【撮影ディレクション】知っておきたい写真の基本〜後編〜

クリエイティブの仕事につきものの撮影現場。ディレクションや立会いで撮影現場にいながらうまくコミュニケーションが取れないことがある。そんなクリエイティブ関係者のために、今さら聞けない撮影の基本を解説するシリーズの後編です。コンパクトデジカメで写真を撮るのが趣味の人の中には、こう言った基本を知らない人もいるようですが、やはり仕事として撮影に関わるのなら基本を知っておいた方が良い環境を作り上げられるでしょう。
前回は、シャッタースピード、絞り、そして被写界深度について解説しました。前回を読まなくとも話が通じる人もいると思いますが、読み始めて理解が浅いと感じた方は前編も読んでみてください。
http://www.y-create.co.jp/forbusiness/photograph_2nd/

 

【4】光量(露出)

シャッタースピード=光を取り込む時間、絞り=光を取り込む穴の大きさ。この組み合わせによって、受光部に取り込む光の量を調整します。
シャッタースピードを長く(遅く)して光の取り込み時間を長くすれば、写真は明るくなります。絞りを開放に近づけて光の取り込み穴を大きくしても同様に明るくなります。それぞれの逆は暗くなります。この2つの組み合わせを調整して、写真の仕上がりの明るさを調整します。

しかしここである重要なことに気が付いた人もいるでしょう。
そう、前回お話ししたようにシャッタースピードと絞りで写真の表現が変わるのです。

・適性
仮に、今あなたが昼間の屋外に立ってカメラを構えていて、写真の明るさの適性がシャッタースピード1/125、絞り5.6だったとしましょう。その場合、適性は下の表の赤枠をそのまま右や左に動かす位置になります。

つまりシャッタースピード1/60なら絞り8が適性、シャッタースピード1/250であれば絞り4となります。理屈は理解できると思います。
光の取り込み時間を長くすれば、その分穴を小さくする。そうしないと多く光を取り込んで写真が適性より明るくなってしまいます。

・シャッタースピードと絞り
上の例で、スポーツ選手などをブレないで撮りたければ、シャッタースピードを短くして撮ります。
カメラによって1/2000、1/4000など限界値が決まっていますが、下の表で考えてみましょう。シャッタースピードを1/2000、この時絞りは1.4の開放になっています。この絞りですと、被写体の前後はピントが合わずにボケています。

では、逆に今度は前後の物にももっとピントが合うように考えてみましょう。
絞りを変更します。絞りを16にまで持って行きます。シャッタースピードは1/15になりました。このシャッタースピードでは手ブレを起こします。三脚を立てて撮影する必要があります。そしでも、動いているだろう被写体はかなりブレることになります。

・ブレなくて、ボケない
では、被写体がブレないでピントも深くしたい時はどうすればいいのでしょうか?
シャッタースピードを短くして、絞りも絞り込むとそうなります。1/2000と16。
ただし、光は一瞬しか入らず、穴も小さい。当然、写真はずいぶんと暗くなってしまいます。

そこで、自然光(環境光)だけでなく、自ら光を作る必要性が発生します。それが次の項目のライティングです。

 

【5】ライティング

写真を自分の思い通りに撮るには光の量を意識することが必要になります。屋外で撮影するにも、天気によってその明るさは大きく違っています。
人間の目は虹彩により光の取り込みを調整しているので、明るさの違いを意識しない場面もあると思いますが、その感覚だけを信じて撮影をすると、写真が明る過ぎたり(オーバー)、暗過ぎたり(アンダー)します。露出の適正なコントロールのために人工的な光が必要なこともあります。

・ハイキー、ローキー
また、写真の仕上がりにイメージに合わせて、明るめに演出することもあるかと思います。このような全体が明るめの写真をハイキーと呼びます。逆に暗い演出はローキーと呼びます。

