こんにちは。クリエイターワークス研究所(CWL)の宮本(まるこ)です。
クリエイターワークス研究所は、「クリエイターみんながイキイキと働ける世界に」をミッションに掲げ、クリエイターに対して多角的な視点から実態調査を行っています。
今回は、そのミッションを目指すための第一歩として、クリエイティブ職に就く「個人」を対象に、『仕事満足度調査』を行いました。
調査概要は以下のとおりです。
調査方法
インターネット調査
調査対象
クリエイティブ業界で活躍中のクリエイター(ユウクリ登録クリエイターも含む):411名
(※クリエイターの内訳:グラフィックデザイナー、アートディレクター、UI/UXデザイナー、Webデザイナー、Webディレクター、コーダー、エンジニア、マーケター、経営者など)
調査期間
2022年4月18日~2022年5月18日
・雇用形態
正社員・契約社員 43.6%
派遣社員 11.4%
パート・アルバイト 2.9%
フリーランス・個人事業主 33.6%
会社経営者 4.1%
離職中(休職中・休職中)4.4%
・業態
メーカー・事業会社 15.1%
IT企業 6.6%
コンサルティング会社 1.7%
Web制作会社 7.8%
広告代理店 7.7%
広告制作会社 9.5%
編集プロダクション 0.5%
出版・印刷会社 6.6%
デザイン事務所 14.1%
イベント会社 0.7%
マーケティング会社 1.7%
個人経営 30.9%
その他 4.9%
・携わっているジャンル
Web/IT 36.3%
広告/SP 28.0%
雑貨/グッズ 2.9%
ブランディング/ロゴ/パッケージ 10.0%
商品企画/プロダクト 3.2%
出版/書籍 9.7%
ゲーム 1.5%
映像/音響 3.9%
空間 1.9%
その他 2.7%
上記調査概要から見ても分かる通り、今回の調査の特徴として、『正社員・契約社員』と『フリーランス・個人事業主』のクリエイターが77.2%を占めました。
さらに、職種もデジタル系職種(プロデューサー、企画/マーケター、Webディレクター、Webデザイナー、UIUXデザイナー、コーダー、マークアップエンジニア、システムエンジニア、映像・動画編集)が153名、グラフィック系職種(グラフィックデザイナー、パッケージデザイナー、空間デザイナー、エディトリアルデザイナー、DTPオペレーター)は202名となり、全体の85%を占めました。
なかでも多く回答いただいたのは、以下の職種のクリエイターでした。
・グラフィックデザイナー(126名)
・Webデザイナー(59名)
このため、今回の調査では、グラフィックデザイナー、Webデザイナーのクリエイターの声が大きく反映されている形となります。
(本来であれば全ての職種別で統計データを公開したいところですが、n数が少ないと傾向として伝えられないため、比較的n数が多いカテゴリのみ公開していきます)
以上のことから、テーマによって以下のような雇用形態別や携わっているジャンル別でも分析していきたいと思います。
■正社員・契約社員/フリーランス・個人事業主
■デジタル系/グラフィック系(もしくは、グラフィックデザイナー/Webデザイナー)
気になるクリエイターの労働時間に対する意識。
なんと『満足・やや満足』が約70%以上!
初回は、平均労働時間をテーマに、雇用形態別比較をしながら調査報告をしていきます。
まず、現在のクリエイティブワークの労働時間について、クリエイターはどのように感じているのでしょうか?
満足度についてアンケート調査した結果を、インフォグラフィックで表現してみました。

今回の調査では、全雇用形態のクリエイターの約70%以上が「満足・やや満足」と回答しました。
『満足していない』の項目は正社員・契約社員クリエイターが一番多いものの、『満足・やや満足』は69%。
さらに、派遣社員とパート・アルバイトは86.6%ものクリエイターが『満足・やや満足』と回答しています。ちなみに、『満足していない』の回答はなんと0%!
これは、前回のアンケートで雇用形態別にリモート化がどれくらい進んでいるかを調査した際に、会社員の雇用形態の中で派遣社員が最もリモート化が進んでいることが確認できたのですが、それも関係しているのかもしれません。
参考:《クリエイターの働き方実態調査②》【雇用形態で比較】【Web,広告で比較】リモートワークはどれくらい浸透している?
