こんにちは!クリエイターワークス研究所(CWL)です。
「AIプロンプトディレクターとはどんな仕事?最前線のクリエイターに聞いてみた」連載第1回目は、国内外でAIプロンプトディレクターAI Filmmakerとして活躍されている木之村美穂さんにお話を伺いました。
生成AIの急速な進化に伴い、日本国内外でAIに関連する多様なイベントやコンテストが盛況を呈しています。今回は、生成AIがもたらすクリエイティブの可能性に迫ります!
木之村美穂(Miho Kinomura)さん
STUDIO D.O.G GK 代表
クリエイティブディレクター/ 映像ディレクター/ AI Filmmaker
元ファッションデザイナー Los Angelesを拠点に、広告制作会社の代表として、世界のトップクリエーター達とファッション広告や映像制作に関わる。
2022年からWeb 3.0デジタルメディアに特化した新プロジェクトNFFT(New Future AI Fashion Movie)のAI x Fashion 映像イベントのファウンダーとして、世界で活躍するAI Creator 達を集めたイベントを開催。自らもAI Filmmakerとして、海外のAIフィルムコンテストに参加しAIショートフィルムを海外で発表。2023年12月に発表したPARCO Happy Holidays AI 広告キャンペーンのクリエイティブディレクターとして、日本初のAI 広告をディレクション制作。
Generative AI 関連イベントやセミナーにはアバター miomio として数多く登壇。
国内外で盛り上がりを見せる、生成AIイベント&コンテスト
ーー木之村さんが主催するNFFT2025_SS AI×ファッションムービーのイベントが10月18日から20日まで渋谷パルコで開催されるそうですね。
NFFT( New Future AI Fashion Technology )は世界で活躍するAIデジタルクリエイターが動画生成AIを使ってファッションを表現するプロジェクトです。今回は32人のAIクリエーターが Regeneration をテーマに2分以内のショートムービーを公開します。最先端のAIムービーのクオリティーとファッションの融合をぜひ楽しんでいただきたいですね。
▼NFFT2025_SS AI Fashion Movie Event(画像をクリックするとNFFT Official Web Siteにアクセスします)
ーー広告制作やイベントの主催以外にはどのような活動をされているのでしょうか?
いまはちょうど、Runway GEN48 AI ショートムービーのコンテストに応募しています。(※本記事の公開日時点で選考は終了しています)。
ーーAI関連のイベントやコンテストは増えてきているのでしょうか?
そうですね。AIは現在進行形で発展途上なので、常に新しいツールが世に出てきます。こうしたツールを使ってどれだけのクリエイティビティを発揮できるかを競うコンテストは今、世界中で盛り上がっていると思います。
私自身、AIを扱うクリエイターとして常に世界にアンテナを張る必要があるので、勉強も兼ねてコンテストにはよく応募しているんです。
生成AIを使いこなせば、1人でも映像制作はできる
ーー今回応募されたのはどのようなコンテストですか?
Runway『Gen:48』というもので、制限時間の48時間以内に動画生成AIを駆使して1〜4分程度の動画を制作するものです。スタート寸前に発表されるカテゴリーの中から3つの言葉を選んでテーマとし、脚本を練るところからスタートします。
▼Runway 『GEN:48』 Competition Submission 2024 出品作品
Runway Gen 2/ Gen3 を使用して、お題を元に48時間以内に4分以内の映像作品を作り出すコンテスト
ーーその場で制作するということですか!参加者のレベルも高そうです。
生成AI関連では世界でも難しいと言われているコンテストで、世界中から実力のあるAIクリエイターが参加しますね。昨日の時点で3,500人ほどがエントリーしていましたね。4人以内のチームでも参加できるので、おそらく3,000本は応募されているんじゃないでしょうか?
ーーAIで動画を1本作ると言っても、何をどこまでできるのかイメージがついていない人も多いと思います。
通常の動画制作は、企画を立てるクリエイティブディレクターがいて、脚本家がいて、監督、カメラマン、役者、編集、音楽、と色々な分野のプロフェッショナルが集まってひとつの作品を作りあげますよね。
ーーはい。
生成AIは、企画の作成や動画素材の生成、音楽生成や編集まで、クリエイティブに必要なことは一通りできちゃいますから、こうしたツールを使いこなせば極論、1人でも動画作品に必要な全ての作業を賄えます。誰もがAI映像ディレクターになって世の中に作品を発表できるんです。
ーーひとり映像プロダクションですね!
