こんにちは。クリエイターワークス研究所(CWL)のまるこです。
クリエイターの仕事満足度について、クリエイターの属性を分類し、前回はデジタル系クリエイター(n171)にフォーカスして報告しましたが、今回はグラフィック系クリエイター(n225)の実態を報告していきます。
主に現在グラフィック関係のクリエイティブ職としてご活躍している方や、これからこの業界を目指す学生、さらにはキャリアチェンジを検討している方にもぜひ参考にしていただけたらと思います。
メーカー・事業会社内クリエイターの増加が影響?100名以上の大規模組織所属のグラフィック系クリエイターが25.8%
まずは、アンケートにご協力いただいたグラフィック系クリエイターの属性から見ていきましょう。
今回のアンケートでは、正社員・契約社員として活動しているグラフィック系クリエイターが51.6%となり、フリーランス・個人事業主として在籍しているグラフィック系クリエイターは26.5%となりました。

職種では、グラフィックデザイナーが圧倒的に多く、アートディレクター、DTPオペレーターも比較的多い属性となりました。

続いて、このようなグラフィック系クリエイターがどんな会社に属しているのか?会社の業種と社員人数も見ていきます。

会社員では『デザイン事務所』、『メーカー・事業会社』『広告制作会社』に属しているグラフィック系クリエイターも多いようです。
社員人数では、少数精鋭の『2人以上10人未満』『30人以上50人未満』で活躍している層が31.8%。
一方で、100人以上の大規模組織で活躍している層も25.8%を占めており、二極化しているようにも見えます。
これは、『メーカー・事業会社』で活躍するグラフィック系クリエイターも多くなってきたからかもしれません。
グラフィック系クリエイターの仕事満足度65.8%!
上記を踏まえた上で、グラフィック系クリエイターの仕事満足度について見ていきましょう。

グラフィック系クリエイターの仕事全体の満足度は『満足・やや満足』が65.8%と比較的高い数字になりました。
なかでも、『職場の人間関係』の満足度も高く、良好な環境で活躍しているクリエイターも多いからかもしれません。
さらに、前回報告したデジタル系クリエイターと同様の傾向として、『労働時間』『休日・休暇』の満足度も高いことが分かりました。
ということは、労働時間は比較的ワークライフバランスが整っているのでしょうか?
平均労働時間、平均残業時間の実態を見ていきましょう。

グラフィック系クリエイターの1週間の平均労働時間は『月40~50時間』が多いことが分かりました。
さらに、残業についても、今回はフリーランス・個人事業主からの回答が多いこともあり『残業全く無し』と『~10時間以内』が多くなりました。
会社の業態のグラフの通り、『個人経営』の次に多いのが『デザイン制作会社』に在籍しているグラフィック系クリエイターですが、労働時間や残業時間を比較的調整できているクリエイターも多いのかも知れません。
しかし、グラフィック系クリエイターもまた『月50時間以上』残業している人が6.1%いるという実態もあるようです。
デジタル系クリエイターと比較してみると、多少のギャップはあれど傾向は似た形となりました。
▶デジタル系クリエイターの仕事満足度と実態についてはこちら
『年収』の満足度は34.2%と最も低い数値に…その実態・理由とは?
一方で、『年収』『スキルアップの機会』においては満足度は低い結果になっています。
特に、他項目に比べ最も満足度が低かった『年収』ですが、実態はこのようになりました。

今回のアンケートに回答いただいたグラフィック系クリエイターの51.6%がフリーランス・個人事業主とのことなので、『200~250万円未満』から『1000~1500万円未満』まで幅広く分布しました。
最も多いボリュームとなったのは300~400万円未満のゾーン。
600万円以上の層は減少していき、1500万円以上の年収のクリエイターはいませんでした。
年収の傾向は、デジタル系クリエイターのデータとは少々ギャップが出た部分のように感じます。
▶デジタル系クリエイターの仕事満足度と実態についてはこちら
さらに、現在の年収額に満足していない理由について別途アンケート調査したところ、以下の結果となりました。

デジタル系クリエイターと同様、『求める生活水準に対して不足しているから』という回答が最も多い結果となりましたが、グラフィック系クリエイターの方が『自分の能力が評価されていないから』と強く感じている人も多い傾向が見えました。
さらに、『給与査定の仕組みがうまく機能していないから』の項目もデジタル系クリエイターよりも2.3%高く、グラフィックはデジタルに比べ成果が数値化しづらい部分もあることから、このような傾向が見えてきたのかもしれません。
▶デジタル系クリエイターの仕事満足度と実態についてはこちら
最も満足度の高いグラフィック系職種はグラフィックデザイナー!
今回の調査ではグラフィック系クリエイターと一括りにしてしまいましたが、グラフィックもまたクリエイティブディレクター、アートディレクター、グラフィックデザイナー、パッケージデザイナー、DTPオペレーターなど多様な職種があり、職種毎に担う役割が異なります。
本来であれば、上記のような職種に分類し満足度も実態もそれぞれ分析検証できればベストではありましたが、n数にバラツキがでてしまったためにそれは実現できませんでした。
そこで、今回は比較的母数の多かったアートディレクター、グラフィックデザイナー、DTPオペレーターの3つの職種のみで満足度ランキングをしてみました(ただし、やはり職種別に分類するとn数が極端に減るため、統計上ベストなデータではありません。あくまで目安としてご参照ください)。

1位:グラフィックデザイナー
全体としてはグラフィックデザイナーが満足度が最も高い職種となりました。
満足度が特に高かったのは、『休日・休暇』、『職場の人間関係』の項目。
メーカー・事業会社のインハウスデザイナーも増えてきたことでワークライフバランスの整った環境で仕事ができているグラフィックデザイナーも多いのかもしれません。
一方で、『年収』と『スキルアップの機会』は満足度は低い結果となりました。
1位:アートディレクター
全体としてはグラフィックデザイナーと同列1位。
なかでも『職場の人間関係』が70.8%と最も満足度が高くなりました。
アートディレクターは社内外で積極的にコミュニケーションを取ることが重要な役割ですが、その責任ある役割にやりがいを感じている様子が伺えます。
一方で、『仕事の量』は29.2%と満足度が最も低く、この点では不満に感じているアートディレクターが多そうです。
3位:DTPオペレーター
この3職種の中では3位となりましたが、グラフィックデザイナーとアートディレクターとは異なる傾向が見えました。
というのも、『スキルアップの機会』の項目では65.4%と圧倒的に差をつけて1位となりました。
DTPオペレーションは機能的なテクニックを必要とする専門職種だからこそ、学習の場が用意されている環境も多いのかもしれません。
一方で、最も満足度が低かったのは『年収』。
他項目は50%以上の数値だったのに対し『年収』のみ30.8%と落ち込んでおり、強い不満として表れた形となりました。
さいごに
最後に3つの職種に絞り込んで比較検証してきましたが、いかがでしたか?
デジタル系クリエイターとそれぞれのデータを比較してみて感じたのは、全体的に満足度は高いものの、年収に満足していない理由が『自分の能力が評価されていないから』と感じているグラフィック系クリエイターが多いということ。
企業側がこの問題を放置してしまうと退職理由にもなり得そうです。
ぜひ今回の調査結果を参考にしていただき、グラフィック系クリエイターのモチベーションアップにもご活用いただけたら嬉しいです。
次回は、現在活躍中のデジタル系・グラフィック系クリエイターが感じている仕事のやりがい・信念についての調査報告です!
▼デジタル系クリエイターの仕事満足度と実態の調査報告はこちら