クリエイティブ企業も知っておくべき『就活新ルール』とは一体?

経団連は、現在の大学2年生が対象となる2021年春入社以降の就職・採用活動のルール「採用選考に関する指針」の廃止を決定しました。現行では経団連の会員企業は会社説明会が3月1日、面接などの選考活動が6月1日、内定の通知日が10月1日をそれぞれ解禁日として、2022年度卒予定の学生までを適用するとしています。今回は、就職・採用活動のルールの変更によりどのような事態が予想されるのか。また、それに伴い企業におけるメリット、デメリット、どのような準備をすべきかを解説します。

就職・採用活動の新ルールの背景とは?

就活ルール見直しのきっかけになったのは、「通年採用」の必要性が増している中で、2018年9月に経団連の中西会長が発言が契機でした。

「大学3年生の3月採用広報解禁、大学4年生の6月選考解禁、10月内定交付する現行のルールが守られずに形骸化している、経団連が就活ルールを決め、徹底させるものではない」として、廃止する意向を正式に表明したのです。しかし、それでは混乱が予想されるため、政府が経団連に代わり新たな就職・採用活動のルールづくりを主導することになりました。

『学生が安心して学業に取り組めること』を考慮し、2022年度の新卒入社学生は現行ルールを維持することが正式決定していますが、2023年春以降の新卒入社学生については未定となっています。

現行ルールの現状と廃止後の予想される状況

現行の就活ルールでは、学生が学業に専念する時間を確保できたり、経団連に加盟する大企業における早期囲い込みへの抑止力を持ち、さらに採用活動の解禁日が同じ場合は企業の採用戦略を立てやすいというメリットがありました。

しかし、経団連に加盟しない中小零細企業やベンチャー企業、外資系企業などは現行の就活ルールに従う必要がないので、採用活動を通年で実施、早期に内定を出すなどでルール自体が形骸化している現状があります。

現行の就活ルールが廃止されるということは、これまでの「就活時期」という概念がなくなるため、就活時期の早期化と優秀な学生の争奪戦がますます激化することが予想されます。極端な例で言えば、大学1年生でも内定を受けられることになります。

また、これまでインターンシップをしてこなかった企業が、積極的に採用へ直結するインターンシップやイベントを行う可能性もあるため、学生は常にアンテナを高くしておくことが求められます。
これまで足並みを揃えて採用活動を行ってきた企業にとって、通年採用は業務負担の増加が予想されるでしょう。

就活新ルールで考えられる『メリット・デメリット』

就活ルールが廃止された場合、前述のとおり事実上、すべての企業が「採用活動の早期化」「通年採用」が可能になります。就活ルールの撤廃は、解禁日を気にせず採用をしていた中小零細企業やベンチャー企業、外資系企業に先行され、優秀な学生が採れなくなる問題も解消します。

つまり、内資系の大企業側からすれば、早期に採用活動を始められるのでメリットが多いかもしれません。しかし、通年採用は業務負担の増加が予想され、『働き方改革と逆行した流れ』になる可能性があります。
しかも、通年での採用活動は時間とコストもかかり、大企業と中小零細企業で採用力の差が出てしまうかもしれません。中小零細企業にとっては、今以上に採用戦略を検討する必要があります。

また、学生側の影響としては就活ルール廃止により、企業が独自のスケジュールで採用活動を行えるので、採用活動のピークが各社で分散されます。これにより選考を受けられる企業数が増え、内定チャンスも増すかもしれませんが、早期囲い込みで大学に登校せず、授業も受けずに就職活動へ勤しむ学生が増えることも懸念されます。

「就活新ルール」への対応に企業が準備すべきことは?

2021年度までは現行の就活ルールですが、政府は改めて経団連など440の団体に対し、ルールを守るよう周知を図っており、実態調査も実施する方向です。経団連から政府にその主導権が渡っても、就活ルールはあくまでも『紳士協定』であり、破った企業への罰則などを設けない意向です。

グローバルに事業展開する企業では、優秀な若手人材やIT(情報技術)技術者の争奪戦が熾烈を極め、インターンシップを通じた早期採用や通年採用を重要視する時代の流れが実態としてあります。

そのような時代で、会社としてはブレずに自社に合う人財の採用こそが急務であり、最大の悩みでもあります。継続的な企業成長のためにこれからの新卒採用で大切なのは、いつでも採用できる体制づくりを構築することにあるかもしれません。
欲しい人材をいつでも採用できる体制があれば、就活新ルールが適用されて通年採用になっても恐れるに足りません。

新ルールが適用された場合、特に影響を受ける中小零細企業が、大企業に負けない採用力を発揮できるようぜひ取り組んでおくポイントは、次の3つです。

1.自社が理想とする人材像の明確化&共有と情報発信

採用候補者との接触頻度の増加とその母数を最大化するために、改めて自社の理想の人材像を明確化し共有しましょう。

『会社の理念・ミッション・ビジョン・バリュー』から考え、その目標達成にどのような事業や人財が必要なのか、まずは経営トップが考え、社員全員と意見を共有し明確にします。明確化後は、自社HPやパンフレット、展示会、インターンシップを通じ情報を積極的に社内外へ発信、これによってブランディングにも貢献できます。

これらを行うことで、採用候補者を見極めるためのスピードアップへつながり、ミスマッチのない採用への可能性が格段にアップできます。

2.アンテナを高く広げ、社員全員で採用するチームづくり

上記で考えた理想の人財像をもとに、採用候補者との積極的な「出会い創出」が求められます。特に中小零細企業は、大企業と異なり採用への時間やコストが限定されているので、社員の縁故からメディア戦略までと使える手段は何でも活用します。
社員一人ひとりが自社の人材採用に高い関心を持ち、その行動量を最大化させられるようにしましょう。

3.突発的な採用チャンスを掴む社内フォロー体制の構築

新卒採用のような一斉採用以外でも、突発的な採用のチャンスに即対応ができるように社内の協力体制を常日頃から構築しておくことが大切です。中小零細企業では、会社からのレスポンスが遅いことでみすみす採用を逃すことも多いようです。
採用候補者の状況を常に共有し、社内への声掛けやメンター制度なども整えておくと良いでしょう。

まとめ

就活ルールの廃止、つまりは「就職活動の多様化」です。また、若年層の人口減少を背景とした企業の採用難も変革の一因と言えるでしょう。この変革は、学生にはより自由な就職活動につながる可能性を秘めていますが、まだ過渡期であり、今後の政府発表に注目が必要です。

先の時代への流れを見据えると、企業は改めて「人材採用の意味」を再考し、これまでの常識や現行の手法だけに捉われることなく、今こそ広い視野で採用を深く見直すべき時が来たのかもしれません。

 

出典
厚生労働省「大学等卒業・修了予定者の就職・採用活動時期について
経団連「就活ルール廃止 時事通信

社会保険労務士法人ユニヴィス 社会保険労務士 池田 久輝

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