お仕事図鑑

《お仕事図鑑vol.2》BtoCのLP制作と運用に強いWeb制作会社nanocolorの川端康介さんに聞く! これからのデザイナーのあるべき姿とは?[4回連載 第4回]

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nanocolor川端さんに聞く!インタビュー4

こんにちは。クリエイターワークス研究所(CWL)のまるこです。
今回は、これまで3回にわたって掲載してきたnanocolor代表の川端康介さんへのインタビュー最終回です!

これまでのインタビューを通して、クリエイターとして熱量やモチベーションの高さはもちろんのこと、非常に戦略的な経営者の一面も拝見することができ、とても興味深く刺激的でした。

デザイナーといっても、何をどこまで突き詰めるかによってそのクオリティは千差万別。刻々と変わり続ける時代、常に求められるデザイナー・クリエイターであるためのヒントが、川端さんの言葉の中にたくさん詰まっていたと思います。

そして最終回は、「川端さんにとってのLPとは?」という切り口から、これからのデザイナーのあるべき姿についてなど、川端さんのお考えを聞かせていただきました
多くのみなさんがヒントを受け取り、さらなる飛躍へ役立てていただけるとうれしいです!

今回のインタビューで川端さんのたくさんの表情をキャッチできましたので、デザイナーにポートレイト風にレイアウトしてもらいました!

Contents

LPは万能ではなく、アウトプットの1つに過ぎない

― まるこ

川端さんと言えば“LPのプロフェッショナル”という印象ですが、川端さんにとってLPとはどういう存在なのでしょうか?

― 川端さん

何でしょうね…、実際のところ「全て」とかそんな感じは一切ないです(笑)。

― まるこ

想定外のお答えでした(笑)。

― 川端さん

LPにそんなに期待してないというか、それは悪い意味ではなくて、LPでできることは限られてると思っています

LP単体で考えると、総合格闘技だとかマーケティングだとか、よく言われますよね。
確かにそうなんですけども、商品にまつわる様々な領域、ブランドだとかコンセプトだとか、PR、キャンペーン、クリエイティブとか、いろんな要素の中の一つがLPなんだと僕は思っているんですよ。

― まるこ

そうですね、確かに!

― 川端さん

LPを知れば知るほど、「LPでできることは限られているな」とすごく感じていて。

商品が売れない状態というのは、きちんと商品価値を伝えれば価値を理解してくれる人がいるのにその人にちゃんと伝わっていないか、もしくは、価値を理解してくれる人を集めてこれていないか、の2択しかないんです。そのどちらかが機能していないのであれば、LPを変えれば上手くいく可能性があります。

でもそうじゃないところにボトルネックがある時に、自分たちが良いと思うLPをいくら作っても、何の事業インパクトも残せないと思っています。そういう意味で、事業戦略とかブランド戦略の中のたった1つの要素でしかないLPを、僕自身はすごく大事とは思ってないです。

明日からLPを作ってほしいという人が全部いなくなると困りますけど、ただいずれなくなったとしても困らないように、LPを売るという文脈で、僕たちは会社を存続しようとは思っていないですね。

今はクライアントに対して売っていく、もっと本質的なものがありますし、いろいろあるアウトプットの1つとしてLPがあるという位置づけなので。

― まるこ

ちょっと予想外のお答えでしたが、なるほどと思いました!

イメージとの格差を逆手に取る戦略で「強み」を打ち出す

― まるこ

少し野暮な質問ですが、「川端さんの強みは?」と聞かれたら、ご自身はどのように言語化されていますか?

― 川端さん

これは露出する上では、ちょっと戦略的に考えていまして。
良くも悪くも、「デザイナーのわりにすごく考えてますね」と言われるポジションです

― まるこ

「デザイナーのわりに」がポイントでしょうか。

― 川端さん

そうです。これまでずっとデザインをやってきている中で、採用面接に来られた方とかいろいろ見ていると、コミュニケーション能力が低い方が多いなとか、自分の作りたいものだけ作っている人が多いなとか、そういう印象があったんです。
さらにTwitterとかSNSを始めてみて、より一層その印象を強くしたというか。もちろんTwitterの世界にいるデザイナーが全デザイナーではないというのは分かっていますけどもね。

コミュニケーション能力が低いというのは、自分が目指しているデザイナー像や会社像とはすごくギャップがあったので、「マーケティング思考のある制作会社というのは、もしかしたら少ないのかも」という仮説を立てたんです。
僕たちは「マーケティングをやっている」とは、一切言ってきてはいないですけどね。

― まるこ

そうですね、そういう言葉を敢えて使っていない印象があります。

― 川端さん

制作会社のデザイナーというと、「言っても下請けでしょ」とか「言わないとやってくれないんですよね」ていう不満が、恐らく世の中に多いだろうと思うんですね。

それを逆手に取ろうと思って、僕はあえて「デザイナーです」「制作会社です」というポジションを置くんです。
そのポジションから消費者ニーズやブランド価値を踏まえた提案をすると、「制作会社のわりにすごいよね」となる。元々お客さんが持っていたイメージとの格差のおかげで、想定していた期待値を上回る好印象につながるわけです

