【新卒採用】大波乱の21年卒の新卒就活。美大生の就活の振り返りと22年卒の展望

リクルートキャリアが展開する就職みらい研究所の調査によると、7月時点の大学生・大学院生の内定率は72.2%、前年同月比では-11.9ポイントという結果に。前年と比較すると、内定率は1ヶ月遅れで推移しているようです。大荒れとなった21卒の新卒就活は、コロナウイルスの影響で就活生はもちろんのこと企業側も大きく困惑しました。今回はクリエイティブ職に就職する割合の多い美大生の就活について、21年卒の就活状況を振り返るとともに22年卒の動きについてもお話していきます。

21年卒の美大生の就職活動状況の振り返り

内定式が行われる10月1日まであと1ヶ月ほどとなりました。大学生の就活全体で見ると選考のピークは過ぎており、7月時点での内定率72.2%、8月時点で81,2%と、かなりの割合の学生が内定を得られている状況になってきています。

そんな21年卒の就職活動状況を時系列で振り返ってみたいと思います。

2020年2月~ 各企業でイベント中止の対応に

メガベンチャーやIT企業など、多くの企業が就活準備イベントや冬季インターンシップを開催し、リアルの場で学生と接点作りを行いました。しかし1月後半からコロナウイルス感染拡大が広がり、歯止めが効かない状態に。遂に2月後半、リクナビが21年卒の来場型就活イベントの当面中止を発表し大きな話題となりました。
これに追う形でマイナビなど各サービスが軒並み合同説明会等を中止することを決めました。

そして3月の情報解禁を迎えるも、各社とも来場形式で行う企業説明会は中止に。オンラインでの企業説明会を実施しますが、「PC画面だけでは学生の人となりが掴みずらい」「こちらが一方的に話すだけになってっしまう」など企業側の課題は多い状態でした。

2020年4月~緊急事態宣言の発表

4月には全国での緊急事態宣言が発表されました。
これにより企業は、対面形式を想定していた選考の対応について頭を悩ませました。次回の選考日程が決まらない、中には次の選考まで1ヶ月ほど空いてしまうケースなどもあった模様です。4月頃より選考を開始する予定だった企業は説明会が開催できない状況となり、当初計画していた母集団の形成に悩まされることになりました。

面接や説明会は、多くの企業で『オンラインを活用して実施』という解決法が主流となりました。また、3月末に東京オリンピックの延期が発表され、開催予定だった7月・8月と選考時期の被りを考慮する必要がなくなったことから、選考スケジュールを予定より後ろ倒しに進める傾向も見られました。

このほか、コロナ禍による業績への影響を見極めるため21卒採用の当面中止あるいは早期終了とし、22卒に焦点を当てた採用戦略に切り替えを決定した企業も少なくありませんでした。

2020年6月~美術系学生の内定率が10.4%という結果に

株式会社ユウクリが主催するクリエイターワークス研究所での調べでは、6月時点での美大生の内定率はわずか10.4%の結果となりました。同時期、リクルートキャリアが行う「就活プロセス調書」によると、全学部の大学生の就職内定率は56.9%です。

21年卒の内定率は4月までは前年より高く推移しましたが、5月で逆転、6月時点では前年に比べ更に差が広がり、前年同月比-13.4ポイントという経過でした。
美術系学生に限定して見ると、前年6月は52.2%の内定率(※クリエイターワークス研究所調べ)だったので、実に-41.8ポイントと大きなダウンとなっています。

美大生の内定率の低さの要因は大きく2つ考えられます。

1.各企業の宣伝・広報活動の停滞
特に広告・SP系の広告代理店・制作会社への売上・業績への影響が大きく、これらの企業の採用活動が鈍っていることです。内定者の内定企業の顔ぶれをみると、例年になくこれら業種が少ない状況です。例年であれば早々に内定を獲得し就活を終了しているだろう層の学生も、就活解禁から時間の経過した4,5月でもまだ就職活動を継続している姿が見られました。

