
以前に当コンテンツでもご案内しました「キャリアアップ助成金」がリニューアルされました。概要のおさらいと、どのように変わったのかを改めて解説します。
>>前回の記事「【助成金】『キャリア形成促進助成金』のススメ」
年度後半期を迎え、身の引き締まる思いを抱く経営者も多いこの時期。一つの区切りとされることも多い10月は、新たな制度が始まる時期でもあります。
たとえば、平成28年10月以降に順次改定が予定されている最低賃金額は、全国平均額は前年に比べ約20円程度の増額と、過去最大の引き上げが予想されています。また、10月には、新たに「社会保険の適用拡大」制度が適用され、これまでは対象外であったパート・アルバイトなども社会保険の対象となる可能性があります。
さらに、10月に納付する厚生年金保険の料率は、前月に比べ0.354%の引き上げが行われます。
これだけの話を聞くと、「もう勘弁してよ」と思う社長がいるかもしれません。
会社の経営に加え、従業員の賃金や保険料の引き上げ・・・経費に関する悩みは尽きないものです。
このような問題に対応するため、厚生労働省も動きました。
そのうちの一つが助成対策であり「キャリアアップ助成金」の要件緩和です。
キャリアアップ助成金という名前を聞いたことのある方も多いかもしれませんが、今回の要件緩和制度により、より多くの企業が助成を受けることができるようになりました。
特に、さまざまな働き方を選択する若いクリエイターが多いクリエイティブ業界にとっては、大チャンスです!ぜひ活用して、会社の経営に役立てていきましょう。
■そもそも「キャリアアップ助成金」ってどんなもの?
キャリアアップ助成金は、非正規雇用者に対して教育や待遇の改善を行い、より安心して働けるような環境を整備した事業主が受けることのできる助成制度で、以下の3種類のコースがあります。
・【正社員化コース】
非正規雇用者を正社員、もしくは時間や勤務場所が限定された正社員に転換させた場合に助成金を受けることができる
・【人材育成コース】
非正規雇用者に職業訓練を受けさせた場合に助成金を受けることができる
・【処遇改善コース】
非正規雇用者に次の制度を導入した場合に助成金を受けることができる
1. 賃金改定制度
2. 健康診断制度
3. 正社員と同等の賃金制度
4. 社会保険の加入対象となる働き方を提供する制度
非正規雇用者とは、たとえば期間の定めのある労働者やパート・アルバイトなどの短時間労働者、派遣労働者など、正社員に比べて立場が弱いとされる者をいいます。
これらの制度を活用することで企業側は助成金を受けることができ、制度を使って環境が改善された非正規雇用者も、社会人としてのスキルや働くモチベーションをアップさせることができるのです。
■導入に向いている企業とは
キャリアアップ助成金は、多様な働き方を行う従業員を抱える企業であれば、どのような業種でも活用をすることができます。
たとえば、同じ事務所内で正社員のデザイナーとアルバイトのデザイナーが混在している際などに注意が必要です。
「同じ仕事をしているのに、アルバイトというだけで給料が違うなんて・・・」
「働く時間が短いだけで、やっている仕事は同じ。向上心はあるのに研修を受けることができない・・・」
特に非正規雇用者側には、このような不満を抱えるケースが予想されます。
昨今は、育児や介護と両立させながら働く従業員が増加しています。また、年功序列という言葉が当てはまりにくいクリエイティブ業界では、各従業員の生活スタイルに沿った働き方を提供することが重要といえます。
キャリアアップ助成金制度を活用し、雇用形態に関わらず平等な待遇を提供することで、特に若いクリエイター世代の士気を高めることができるでしょう。
■これまでとどう変わったの?
今年の10月より、前述の「処遇改善コース」がより充実した内容となります。
処遇改善コースの「4. 社会保険の加入対象となる働き方を提供する制度」は、非正規雇用者の一週間の労働時間を要件に沿って延長し、社会保険を適用した場合に適用されます。
変更になったのはこの要件です。
これまでは一週間の労働時間が「25時間未満から30時間以上」に延長された場合とされていましたが、改定後は「従前から5時間以上」に延長された場合になりました。
これは、同時期に開始される社会保険の適用拡大に伴い、社会保険加入要件に「週20時間以上働く者」が加えられたために行われたものです。
キャリアアップ助成金の助成対象とすることで、国側の、より多くの短時間労働者を社会保険に加入させたいというねらいが見てとれます。
なお、この要件に沿って非正規雇用者を社会保険に加入させた場合、受けることができる助成金は一人当たり20万円(大企業15万円)です。非正規雇用者を多く抱える企業には有効でしょう。
■支給要件も緩和!より使いやすく
改定内容に続いて変わったこととして、助成金を受けるまでの手続きが簡単になりました。
キャリアアップ助成金について調べたことのある方ならお分かりかと思いますが、制度の利用を決意してから実際に助成金を受けるまでには、実にさまざまな手続きが必要です。
このうち、今回は、次の内容が改定されています。
1. キャリアアップ計画書の提出期限が1か月延長(取組実施前1ヶ月 ⇒ 取組実施日)
2. 最低賃金額改定にまつわる緩和(最低賃金額の公示日 ⇒ 最低賃金額の発行日)
3. 賃金規程の運用期間緩和(賃金規程の3か月以上の運用を要する ⇒ 新たな規程が過去3か月分の賃金より2%以上増額していれば、3か月未満でもOK)
4. 賃金額の定めに関する緩和(賃金テーブルの規程と徹底 ⇒ 賃金額の定めがあればOK)
キャリアアップ助成金は、実際に認可が下り、助成金を受けるまでに時間がかかる助成制度ではありますが、まとまった金額の助成が多く、検討の価値があるものです。
要件や内容がより使いやすくなった今こそ、導入のタイミングといえるのかもしれません。社内の整備の一環として、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。
【2017/7/26追記】
「キャリア形成促進助成金」が、平成29年4月にリニューアル、「人材開発支援助成金」となりました。
リニューアルによる変更点などは下記記事をご確認ください。