そのポジションをずっとやっている感じなので、世の中の制作会社のレベルが上がってくれば、このポジションは捨ててもいいとは思っていますが、現状でのレベルはまだ我々よりも低いですし、期待値がまだまだ低い状態の間は、このポジションでやろうかなと思っています。

― まるこ

なるほど!だからnanocolorさんが制作会社の中で確立したポジションを持っているんですね。すごく納得しました。

― 川端さん

実際にはマーケティングとかいろいろされてる制作会社さんも、もちろんあります。
あるんですけれども、Webサイトを見てみると「事業に寄り添う」とか「お聞きします」とか言っているわりには、「構成とかワイヤーフレームとか素材とかは提供してね」って言っているような会社もあるんですよね。

― まるこ

そうなんですね!

― 川端さん

まだまだそういう次元の会社が存在してるんだなって思うと、僕たちの希少性はまだまだ上がる可能性がある。

結構甘い気持ちで稼げるんじゃないのかとか思って、この世界に入ってくる人がいればいるほど、僕の希少性が、1万人のうちの1人から10万人のうちの1人になるので、そういう次元の会社がどんどんと増えてほしいなと(笑)。

― まるこ

あれ。最初いいことを仰っているような気がしたんですけど、何だか面白い結末に(笑)。

“相手の期待値を超える努力”を惜しまないデザイナーになれ

― まるこ

いろいろ伺ってきましたが、最後に、川端さんが今後のデザイナーはどうあるべきだと思っているか?お聞きしたいです。

― 川端さん

最近知り合いとも話していたんですが、近年デザイナーが制作会社ではなく、インハウスとか事業会社にどんどんと流出してるような気がするんです。そちらのほうが制作会社に比べて、給料が高いとか労働環境がホワイトだというのもあるかと思うんですけど。

― まるこ

それはありますね。

― 川端さん

そういう流れに負けないために制作会社も頑張らなきゃ!変わらなきゃ!みたいな話もあるんですけど、僕はそういうインハウスの環境では成し得ない、課題解決の提案が制作会社にはできると思っているし、それができるのであれば制作会社が変わる必要はないと思っています

要するに、インハウスや事業会社さんより制作物に関する専門性がちゃんとあれば、そこでいいはずなんですよね。制作会社の機能としては。

まあ、専門性を持つことがそんな甘い話ではないというのは当然理解していますが、いただいた仕事に対して、自分なりの精一杯ではなく、相手が求める期待値を見定めて、それを埋める努力をするのが制作会社であり、制作会社のデザイナーだと思っています

特にデザイナーという専門職は、できなければやれるようになるしかないし、それをできないまま中途半端に納品したら最悪ですしね。

― まるこ

なるほど。確かにお客さんのニーズに応える努力は不可欠ですよね。

― 川端さん

お客さんのニーズに応えるのは産みの苦しみでもありますが、同時に、この仕事ならではの楽しみでもあると僕は思っているので、是非ともそこを楽しんでほしいです

結局のところ、今後のデザイナーはどうあるべきかと言うと、仕事を請け負った期間の一時期でいいので、お客さんの事業とかカテゴリーとか市場に対して専門性を一気に高める。
その上で客観的視点を持った第三者として問題を発見し、そこに対して、「こうすると解決できるよ」という分析の結果として、制作物を生み出すことが求められるんじゃないかなと。

― まるこ

こうやって言語化していただくと、やっぱりなるほど!となりますね。

― 川端さん

だから、単純に「ロゴを作ります」というところに行かないほうがいいですよと(笑)。

― 連載2回目(『クリエイターが仕事を続けていくために必要なこととは?』の【フリーランスは世の中に対応し続けることが大事】)でお話しいただいていたことに行き着きますね(笑)。
長時間にわたり、たくさんの貴重なお話をありがとうございました!

前回のインタビュー記事を読む

https://www.y-create.co.jp/CWL/?p=2147
https://www.y-create.co.jp/CWL/?p=2090
https://www.y-create.co.jp/CWL/?p=1973

編集後記

以上、今回が最終回のインタビューとなりましたが、いかがでしたか?

オンラインという形でのインタビューでしたが、川端さんの分かりやすい言葉選びも秀逸で、カップラーメン(連載2回目)などの例え話も面白く、あっという間の2時間半でした!

川端さんのキャリアやビジネスの考え方はデザイナーをはじめとしたクリエイターはもちろんのこと、他の職種の方々にとっても非常に勉強になることが多いのではないかと思います。

もっと川端さんやnanocolorのことを知りたい!という方は、ぜひ以下よりチェックしてみてください!

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