かつてクリエイティブ業界は残業や徹夜が多いという印象が強くブラックと言われていた時代もありましたが、今は働き方改革やコロナ禍によるリモートワークでオンライン化が促進されたことにより、クリエイティブ業界も少しずつ改善されてきている…と言えるのでしょうか?
それを確認するためにも、もう少し実態を見ていきたいと思います。
クリエイターの1週間の平均労働時間は『40時間以上50時間未満』がトレンド!?
実際にクリエイターの1週間の労働時間はどれくらいなのか?アンケート調査をしました。
結果は以下のとおりです。(目安:実働8時間×週5日=40時間)
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いずれの雇用形態のクリエイターも『40時間以上50時間未満』が最も多いことが分かりました。
■正社員
『50時間以上60時間未満』の項目では圧倒的に正社員が多いですが、60時間以上を超えるクリエイターはごくわずか。オーバーワークとなっているクリエイターは少数派のようです。
■派遣、パート・アルバイト
派遣、パート・アルバイトのクリエイターは『30時間以上40時間未満』も多い結果となりました。
これは、週3~4日や時短で就業しているクリエイターも多いからかもしれません。
■フリーランス
フリーランスは正社員や派遣・パート・アルバイトに比べ、時期によって仕事の波があります。
そのためか、なかには『70時間以上80時間未満』『80時間以上』働いているクリエイターもいることが分かりました。
このように1週間の平均労働時間を見てみると、比較的メリハリを持って仕事ができているクリエイターが多くなっているのでは…?と感じました。
ということは、残業時間も減らせているのでしょうか?
それについて調査した結果は、以下のとおりです。
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■正社員・契約社員
平均残業は月間『10時間以内』と回答するクリエイターが最も多い結果となりました。
『50時間以上』働いているクリエイターは6.7%にとどまりました。
■派遣、パート・アルバイト
月間『10時間以内』が42.4%で次いで『残業全くなし』が35.6%。
やはり正社員やフリーランスよりもメリハリを持って働くことができているようです。
■フリーランス・個人事業主
『残業全くなし』が44.2%と最も多いですが、『50時間以上』も正社員とほぼ同等の回答もあり、時期により自己裁量で仕事をコントロールしている様子が伺えます。
制作会社とインハウスの正社員クリエイター、労働時間・残業時間のボリュームは?
このように平均労働時間と平均残業時間を見ていくと、「クリエイターはハードワーク」といったイメージは薄れるのでは…?と思いますが、新たな疑問が生まれました。
それは、「正社員と一括りに言っても、制作会社かインハウスかで実態は異なるのでは…?」ということ。
私自身、制作会社で働いていたので、もう少し踏み込んで調べてみたくなりました(しかし、制作会社とインハウスで分類するとn数が少なくなるため、あくまで参考としてご覧ください)。
ということで、制作会社とインハウスで働いている正社員のクリエイターの実態をそれぞれ見ていきましょう。
まず、制作会社で働いている正社員クリエイターの平均労働時間と平均残業時間の調査結果です。
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制作会社で働いている正社員のクリエイターも全体の統計と同様、1週間の労働時間は『40時間~50時間未満』が最も多い結果となりましたが、次いで多いのは『50~60時間未満』となっており、比較的この2つのボリュームが多いようです。
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続いて、残業時間を見てみるとかなりバラけていますが、1ヶ月の残業は『20~30時間』のクリエイターが多いようです。
1ヶ月50時間以上の残業をしているのは7.9%にとどまりました。
制作会社でもこれだけ押さえられているという実態が分かりました。
次に、インハウスで働いている正社員クリエイターのデータです。
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インハウスのクリエイターも、制作会社のクリエイターと同様、1週間の労働時間は『40~50時間』が最も多いですが、他項目より圧倒的トップという傾向が見えました。
制作会社のクリエイターが2番目に多かった『50~60時間未満』の項目では13.6%にとどまっていますが、なかには『80時間以上』働いているクリエイターが4.5%いるということも分かりました。
では、残業時間はどうでしょうか?
