
仕事の中で、最も時間が取られるといっても過言ではない「企画書」。時間と手間をかけることなく、説得力のある企画書をつくりたい。そんな要望に応えるべく、解説している企画書づくりのテクニック。初級編、中級編に続き、上級編として、ビジュアルの作り方から、提案時のポイントまでを紹介します。
■コツ1:写真・イラストで「おもしろくなる雰囲気」を伝える
企画書には「それが実現したら、絶対におもしろいことになる」という高揚感が必要です。
ここで勘違いしてはいけないのは、ビジネスの上での「おもしろさ」は、ゲラゲラ笑えたり、心理的満足感が得られたりするというだけではないということです。重要なのはコストパフォーマンス。
しかし、コストパフォーマンスの数値は、効果を費用で割り算すればでてきますが、実際の効果は、企画段階では未知数です。
では企画書でどうやって提案相手に「大きな効果が得られそう」というイメージを持ってもらうのか。
そのために有効なのが、写真やイラストなどのビジュアルです。
強く印象付けるには、写真は1ページに大きく配置するか、バリエーション画像を3~5枚程度使う方法が効果的です。
複数枚を1ページに使用する場合は、不要な部分をトリミングしたり、画像と画像を少し重ねて空白を減らしたほうが、提案者側の「見てほしい部分」のインパクトが強く残せます。
また、配置も重要です。
右脳と左脳では、ビジュアル処理が得意といわれているのは右脳の方です。また、脳は、それぞれ、クロスして情報処理するといわれています。
ですから、一番重要となる画像は、ビジュアルの処理が得意といわれている右脳が察知しやすいよう、左側に配置するのがおすすめです。こうすることで、見る側の頭の中に、情報がすっと、スムーズに入りやすくなるのです。
さらに、人間の目は左から右へと動くといわれています。そのため、時間の経過を示す写真を使うときには、左から順に右へと流すのがポイントになります。
■コツ2:インパクトを生み出す「紙芝居」テク
聞いている人を「ワクワクさせる」ためのテクとして、覚えておいてほしいのが「紙芝居」テクです。
データやコンセプトを明示した資料と資料の間に、「この結果が何を意味するか」「そこで、私たちは提案します」といった、ゴナフォントなどを使って書いた「あおり言葉だけのページ」を差し込むのです。
これによって、読む側の「次に何が書かれているのか」という意識の高揚が図れるのです。
このテクは、提案相手に手渡す紙資料でも、スライドで表示している企画書をページ送りするときにも使えます。
ただし、その数が多いと興ざめを生んでしまいます。ひとつの資料につき、2~3回の頻度がベストです。
また、筆者の知人の中でも指折りの企画書の達人は、「ここぞ」という大型の企画提案の企画書には、A3の紙を使っています。まさに紙芝居サイズ。彼は「文字もビジュアルも、大きいほうが意識に残りやすく、企画が通りやすい」と確信しています。
中年以降になるとなおさら、小さい文字は一瞥しただけで「読む気をなくす」という人も少なくありません。企画書でのA3紙使用は飛び道具といえなくもありませんが、「そういうことをしている人もいる」ということは、覚えておいて損はないと思います。
■コツ3:松竹梅は、梅を自己ベストの提案に
企画案を出す場合、予算や規模にバリエーションをつけて、『松』『竹』『梅』と3つの企画を提案することが多いと思います。
一般的に「人は、3つの提案をされたときに、真ん中を選びがちである」と言われています。そのため、『松』は実現が難しいもの、『梅』は誰もが納得できるベーシックなものと、『竹』の当て馬的に作成し、『竹』に全力を注ぐ、という考え方で企画書に向き合っている人がほとんどではないでしょうか。
しかし、誰もが納得できるベーシックな『梅』企画のために時間を割くのは、企画書づくりの中でもっともムダな行為です。なぜなら、その提案書を作り、発表したとしても、聞く人に対して「アイデアのないつまらない人間」という印象しか与えないからです。
一方、『梅』に実現可能で、自分がもっとも「おもしろい」と確信できる『竹』クラスの企画を入れれば、『竹』『松』は「アイデアマンである自分」のアピールに使えます。こういう環境であれば可能、という未来予想図があれば、なおよいでしょう。
どうぞ、当て馬や捨て駒のために時間を費やさないでください。
仕事効率が悪いだけでなく、あなたの評価を不本意に下げる結果にもなりかねません。