今からできる!助成金に対応するための就業規則づくりとは(前編)

優クリ-Lab for Businessでは、様々な助成金を紹介してきました。この助成金、特に中小企業では非常にありがたいものでしょう。ぜひトライしてみたいと考える経営者の方も多いかと思います。しかしながら、国から助成金を受け取るのは、そんなに簡単なことではありません。助成制度には、さまざまなルールが設けられています。そのルールの一つとして重要な存在となるのが「就業規則」です。

 

就業規則と助成金の関係とは

試しに厚生労働省の公式サイトから、助成制度を一つ調べてみてください。どの制度でも構いません。
その助成制度で必要となるルールの中に、必ず就業規則に関する一文があると思います。中には、就業規則の改正が必須となる助成制度も多く見られることでしょう。
就業規則は、助成制度にとって必要不可欠なものなのです。

今回は、この「就業規則」をテーマに、前編・後編に分けて解説していきます。

前編では、就業規則の必要性と、作成にあたって国の法律で定められている内容についておさらいをします。
違法と判断されると、助成金を受けるどころか、法律上の罰則を受けることになります。非常に重要な内容となるため、しっかり確認しておきましょう。

そして後編では、実際に助成制度に対応するための就業規則づくりのノウハウと、実際に一企業が助成金の申請をするにあたって行った就業規則の整備について紹介をしていく予定です。

特にクリエイティブ業界では、代表自身も一クリエイターとして動く場合が多くあるため、社内の整備まで回っていない会社が存在するのが現状です。
春は、助成金の季節といわれています。それは国の助成制度が4月1日付で開始されるケースが多いためです。これに向けて、既存の助成制度、新たな助成制度にすぐ対応できるよう、今のうちから就業規則の整備をしておくことが大事です。
そのための方法を、これから順を追って説明していきます。

 

助成金の申請を行う行政機関とは

雇用関係の助成制度を担当するのは、各地域に点在する労働局や労働基準監督署(いわゆる労基署)です。
特に労基署などは、ブラック企業に対して、未払い残業や長時間労働などの抜き打ち調査を行う機関というイメージを抱く方も多いことでしょう。
以前「ダンダリン」という、労基署を舞台にした、竹内結子さん主演のドラマも放送されていました。

労働局や労基署は、労働基準法という法律のもとで動く行政機関です。
労働基準法は、会社が従業員に対して行うべき最低限のルールが定められた法律です。労働局や労基署は、会社が労働基準法をきちんと守っているかを調査する立場にあります。

そんな機関に対して助成制度の申請を行うわけですから、当然ながら申請を受けた労働局や労基署は、申請元の会社が法律を守っているかの確認を行うことになります。

助成金の申請手続きでは、従業員の雇用契約書やタイムカード、給与一覧表を提出するケースが多くあります。
会社側としても日ごろからきちんとした人事管理を行うことが、助成制度の利用にあたって必要不可欠となるのです。

 

就業規則の作成義務がある10人とは?

前の項目で、助成制度を利用するためには、労働基準法をきちんと守った会社づくりが必要であることを述べました。
その労働基準法には、就業規則についての一文も設けられています。

第89条 常時10人以上の労働者を使用する使用者は、(中略)就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない

この一文から分かるように、常時10人以上の労働者がいる会社では、就業規則の作成は「義務」なのです。この規則に違反すると、30万円以下の罰金処分となります。
この「常時10人」という数字について、正しい解釈を覚えておきましょう。

どの会社でも、毎年何らかの形で労働者の入退社があるものです。
退職者が発生したことで一時的に10人を切った場合でも、基本的に10人以上の態勢で運営されている会社であれば、常時10人に当てはまります
いっぽう、いつもは10人未満で働いているけれど、繁忙期に期間限定で労働者を雇い、10人以上となるケースなどは、常時10人とはいえないのです。

なお、カウントされる労働者には、正社員に加え、契約社員・パート・アルバイトなどの非正規雇用者も含まれる点に注意が必要です。どのような形態であれ、常に戦力として働いてもらっているのであれば、10人の人数に含めて数えることになります。
ただし、派遣労働者の場合は派遣元の会社でカウントされる存在となるため、10人には含めません

また、常時10人のカウントは、事業所ごとで行われます。
したがって、総勢10人を超える会社であっても、事業所などを複数もち、その事業所ごとに雇用保険事業所番号があるなど、独立した存在として認められる場合は、就業規則の作成義務は「ない」ものとみなされます。
ただし、それぞれ10人に満たない労働者が点在している必要があることに注意が必要です。

 

義務じゃない会社はどうすれば良いのか

では、総勢10人に満たない会社の場合はどうでしょうか。

法律上は、就業規則を作る義務はないため、規則自体が存在しなくても違反とはならず、何の問題もありません。
ただし、助成制度を利用する場合は話が別となります。助成金をもらうためには、「就業規則の整備・届出」が義務づけられているケースが多いためです。

就業規則を作成することは、大変なことばかりではありません。規則があることで、会社と労働者の間で起こるトラブルを防ぐことができます。また、就業規則を整備することで、きちんとした対応を労働者に行っているという対外的な証明にもなります。

つまり、助成制度に対応するためにも、自分の会社のためにも、労働者の数にかかわらず就業規則を作ることが非常に重要であるといえるでしょう。

 

規則に入れるべき内容とは

就業規則は、会社が労働者に対して守って欲しいルールを書面化し、労働者に知らせることによって、会社の統制を図るためのものです。定めたいルールの内容については、会社によってさまざまです。そのため、就業規則の内容は会社によって異なることが普通です。

しかし、労働基準法では、就業規則の作成を義務付けることと同時に、規則に盛り込むべき最低限の項目についても定めています

項目の内容にはさまざまなものがありますが、主なものを次に挙げてみます。
必要性に応じ、3つの段階を設けていることに注意が必要です。

1.的必要記載事項(就業規則に必ず盛り込まなければならない内容)
a.始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等
b.賃金(締日・支払日・昇給など)
c.退職(解雇・定年・契約期間)

2.相対的必要記載事項(ルールを設ける場合は盛り込まなければならない内容)
d.退職手当、臨時の賃金、最低賃金
e.福利厚生(食事・作業用品の負担、安全衛生、職業訓練、災害補償、表彰・制裁)

3.任意的記載事項(任意の項目)
f.企業理念・心得、採用について、職種などの説明について

就業規則を作成する場合、まずは上記の項目から手掛けていくと、法に沿った内容となる上にスムーズに作業が進むことでしょう。

 

就業規則の大切さと、作成していく場合の内容について、おわかりいただけましたでしょうか。
次回の後編では、就業規則を運営しやすいよう、なおかつ助成制度に対応するための「別規程」の利用方法と、実際に規則を整備した例について紹介していきます。

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