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1ヶ月の残業時間は『10時間以内』が僅差でトップで、それ以降は徐々に減少していく傾向が見えました。
以上、制作会社とインハウスで働く正社員クリエイターで比較してみると、確かに制作会社のクリエイターの方が残業は多めに対応している様子が伺えました。
また、制作会社、インハウスいずれにも『月50時間以上』残業している人も少なからずいることも分かりました。
どうして徹夜・残業が減った?
生産性、自己裁量のある働き方がポイント
そこで、新たな疑問が。
「徹夜は今もあるのでしょうか?」
私が15年程前にデザイナーをしていた頃は終電までの残業は当たり前。
徹夜も毎月3回以上は経験していたのですが、今はどうでしょうか?
上記の調査で1ヶ月の平均残業『50時間以上』を選択したクリエイターに聞いてみました。

徹夜は『全くない』が37.5%、『よくある』は8.3%にとどまる結果となりました。
やはり頻度としては少なくなっているようですね。
では、実際に、今は3年前と比べて残業は減ったのでしょうか?
各雇用形態別に見ていきます。
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■正社員、契約社員
『減った』が最も多く32.9%ですが、『あまり変わらない』も24.4%と比較的多い回答となりました。
■派遣、パート・アルバイト
圧倒的に『減った』がトップになりました。
正社員の業務ボリュームが減れば社内で回せてしまうことから、派遣やパート・アルバイトの仕事の負担を軽くできているのかもしれませんね。
■フリーランス
意外にも『あまり変わらない』が最も多く、『増えた』の項目ではフリーランスがトップとなりました。
全体的に残業が『減った』と捉えているクリエイターが多いことが分かりましたが、その理由をについて、クリエイターの皆さんはどう見ているのでしょうか?
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■正社員・契約社員
『自己裁量でスケジュール調整がしやすい』『生産性高い働き方を意識している』がほぼ同列でトップ。
コロナ禍でのオンライン化促進や働き方改革による意識変革により、残業を減らす努力をしている様子が伺えます。
■派遣、パート・アルバイト
『業務量が減った(コロナとは別の影響)』が最も多いものの、『自分のやるべき業務に集中できている』回答も次いで多く、メリハリをもって仕事ができているクリエイターが多いようです。
■フリーランス・個人事業主
ほか項目に圧倒的な差をつけて『自己裁量スケジュール調整がしやすい』がトップでした。
自分のペースで仕事ができるフリーランスならではの結果かもしれませんね。
まとめ
今回は、クリエイターの労働時間と残業時間について、雇用形態別で比較検証していきました。
■平均労働時間
全雇用形態において、1週間あたりの平均労働時間は『40時間以上50時間未満』がトップ。
制作会社で働く正社員のクリエイターの方がインハウスよりも比較的労働時間が多いことが分かりました。
■平均残業時間
フリーランスは『残業全くなし』、その他の雇用形態も『月10時間以内』の回答が最も多くなりました。
制作会社で働く正社員のクリエイターは『月20~30時間未満』、インハウスでは『月10時間以内』が最も多い結果となり、比較的制作会社の方が残業対応をしていることが分かりましたが、現在は徹夜はほとんどないようです。
■残業時間が減った理由
『コロナ禍で業務量が減った』という定量的な要因はあれど、オンライン化や働き方の意識変革により『生産性の高い働き方』や『自己裁量』をもって仕事にあたっているクリエイターが多いことで、定性的にも残業を減らす取り組みができているという実態が分かりました。
以上、一つずつ実態を見ていくと、クリエイターが労働時間に対する満足度を比較的高く評価している背景が少し分かったような気がします。
また、クリエイターと一括りに言っても、雇用形態によって満足度も違えば、制作会社/インハウスによっても実態が異なることもお分かりいただけたと思います。
皆さんは今回の結果をどう感じましたでしょうか?
働き方を見直しているクリエイターや、転職活動をしているクリエイター、さらにはクリエイター採用を検討している企業担当者様にも参考になれば幸いです。
今回は雇用形態別に比較検証してみましたが、デジタル系・グラフィック系職種別で比較検証もしてみるとまた違った気づきがあるかもしれません。
こちらについても、引き続き分析して報告していきたいと思います。
次回は、クリエイターの給料・収入についての調査報告をさせていただく予定です!