【働き方改革】日本とどう違う?アメリカの働き方の現状

日本は海外、特にヨーロッパなどと比べ「働きすぎ」とよく言われます。では、日本とアメリカ、どちらの方が年間平均労働時間は長いでしょうか?
実は年間の平均労働時間ではアメリカの方が長いという調査結果が出ています。日本で現在大きなテーマとなっている「働き方改革」。どのような方法をと様々な議論がありますが、日本より労働時間の多いアメリカではどんな対策が取られているのでしょうか。

 

なぜ異常ともいえる長時間労働がアメリカ人の名誉になったのか

先進国の中で労働時間が長いと言われているアメリカ合衆国。OECD(経済協力開発機構)の調査では、2016年の年間平均労働時間は1783時間。日本人の1713時間より長いという結果が出ています。

The Weekの記事「How insane work hours became a mark of American privilege(なぜ異常ともいえる長時間労働がアメリカ人の名誉になったのか)」によれば、実は高収入の人ほど、労働時間長い傾向にあるそうです。
これは、不景気で仕事が十分にない状態が続き、「良いパフォーマンス」を維持していないと他人に仕事を取られる、という恐れからと考察されています。
そして大手のクリエイティブ会社などでも同様に、残業や長時間労働が横行している会社ばかりです。

それでは、そのアメリカでは、労働時間の長さに対しどのような工夫・対策をしているのでしょうか。
実際の働き方やオフィスの様子をご紹介したいと思います。

 

テクノロジー、スタートアップ、大手銀行などの贅沢オフィス

ご存知の方も多いと思いますが、Googleなどの大手テクノロジー会社を筆頭に、Bloombergなどのメディアカンパニー、大手法律事務所、スタートアップ企業などでは、従業員に「ランチ」や「スナック」を無料提供することが珍しくありません。
また、「コーヒーカウンター」や「バー」、「卓球台」に「ビリヤード台」といったコーナーを設けたり、「ヨガクラス」や、「マニキュア、ペディキュアサービス」、「マッサージ」など、「会社へ行くのが楽しみ」と思えるオフィスづくりに力を入れている企業が数多くあります。

他にも、オフィス内に「お昼寝ポッド」や「フィットネスセンター」、「瞑想ルーム」を備え付けたりと、労働の苦痛を軽減させるために様々な工夫をしています。

「Nature Neuroscience」のリサーチからも、20~30分の短時間昼寝は、生産率が向上することがわかっています。
睡眠不足と戦いながら労働を続ける社員が、最高のパフォーマンスを維持できる訳がありません。「お昼寝ポッド」は企業にとってもプラスであると言えるでしょう。

 

中小企業が社員のために実践していること

それでは、オフィス内にジムを設置したり、高額な「お昼寝ポッド」を置けない企業はどのように工夫をしているのでしょうか。お金をかけずとも従業員の「幸福度や労働意欲を保つ」ためにできることは色々あります。

専用のスペースがなくても、経験のある従業員がリードし、屋上や中庭で「ヨガクラス」を開催したり、会議室を「瞑想ルーム」として利用するオフィスもあります。
また、子供や家族が病気の日などは、急遽在宅勤務できるよう融通を利かせたり、学校は休みだけれど出勤の日は、子供と同伴での出勤を許可するなど、柔軟な姿勢を見せる職場も少なくありません。

そして、週の何日かを在宅勤務として許可する企業もあります。この場合、出勤日程をずらすことで一つのデスクが二人で共有でき、会社側はスペースを節約できる、従業員は在宅勤務が許される、と双方にメリットが生まれます。まさに一石二鳥です。

 

クリエイティブオフィスが実践していること

クリエイティブ企業では上記などのような工夫以外に、多くの企業が「プロフェッショナルディベロップメント(自分の職業スキルの開発)」に関する受講料などをサポートしています。

テクノロジーやソフトウエアの進化に乗り遅れないため、専門知識を高めるためなど、学ぶことに時間とお金をかけるのはクリエイターにとって大切な自己投資です。
しかし、目前の仕事を優先するあまりつい後回しにしがちです。その改善策の一環として「セミナー」や「デザインカンファレンス」の参加料を会社が支払うなど、企業側のサポートが社員の向上心や労働意欲の維持へ大きく貢献しています。

また、少し変わったところでは「自分用デスクを決めない」というオフィスもあります。カフェやコーワーキングスペースのように出勤するたび異なった席に座るため、オフィス内のいろいろな人と出会い、会話をして、新しいアイデアの発想へ繋げているところもあります。
これは日本では、「フリーアドレス」として導入している企業も増えているかと思います。

そして、デザイン会社やクリエイティブエイジェンシーでは、プロダクション担当やプロジェクト担当のマネージャーの存在が欠かせません。
彼らがクライアントとの折衝や締めの確認、予算などの管理を担当しますので、デザイナーは印刷会社やクライアントとの交渉に時間を費やす必要がありません。自分のプロフェッショナルである分野、デザインに集中することができるのです。

 

環境、時間短縮以外に日本がアメリカから参考にできることは?

働きやすい環境や行きたいと思えるオフィスを作ることも大切ですが、さらに働く環境を改善する要素の一つとして大事なのは「柔軟性」です。

職種にもよりますが、アメリカでは歯科医の予約や子供の学校行事など、平日の昼間に職場を離れる必要がある用事に許可を出さないマネージャーはほとんどいません。スケジュールを調節し用事を済まして残業をする、別の日に仕事をふりわけるなどの工夫をすれば問題はありません。

実際の作業を行うのが「どこなのか」、「何時に行うか」、「週末なのか」ということはあまり重要視することはありません。
むしろ、それより大切なのは、与えられたプロジェクトを「期日まで」に「高いクオリティ」で仕上げることであり、必ずしも会社ですべてを完結する必要はなく「結果」に対しての評価を大事にしている傾向があります。

 

アメリカと日本では文化が違う面があるのも確かです。また、職種・チームによっても合う制度・合わない取り組みがあります。ぜひ「いいところ取り」の精神で、自社の働きやすさの改善に役立ててください。

 

参考URL:
http://stats.oecd.org/index.aspx?DataSetCode=ANHRS
http://stats.oecd.org/Index.aspx?DataSetCode=PDB_LV
https://s3.amazonaws.com/happiness-report/2018/WHR_web.pdf
http://theweek.com/articles/629256/how-insane-work-hours-became-mark-american-privilege
https://www.glassdoor.com/Benefits/Bloomberg-L-P-US-Benefits-EI_IE3096.0,13_IL.14,16_IN1.htm
https://www.nytimes.com/2017/06/23/smarter-living/take-naps-at-work-apologize-to-no-one.html
https://www.nature.com/articles/nn864
https://sleepfoundation.org/sleep-topics/napping
https://www.workingmother.com/10-companies-with-health-and-wellness-zones#page-4
http://www.businessinsider.com/jet-office-photos-perks-2017-9#at-this-office-collaboration-is-key-23
https://www.gsb.stanford.edu/insights/researchers-flexibility-may-be-key-increased-productivity

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