2.一般学生との就職活動力の差
テレビなどでも大きく報道されたように、旅行業を中心に大手企業も新卒採用の取りやめや縮小が発生しています。非クリエイティブの業種・業界においても採用枠が減少しており、学生間での席の取り合いが発生。それに対し、もともとあまり就職活動力の強くない美術系学生が大きく押し出されてしまっている格好かと見られます。

株式会社リクルートキャリア 就職みらい研究所
https://data.recruitcareer.co.jp/wp-content/uploads/2020/08/naitei_21s-20200806.pdf

秋以降の動きについて

例年、美術系学生の内定獲得のピークは6月でした。2020年についてはまだ集計過程にあるためはっきりしませんが、例年より1,2ヶ月遅れの7月~8月にピークを迎えたのではと思われます。

一方、現状21年卒を対象としたクリエイティブ求人は、まだ少なくない数が動いています。傾向的には事業好調会社の追加募集や、元々秋採用を予定していた制作会社がメインとなります。
ただし、どの企業も求める学生要件が例年以上にシャープになり、厳選傾向が強くなっています。採用予定数はやや減程度ではあるものの、採用予定人数を予定通り採用するというよりは、「良い人材がいれば採用する」という方針が強いようです。

このほか、現状は「採用中止ではなく未定のまま」という企業も少なくありません。コロナの第2波のピークを秋~冬ではなく7月末に迎えることになった等、非常に状況が読みにくく、市況感や自社業績などをギリギリまで見極めてから動こうとしています。

内定率が例年より低い状況で推移していることもあり、秋採用・冬採用期間でも就職活動を継続する学生が相応数いると想像されます。そのため、コロナや景気状況などによっては、秋・冬採用が例年以上に動く可能性があります

22年卒の美大生・採用の動き

22年卒美大生の動きはというと、就活意識が非常に高まっている状況です。美大芸大就活ナビの登録ペースは前年同時期と比べると実に約3.5倍にまで伸びています。背景には、やはり自分達の先輩である21年卒学生の苦境を目の当たりにしているからでしょう。
クリエイティブ職種での就活に必要なポートフォリオの準備状況も、例年に比べると取り掛かりが早く、今の時点でも完成度が高い学生が見受けられます。

企業サイドは、時期的に21年卒の振り返りや採用計画の検討を始める段階が多いですが、「22年卒=入社時期が再来年4月」ということもあり、かなり前向きな検討が進んでいる企業が少なくありません。
一斉採用から通年採用への切り替えなどが注目されているものの、22年卒はほぼ従来通りの新卒採用スケジュールの動きになると考えられます。美大生の動きが従来より早まっていることにより、それを察知している企業では採用活動のスタートダッシュ・早期での優秀人材の囲い込みが強まる可能性があります。

一方で業績の回復状況に懸念が残る企業も多くいます。
そのような企業では、採用人数を通常よりも減らす方向での議論が行われていることに加え、採用コスト自体の見直しも議題に上がっている模様です。特にクリエイティブ職種はそもそもの採用予定人数が少ない傾向にあり、「成功報酬でコストを最低限にする」「優秀な人材を一本釣りする」という観点から、新卒採用においても人材紹介サービスの導入を検討、情報収集が活発に行われています

まとめ

21年卒採用は、例年よりも遅い進行となりましたがピーク自体は過ぎた模様です。しかしながら就職活動を継続している美大生は少なくなく、一部の企業も様子見状態にあるため、秋採用・冬採用はずるずると続きそうな状況です。その点では、業績の状況に応じて追加の募集等が例年以上に行いやすい環境とも言えます。

22年卒は、通常出足の鈍い美大生においても動き出しの早さが見られ、経済活動が再開・回復に向け動き出している頃に入社することから、早期に優秀層を確保しようとする動きは例年と変わらないのではと予想されます。
とは言え、オンラインでの説明会開催・面接実施などをはじめとした“ニュー・ノーマル”への対応や業績に応じた採用コストの削減など、従来通りとはいかない側面も21年卒から継続するでしょう。

さらにその先である23年卒以降では、採用スケジュールがどのようになるのか・通年採用化になるのでは等の採用の在り方、本格的な就活実施層の人口減少の拡大など、大きな問題が待ち構えています。それらの対策のためにも、まずは22年卒の採用計画をしっかりと準備しましょう。

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