会社・組織

《クリエイターの働き方実態調査③》クリエイターがフル出社している理由

出社の理由はなんですか?

前回までのおさらい


こんにちは。クリエイターワークス研究所の宮本です。
《2021年クリエイターの働き方実態調査 ① 》コロナ禍2年。クリエイターの働き方は変化した?のコンテンツで、現在もフル出社のクリエイターが多いという現状をお伝えしました(下図参照)。

n=276(単一回答)



さらに、《クリエイターの働き方実態調査②》【雇用形態で比較】【Web,広告で比較】リモートワークはどれくらい浸透している?では、広告/SP系のクリエイターがWeb/IT系に比べ、フル出社をしている傾向が見られました(下図参照)。

広告/SP系(n=232) Web/IT系(n=153)

「トップまたは上司の命令だから」と答えたクリエイターが40%以上 !

では、リモートワークが進んでいる中、現在もフル出社をしている理由は何なのでしょうか?
今回は、現在の働き方を「フル出社」と回答したクリエイターに聞いてみた結果をインフォグラフィックで表してみました(n=125人)。

(単一回答)

ここでは、「トップまたは上司の命令だから」と答えたクリエイターが40%以上を占める結果となりました。

それよりも驚いたのは、「特に理由はない」が次に多い回答数だったということ。
「会社で働くほうが効率が良い」と無意識にも出社を選んでいるクリエイターも多いのかもしれません。

雇用形態別で比較!それぞれトップが異なる回答に

さらに、どんな属性のクリエイターがそれぞれの項目に回答してくれたのか?もう少し具体的に見ていきたいと思います。
雇用形態別では、それぞれのトップは以下の通りとなりました。

■正社員/契約社員

(複数回答可)

「トップまたは上司の命令だから」の回答がほぼ半数。
組織で働いている以上、やはりトップや上司からの命令として出社しているクリエイターが多いようです。
一方で、「新入社員、若手社員の育成が必要だから」は最下位となっており、育成面はオンラインでも対応できているクリエイターが多いのかもしれません。

■派遣社員

(複数回答可)

「セキュリティが厳しいから」がダントツ40%超えという結果となりました。
正社員/契約社員ではさほど課題として上がっていませんでしたが、派遣だからこそ社内でしか対応できない専門的な業務を任せているというケースもあり、セキュリティ面に十分配慮している派遣先も多いようです。

■パート・アルバイト

(複数回答可)

「特に理由はない」がダントツだったのがパート・アルバイトのクリエイター。
そして「その他」も他の雇用形態に比べ、最も多い結果になりました。
コメント欄には、「社内で手作業が必要だから」といった声もあり、出社することで仕事が捗るという認識を持って取り組んでいるクリエイターも多い印象でした。

広告/SP系とWeb/IT系で徹底比較!出社している理由にも違いはある?

前回の《クリエイターの働き方実態調査②》【雇用形態で比較】【Web,広告で比較】リモートワークはどれくらい浸透している?で、リモートの浸透が広告/SP系とWebとで違いが現れるか?検証したところ、 広告/SP系の方がフル出社で働いているクリエイターが多いことが分かっています。

では、その理由もまた、 広告/SP系とWebとで違いが現れるか? 検証してみました。

(複数回答可)

■広告/SP系クリエイター
やはり 「トップまたは上司の命令だから」と答えるクリエイターが最も多い結果となりましたが、面白かったのは、「特に理由はない」がWeb/IT系よりも25%も上回っているということ。
コロナ前からの働き方がデザインワークに馴染んでおり、効率的にも出社を選ぶクリエイターも多いようです。

■Web/IT系クリエイター
今回の調査では「トップまたは上司の命令」「セキュリティが厳しいから」「チームマネジメントが必要だから」「新入社員、若手育成が必要だから」の4項目で Web/IT系の方がという結果が出ました。
なかでも、セキュリティ面ではネットワーク管理を徹底している企業も多いことが伺えます。

出社をする理由には、 広告/SP系 、Web/IT系どちらも「会社の考え方」が根底にあり


今回の回答の中で「その他」と答えたクリエイターが案外多くありました。
その中にはより具体的な課題や問題点が隠されているかもしれないため、もう少し噛み砕いてみることにします。

