企業は仕事の発注時にチェック!! 『業務委託』のメリットと注意点

近年、働き方改革を進める中で「契約形態」も多様化しています。その中でも特に、クリエイティブ業界は「業務委託契約」割合が多い業界かもしれません。しかし、「業務委託契約」ではフリーランスや個人事業主は『労働者ではないから、特に気にする点はない』と思う担当もいらっしゃるのではないでしょうか。業務委託でも「偽装請負」として、法令違反を問われることもあります。そこで今回は、「契約」の違いを確認し、企業側の業務委託におけるメリットや注意点についてお伝えします。

『契約形態』の違いについてしっかりとした認識を

1. 業務委託契約

「業務委託契約」とは、『受託者(フリーランスや個人事業主など)が委託者(企業など)から独立し、自らの責任で委託業務を行う働き方』のこと。業務委託では、受託者との間でどのような仕事を「いつまで・どのように・いくらで行うか」を取り決めた「業務委託契約」を締結します。

委託者は受託者に指揮命令や労務管理を”一切行わず”、契約で定められた期限までに業務遂行させるのが大きな特徴です。

2.雇用契約

「雇用契約」は、『採用企業と応募者が直接雇用契約を結び、その企業の指揮命令のもと業務を行う働き方』のこと。大きく「正社員」「契約社員」の2つに分けられ、正社員の雇用契約は期間の定めがありませんが、契約社員には一定の契約期間が定められています。

契約社員は原則として、1回当たりの契約期間上限は、一定の場合を除き3年を超えてはならないというルールがあります。また、契約更新すれば3年以上の労働が可能ですが、契約期間が同一企業で通算5年を超えた場合、契約社員が企業へ「無期雇用契約」の転換を求めることができます。その際は企業側はその求めを断ることはできません。

3.労働者派遣契約

労働者派遣契約とは、『労働者が派遣元企業と雇用契約を結んだ上で、派遣元企業が派遣契約を結んだ派遣先企業で働く働き方』のことです。

法律上、雇用主はあくまで派遣元会社なので、給与の支払いや基本的な労務管理の義務は派遣元ですが、実際の業務指示は派遣先企業が行います。派遣社員も契約社員と同様に、「有期雇用契約」を締結・更新します。

派遣法の定めにより、同一企業・部署で同一業務を3年以上続ける場合は、派遣先企業がその派遣社員を直接雇用するか、派遣元が無期雇用化するなどの対応が必要です。

企業が「業務委託」を選択するメリットとは?

では、企業が業務委託をするとどのようなメリットがあるのでしょうか。以下に見ていきたいと思います。

1.「労働法」が適用されない

業務委託の受託者は、労働者ではないので労働基準法や最低賃金法が適用されません。労働基準法の法定労働時間は「1日8時間、1週間で40時間」以内です。最低賃金法は都道府県ごと最低賃金が決められ、使用者は労働者に「最低賃金額以上の賃金を支払うこと」が義務づけられています。

しかし、業務委託では個人契約でも労働法の適用は受けません。
例えば副業の方をアルバイトとして雇用すると、本職で働いた労働時間を考慮する必要がありますし、賃金も最低賃金や時間外割増などを考慮する必要があります。
一方、業務委託で仕事を発注するのであれば、時間面や労働法で定めるところの賃金ルールを気にする必要はありません

2.「契約の終了」ができる

無期契約の社員解雇や、契約社員の契約期間中の途中終了には厳しい基準があります。会社の秩序を乱した社員の「懲戒解雇」は、就業規則の懲戒に関する規定を設け、その懲戒理由に該当しなければ認められません。

また、業績低下による「整理解雇」も人員削減の必要性や解雇回避へ努力したかなどの要件があり、売上が落ちてきたからと言って簡単に解雇ができるものではありません。

その一方で、業務委託は契約の結び方にもよりますし、いつでも好きな時ノーリスクでというわけではありませんが、契約の終了とともに打ち切ることが可能です

3.「高い専門的スキルのある人材を活用」できる

企業が専門性の高い人材を必要とする場合、自社でまかなう場合は新しい人材の雇用か、既存社員の教育・育成があります。また、新しい人材の雇用には採用コスト、社員教育の場合も教育コストや時間を要します。
そこへ業務委託で、外部の専門性の高い人材をタイムリーに活用すれば、コストと時間を抑えるメリットがあります。

