海外のクリエイティブ事業~イギリスで活躍する日本人アーティストと“禅スタイル”とは?

イギリスでは近年、日本のデザインやアートが注目されています。例えば、無印良品は「MUJI」という名でロンドンをはじめイギリス国内に13店舗、ユニクロもロンドンに11店舗を構え、「メイド・イン・ジャパン」のファストファッションもイギリスで好評を得ています。では、イギリスではどのような日本のデザインやアートが受け入れられているのでしょうか?また、イギリスでは「禅スタイル」という言葉をよく耳にするのですが、この「禅スタイル」とは一体何なのかも見てみましょう。

 

現代アートや、アニメなどのサブカルチャーから見る「日本」人気

イギリスでは、美大生やプロのクリエイター、美術関係者にも、日本の現代アートやサブカルチャー・ファンが多く存在します。ロンドンでは毎年と言っていいほど、日本人アーティストや建築家、写真家のエキシビションが行われています。

今年2月、ガゴシアン・ギャラリーでの村上隆とヴァージル・アブローの合同アート展、マイケルホッペン・ギャラリーおよび、2012年テートブリテンでの森山大道の写真展、テートモダンでの草間弥生の個展など、奈良美智、杉本博司なども過去にロンドンで個展を開いています。
他にも、スコットランドで今年9月にオープン予定の「V&A@Dundee(ロンドンのビクトリア&アルバート・ミュージアムの分館)」の設計を担当した隈研吾、1985年以来ロンドンの有名劇場「バービカン」などで何度も公演を行い、イギリス演劇界で高い評価を得ていた故・蜷川幸雄など、イギリスにおける日本人の活躍は目覚ましいものがあります。そうした影響も受けてか、ロンドンの芸大には才能溢れる日本人クリエイターたちが数多く留学しています。

さらには、日本のサブカルチャーも注目を浴びていて、2013年から3年連続で開かれた「きゃりーぱみゅぱみゅ」のロンドン公演は全て完売、オリンピア展示場で開催されるアニメ・イベント「Hyper Japan」、トラファルガー広場で開かれる日本祭り「Japan Matsuri」、そのいずれも気合の入ったコスプレで来場するイギリス人の日本マニアたちで大盛況でした。

 

イギリスのインテリア業界では定番の“禅スタイル”とは⁉︎

それに加え、“Zen=禅”と呼ばれるスタイルがミニマリズムの象徴として、北欧調と並び、シンプルなデザインを好むイギリス人の間で浸透しています。

本来、禅とは「座禅を宗とする仏教の宗派、禅宗の修行法」のことですが、イギリスにおける“Zen”は一般的に宗教的な意味合いよりも、簡素でシンプルなデザインやマインドフルネス的なライフスタイルとして捉えられています。
デザインとしての“Zen”は、無駄を省いた空間にミニマリストの家具と観葉植物を配置、竹や檜などの木材、麻、石など天然素材を使用、配色は白、黒、グレーを基調としたものが多く、「まるで瞑想している時のようにリラックスできる空間やインテリア」という定義だそう。

5つ星ホテルの高級スパでも“禅スタイル”は人気で、小さな仏像やオリエンタルな花、砂利や玉石、檜風呂、竹の床など、日本風やアジア風デコレーションで統一されていることも珍しくありません。また、日本人の感覚からすると少し面白い家具として、「Futon」と呼ばれる背の低いスノコ状の土台に折りたたみの布団風マットレスを敷いたソファベッドがあり、イギリスのモダンなインテリア・ショップでよく見かけます。
いずれもイギリス人が日本的だと感じるインテリアであり、日本意匠の特徴のひとつ「引き算の美学」や「侘び寂び(wabi-sabi)」に共感する人々からの支持を集めています。

 

イギリスにおける日本の伝統芸術や骨董品への関心度

日本の伝統的なものへの関心も高く、大英博物館には日本の伝統工芸セクションがあります。また、伊万里の壺や浮世絵の複製画などが個人宅のリビングや玄関ホールにさりげなく飾られていることも。
イギリス人には、異国のものがエキゾチックでオシャレに映るせいか、こうした伝統芸術や骨董品は知識人やハイソな層に定評があります。
実際、ここ数年は日本へのイギリス人旅行客も増加しており、お土産に買った浴衣を自宅でバスローブ代わりに使う”日本通のイギリス人”もかなりいるのだとか。こういった日本伝統の品々からインスピレーションを受けるイギリス人アーティストも多く存在しています。

このように日本のデザインとアートは、はるか遠く離れたイギリスで驚くほど受け入れられています。日本では欧米や北欧デザインに憧れ人気を博していますが、逆もまたしかり、ということでしょう。

また海外から見ると、一口に「日本意匠」と言ってもミニマルなシンプルさ、独特な色使いやフォルム、キッチュなサブカルチャー、伝統芸術といったような多様なスタイルが存在していることも、幅広い層のイギリス人が「メイド・イン・ジャパン」に興味を持つ要因かもしれません。

 

出典元:
https://www.independent.co.uk/life-style/kanso-japan-interior-design-concept-feng-shui-zen-clutter-simplicity-a8329091.html
http://www.architectureartdesigns.com/11-magnificent-zen-interior-design-ideas/
https://www.fashionsnap.com/article/2018-02-17/future-history/
http://www.tate.org.uk/art/artists/daido-moriyama-11595/daido-moriyama-pictures
https://www.gagosian.com/exhibitions/takashi-murakami-and-virgil-abloh–february-20-2018
https://www.vandadundee.org
https://www.michaelhoppengallery.com/exhibitions/170/overview/#/artworks_standalone/10800
http://www.tate.org.uk/whats-on/tate-modern/exhibition/yayoi-kusama
http://www.britishmuseum.org/visiting/galleries/asia/rooms_92-94_japan.aspx

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