「その他」を回答したクリエイターのコメントを契約的要因、業務的要因、物理的要因、 風習的要因の4つに分類し、 広告/SP系 、Web/IT系 のコメントも識別してみました。

契約的要因では、入社や試用期間のタイミングで出社をしているクリエイターもいれば、そもそもリモートワークを導入していないという回答もありました。
広告/SP系 、Web/IT系ともに半々くらいがこの要因のようです。

業務的要因では、「入稿作業」に関わる現場作業といったグラフィックならではの環境が影響し、広告/SP系クリエイターの声が多く挙がりました。

物理的要因も、モリサワフォントやシステム設備など、主に広告/SP系クリエイターからの声が多く挙がりました。

風習的要因では、広告/SP系、Web/IT系どちらも「会社の方針」「出社するのが良し」とする会社の考え方のもとで出社しているクリエイターがいることが分かりました。

その背景には、「リモートにする場合、クリエイターのパフォーマンスをどう評価するか?」といった雇い主である経営者の課題も潜んでいるのかもしれません。

どんなワードが多かった?テキストマイニングで表してみました

上記の分類のコメントは抜粋であるため、「その他」コメントでは何のワードが多く使われたか?をテキストマイニングで検証してみました。

テキストマイニングとは…?
テキストを対象にデータ解析をする手法です。
今回はスコアが高い単語を複数選び出し、その値に応じた大きさで図示されたワードクラウドを表します。
( 単語の色は品詞の種類で異なっており、青色が名詞、赤色が動詞、緑色が形容詞を表しています)

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より
「出社の理由は何ですか?」その他フリーコメント回答のテキストマイニング

テキストマイニングで圧倒的に多かったキーワードは、「会社」「出社(リモート)」でした。
「会社が○○だから」「出社をしないと~」のような負の意味合いで使われていることが多く見受けられました。
さらに、動詞では「できる」が多く使われているコメントがありましたが、ポジティブな意味合いではなく、「○○できる人がいない」という意味合いで使用されていることが分かりました。

特に気になったのは、形容詞の「古い」のワード
風習的要因にあるように、「『出社するのが良し』とされている古い考えがある」のようなコメントが目立ちました。
クリエイターが「古い考え」として捉えていることについては、 コミュニケーションで解決できることもあるかもしれません。
例えば、指示をした トップや上司が 「なぜ出社が良いと考えているのか?」を社員に分かりやすく説明をすることで、「新しい考え」としてポジティブに働くことができるようになるのではないでしょうか。

まとめ

以上、今回はフル出社をしているクリエイターの『出社の理由』を紐解いていきました。

■全体
・フル出社をしているクリエイターの40%は 「トップまたは上司の命令だから」という理由

■雇用形態別
・正社員:「トップまたは上司の命令だから」が約半数
・派遣社員: 「セキュリティが厳しいから」がダントツ40%超え
・パート・アルバイト: 「特に理由はない」が40%超

■業種・ジャンル別
・広告/SP系:「特に理由はない」がWeb/IT系よりも25%も上回っている
・Web/IT系: 「トップまたは上司の命令」「セキュリティが厳しいから」「チームマネジメントが必要だから」「新入社員、若手育成が必要だから」の4項目で 広告/SP系よりも上回る

■「その他」の理由について
・物理的要因と風習的要因を挙げるクリエイターが多い
・風習的要因は、会社のパフォーマンスの評価基準や「リモート」に対する考え方が根底にある


世間的にオンラインチャットツールなども普及しリモート化は進んでいるため、「リモートが良し」という風習もあります。
しかし、今回の調査では 「特に理由はない」の回答も多かったことから、出社をすることのメリットをしっかり理解して納得して働いているクリエイターも多いことが分かりました。

そのため、業界や職場環境によっては「リモートが良し」とは限らないということも言えそうです。

↓今までの実態調査報告はこちら↓

https://www.y-create.co.jp/CWL/?p=29
https://www.y-create.co.jp/CWL/?p=220

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