4.「社員がコア業務に集中」できる

業務委託で「人的リソースを効率的に使う」ことができます。
社員が『ノンコア業務』に多くの時間を割いている場合、定型化できるノンコア業務をアウトソーシングし、社員をコア業務へ集中させられます。特に、専門性の高い社員の負担を軽減できれば、専門分野である『コア業務』に注力できます。

5.社会保険料などのコストが不要

自社業務を依頼する受託者は、自社の労働者ではないので「社会保険料・労災保険料・雇用保険料」など、労働保険料の負担がありません。社員へ退職金の積み立てを行っている場合も、業務委託では不要です。このように、報酬と消費税などの負担のみでコストが抑えられます。

6.業務量とコストを連動させられる

年度や季節による業務量の幅がある場合、繁忙期に合わせた人材確保では人材過剰となり人件費に無駄が生じます。
一方で、業務委託は発生業務量に応じた発注が可能で、無駄なコストが省けます。業務委託の活用によって、業務量とコストを最適化できます。

業務委託を活用する際の注意点!!

ただし、業務委託契約にも注意すべきポイントがあります。企業が業務委託を考える時の注意ポイントを3点挙げてみましたので、留意しましょう。

1.業務委託には「請負契約」と「準委任契約」がある

フリーランスや個人事業主と「業務委託契約」を締結する時、業務委託には「請負契約」「準委任契約」の2つがあります。

「請負契約」とは、仕事の完成や成果物に対する報酬の支払い義務が発生する契約です。
「準委任契約」とは、仕事の完成に関わらず、業務遂行(事務処理行為など)に応じた報酬の支払い義務が発生する契約です。

支払いトラブルの防止のためにも「仕事の完成が目的か、委託業務の遂行が目的か」を契約段階で明確にする必要があります。

2.実態で業務委託に該当か判断されます

請負や委任のいずれかで業務委託契約書を締結しても、「実態が雇用契約に該当するのであれば雇用契約である」とみなされます。その場合は労働法の適用とともに、社会保険の厚生年金や健康保険、労災保険や雇用保険への加入が必要です。

雇用契約とみなされる場合は『労働者性がある』と判断されたケースです。労働者性の判断基準は、「使用従属性と労働者性」で総合的に判断されます。使用従属性とは、仕事依頼への「許諾自由の有無」、業務遂行上の「指揮監督・労務提供の代替性の有無」、「報酬の労務対償性」が判断基準です。労働者性の判断要素としては、「機械や器具の負担関係」や「報酬額」などです。

3.間違えやすい『偽装請負』に要注意!

業務委託契約の締結にも関わらず、実質的には労働者派遣に該当するケース「偽装請負」と言います。もし「労働者派遣」と認定されれば、派遣法・職業安定法違反となり「行政指導・勧告・氏名公表・罰金」などの対象になる可能性があります。

このときの一番のポイントは「指揮命令の有無」です。
冒頭で触れた通り、業務委託は「委託者は受託者に指揮命令や労務管理を”一切行わず”」が前提です。もし委託者が受託者に対し業務指示を行うことは、実態としては「労働者派遣」と同じであり、「請負に偽装」しているとなります。

また、偽装請負での労災事故では、委託者が「労働安全衛生法上の責任を負う」こともあるので十分に注意しましょう。偽装請負と判断されないためには実態に合った適切な契約締結と、適法な業務委託契約のための体制整備の上、それに沿った運用が重要です。

まとめ

企業の業務委託活用は、自社人材をコア業務に集中させたり、業務量とコストを最適化させることが可能です。これは業務効率化の一つの方法でもあり、働き方改革にも繋がるでしょう。また、人材不足の世の中、どのように業務を遂行するかという点での一つの解決策にもなり得ます。このように、自社にとって必要なタイミングで、かつ働き方改革をも含めた「業務委託サービス」の検討も良いのではないでしょうか。

しかしながら、「雇用」と「業務委託」が実態として混同が発生し、デメリットが起きうる危険性もあります。例えば、ユウクリではクリエイティブに特化したな業務委託サービスと人材サービスの両方を提供しています。活用にあたって、このような企業に法的なリスクや、そうならないようにするにはどうすればよいのかを確認するのもいいかもしれません。

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社会保険労務士法人ユニヴィス 社会保険労務士 池田 久輝

出典
厚生労働省「さまざまな雇用形態
厚生労働省「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド

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