一般的に、ハイキーは爽やか、柔らか、楽しげな演出に向いています。最近では、プリクラやインスタグラムを見ても分かる通り、女性のポートレイトはハイキーで肌を飛ばし気味に撮る傾向にあります。
一方、ローキーは重厚、陰鬱、ミステリアスな演出の傾向が多いようです。

・演出
このように光の量によって写真の演出ができますし、『【4】光量』で書いたようにシャッタースピードと絞りを使っても演出ができます。そして、光の当てる向きやその強さにも、大きな演出力があります。

光の向きの基本になるのは、屋外での自然光です。この環境で人間は物を見て来ているので、その光の演出を自然なものと受け入れます。また、その自然光の下で描かれた絵画に馴染んでいるのも大きな理由でしょう。

具体的な例を幾つかあげて説明したいと思います。

a:正面から光を
被写体に対して正面の斜め上から光を当てます。真正面ではなく左右どちらかに振ることが多いです。このライティングが基本的なものと言えます。自然光で太陽を背に撮影する形です。
光の位置をどんどん下げて行くと、人間にとって見慣れない下からの光になり、懐中電灯でのお化け演出やSF映画の宇宙船の中のようになります。

b:補助光として、弱い光を
上の例の光が極端に強い場合などに補助光を加えます。左右での反対側や、下から当てることもあります。この場合の光は、必ずしもライトではなくレフ板や白い紙などの反射光の場合も多いです。

c:弱い光を背後から
被写体の輪郭が背景に溶け込んでしまう場合などに、背後から補助光を入れると輪郭がくっきりとします。光の角度、強弱によってイメージが大きく変わるので数多く試してみると良いでしょう。

d:背後の光を強く
背後の光が強い状態を逆光と言います。屋外で太陽に向かってカメラを構えるかたちです。撮影時よりも、仕上がった写真は逆光で被写体の正面が見えづらいと思います。背後の光がどんどん強く明るくなると、被写体はシルエットで見えるようになります。

ライティングによる演出は、もちろんもっともっとたくさんありますが、まずは上のa~dの4つの実感を掴んで、自分でも様々な試みをするようにしてください。

 

【6】陰影

陰影を作り上げるのはライティングですが、説明上、複雑になるので独立した項目にしました。
写真のイメージは陰影によって全く変わって来ます。影が硬くくっきりしていたり、曖昧でぼんやりしていたりでイメージが違うのは分かると思います。

・硬い光
硬い光とは、太陽、一燈のライトからの強い光が直接被写体に当たっている状態です。強い光なので、影の部分と光が当たっている部分の明暗差が明確に現れます。くっきりとした、力強い印象になります。

また、撮影時にどこに露出を合わせるかで仕上がりが変わって来ます。
暗い室内から明るい屋外が見える窓の部屋を撮影するとしましょう。暗い室内に露出を合わせれば、窓の外は白く飛んで写ります。窓から見える風景に露出を合わせれば、屋内は黒くつぶれて写るでしょう。

・やわらかい光
やわらかい光は、硬い光と対照的に被写体に当たる光が拡散したものです。太陽、ライトの光がもともと弱かったり、またはあちこちに反射して光が様々な方向から当たっている状態です。
強い光源と被写体の間に遮蔽物を置いて光を弱めることもあります。屋外では、雨や曇りの日や、マジックアワーと呼ばれる日没後に暗くなるまでのわずかな時間に撮影すると、やわらかい光になります。弱い光なので明暗差も弱く、ソフトで優しい印象になります。

 

2回に分けて写真撮影のお話をしてきましたが、もちろん撮影にはもっと多くのことが影響します。例えば、ロケ場所やモデル選びも大切な項目です。
しかし、個人の趣味の写真ではなく仕事としての写真であれば、感覚的にカッコイイと撮影をする前に、基本知識を知っておくことは大事に思えます。

【撮影ディレクション】
第1回:カメラマンに上手く伝えるには?
第2回:知っておきたい写真の基本~前編~
第3回:知っておきたい写真の基本~後編~

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