ただし、たんなる省力化ではなく、精度を上げてクオリティの高いものを作るにはやはり作り手のクリエイティビティーとセンスが必要ですね。
AIクリエイティブの浸透度合いと、日本のAIクリエイティブ事情とは?
ーー木之村さんが動画を作る際は、どんな作業にAIを活用しているのでしょうか。
AI動画もいろいろありますが、個人作品ではなく広告制作の場合は、動画のコンセプト作りからコピー開発、プレゼン用のストーリーボードの素材作り、映像素材の制作にAIを使っていますね。
ーー実際に、世の中的にも、AIを使ったクリエイティブは普及していると感じますか?
そうですね。個人の創作活動にAIが使われるケースは数年前からちらほら見かけていました。2023年の暮れくらいからは生成AIが爆発的に流行し、そこから半年ほどでだいぶ浸透したんじゃないかなと思います。
ーー具体的にどのような活用事例が印象に残っていますか?
海外の例ではファッションブランドの『ETRO(エトロ)』が2024春夏の新広告キャンペーンの中の制作過程の一部にAI技術を取り入れて話題になっていました。
日本では今のところ、生成AIのクオリティーを追求するよりも、「AIが作った」という話題性、めずらしさにフォーカスした事例が多いと思います。そういう意味では、使い手としての技術力も、ツールそのものの精度も、まだまだ発展の余地があるのではないでしょうか。
▼ETRO 2024SS COLLECTION 【Image by: ETRO】
生成AIがクリエイターにもたらす未来は明るい?今が参入のタイミング
ーー日本の生成AIはまだ黎明期ということですね。AIクリエイター自体は増えていると思いますか。
省力化や予算削減のためのAI活用ではなく、きちんとAIで表現できるクリエイターという意味ではまだ少ないと思います。日本人は特にそうですね。ただ、先ほどお話ししたような生成AIのイベントやコンテストは増えてきているので、クリエイター同士がつながることでよりレベルの高い作品がどんどん世に出てくる予感はあります。
ツール自体も、数ヶ月、数週間でアップデートされていくので、そのスピードに追いつけるクリエイターであれば、努力次第で仕事につながると思います。
ーークリエイターの中には「AIが普及すると仕事がなくなる」という声もあります。ずばり、AIはクリエイティブ業界にどんな影響を与えると思いますか?
よく聞かれる質問ですが、私は今あるクリエイティブ職が即座になくなるとは思っていません。AIはあくまでもツールですから、CGや動画編集ソフトが登場した時と同じように、使いこなすほど仕事は広がると信じています。
実際、海外ではいままさに、「AIプロンプトディレクター」や「AIプロンプトエンジニア」と言った新しい職種が生まれています。AIに関わる職種の求人も増えていて、むしろ人手が足りないくらい。
現時点でクリエイティブの専門分野を持っている人はもちろん、今からクリエイターを目指す人も、AIのスキルを身につければ差別化にもなるし、十分に活躍できると思いますよ。
ーーAIの普及はクリエイターにとって無限の可能性を秘めているのですね。実際に「AIプロンプトディレクター」、「AIフィルムメーカー」として活躍されている木之村さんはAIをどのように使いこなしているのか、後ほど詳しく教えてください!
編集後記
恥ずかしながら、「生成AIは、作業の省力化や予算削減に使われるもの」と思い込んでいた筆者。「生成AIでクリエイティビティを追求する」と語る木之村さんの作品に、先入観をぶち壊されてしまいました…!改めて、AIの可能性を知るとともに、その可能性を最大限に引き出すAIクリエイターの専門性に感嘆。まだまだ続く、連載2回目は、AIプロンプトディレクターの役割や具体的なノウハウ。木之村さんがAIクリエイターになるまでのお話を伺いました!
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