の設定に留まった場合 ⇒ 上限額100万円
「時間外労働数が月に60時間超~月に80時間以下、年間で720時間以下」の設定に留まった場合 ⇒ 上限額50万円

b.平成30年度・平成31年度に有効である36協定の内容を、
「時間外労働数が月に45時間、年間で360時間以下」に設定 ⇒ 上限100万円

なお、aまたはbにプラスして「週休2日制」を導入した場合、その度合いに応じて上限額が次のように加算されます。
ただし、助成額の上限額合計は最大で200万円です。

4週あたりを単位とした状態で、
・休日数が4日増し:100万円
・休日数が3日増し:75万円
・休日数が2日増し:50万円、
・休日数が1日増し:25万円

 

2.勤務間インターバル導入コース

「勤務間インターバル制度」は、充分な休息を取ってもらうための対策のこと。仕事を終えて帰る時間から、翌日に出社するまで一定時間空けることを意味しています。

対象となる事業主は、
・新規に「9時間以上」の勤務間インターバルを導入する中小事業主

例えば、所定労働時間が9~18時の職場で「午前2時」まで働いた社員がいます。
要件を満たすためには「9時間以上のインターバル」が必要なため、翌日の出社時間は「午前11時」になります。その上で、本来の勤務時間である9~11時分の給料も削減せず支給する必要があります。

この制度を導入した事業主は、制度導入時にかかった費用の4分の3の金額を助成金として受け取ることができます
上限額は以下のとおりです。

勤務間インターバル時間上限数が、
「9時間以上11時間未満」の場合 ⇒ 上限40万円
「11時間以上」の場合 ⇒ 上限50万円

 

3.職場意識改善コース

年次有給休暇の取得促進、所定外労働の削減など、職場全体の意識を変えていくための制度を推進する事業主に助成が行われるコースです。

このコースは、年次有給休暇の取得促進・所定外労働の削減等の取組を行い、次のc、dで定められた目標をクリアした事業主が対象となります。

c.有給休暇の年間平均取得日数が4日以上増加した場合

d.月間における平均残業時間数が5時間以上削減された場合

その他、一週間あたりの所定労働時間を40時間以下とする取組を実施し、特例措置対象事業主の一種間あたりの所定労働時間が40時間以下になった場合に助成が行われます。

上記のc、dの項目に該当した事業主は、対策の内容や達成率に応じて次のような助成を受けることができます

有給休暇の取得促進・所定外労働の削減に取組
・助成額:費用の2分の1~4分の3が助成
・上限額:100万円
※有給休暇の年間平均取得日数を12日以上増加させた場合:上限額150万円

週所定労働時間を40時間以下とする取組
・助成額:費用の4分の3
・上限額:50万円

 

助成の対象となる経費は?

ここまでで説明した「時間外労働上限設定コース」「勤務間インターバル導入コース」「職場意識改善コース」は、下記の経費が助成の対象となります。

・就業規則等の作成や変更費用
・業務研修を含む研修にかかった費用
・外部専門家によるコンサルティング費用
・労務管理用機器などの導入や更新費用
・労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新費用
・人材確保等のための経費など、労働時間短縮や生産性向上に向けた取組にかかった費用

さらに、労働者数が30人以下の事業所で、労働の能率アップを目論んで導入した設備・機器等の経費が30万円を超える場合は、費用の5分の4が助成されます。

 

4.団体推進

新設されたコースです。
この対象は、傘下企業をもつ複数の事業主団体。具体的には、3社以上の中小企業の事業主の団体で、傘下企業の時間外労働の上限規制への対応に向けた取組を実施した場合、費用が助成されます。

支給要件は、次のような内容となります。
・傘下企業のうち「半分以上」の企業について、時間外労働の削減や賃金引上げに向けた生産性向上に資する取組を行うこと

上記項目に該当した事業主は、上限額500万円でかかった費用の助成を受けられます。
さらに、都道府県または一定のブロック単位で構成する中小企業の事業主団体で10社以上の傘下企業を抱える場合は、上限額が1,000万円にアップします。

なお、助成対象の経費は、次のとおりです。
・会議の開催費用
・実態調査の費用
・セミナー開催または受講費用
・巡回指導による費用
・人材確保等のための経費など、労働時間短縮や賃金引上げに向けた生産性向上に資する取組にかかった費用

 

人材の獲得難や業界内での労働時間を起因とする事故・事件などで、労働時間の見直し・改善を行っている制作会社は非常に増えてきています。事業会社やメーカー内のクリエイティブポジションでも同様です。
この助成金をうまく使用し、社内のクリエイターがより能力を発揮しやすい、働きやすい職場作りを促進しましょう。

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