ロシアでは、天然資源に代わる財源としてIT産業が注目され、独自の進化を遂げています。そのため、アプリのUIUXデザインにも重点が置かれ、ロシア国内の地図なら「ヤンデックス」社が出す、「ヤンデックスマップ」の方がgoogleより正確だったりします。
今回は、ロシアならではの発想でUIUXデザインにこだわったアプリを通して、ルーティンになりがちな発想に一風を仰ぎ、UIUXデザインの企画や発想のヒントにしていただければと思います。
目次
■世界一簡単な送金アプリ!?『ズベルバンク』オンライン
「ズベルバンク」は元ロシア国立銀行です。ロシア最大の商業銀行で、国民の約半数が口座を持っています。
顧客は、クレジットとキャッシュカードが一体型のカードを持ち、それをアプリと連携。メインページから、たった5つのボタンで必要項目に飛べるシンプルさで、口座残高・送金・オンラインチャット・使用履歴・GPSからはじき出された最寄り銀行が確認可能です。
このアプリは、携帯電話番号とカード情報をアカウントにリンクさせており、相手の電話番号さえわかれば送金できる仕組みになっています。しかも、同行間の送金は24時間365日で手数料無料、携帯番号と金額を入れれば、数秒後には相手へお金が入金されます。
銀行のお堅いイメージとは異なり、アプリを開いてパスコードを入力すると「◯◯さん、こんにちは!」と時刻の挨拶と可愛い風景の壁紙が表示、さらに風景も実際の時間ごとに変化するという、起動時間も飽きさせない工夫があります。
■水道代決済アプリ『モイカビネット』
アパート管理会社である「ピック」社のアプリ「モイカビネット」は、毎月の水道代をアプリ上で確認、オンライン決済ができるもの。
毎月の履歴もアプリ上で確認、大雑把な気質のロシア人には家計簿いらずでとても好評。しかも履歴には、「冷水」と「温水」の『時間毎の使用量と料金』にわけられているという細かさです。
ロシアでは、水道使用量の検針を自分で申請しますが、以前は紙に書いてアパートの検針ボックスで集め、定期的に管理会社が収集してました。このアプリによって、検針ページに必要な数値を入れるだけなので、管理会社も顧客にも有用なシステムなのです。
また、アパート管理会社への苦情や欠陥などもオンラインチャットとして送れるので、以前より対応も早いと好評です。
こちらも上述のような事務処理的なアプリですが、起動中は「こんにちは!」などの時刻の挨拶に、部屋で女性が携帯片手に猫とくつろぐ様子が表示されます。また、支払い画面の壁紙も可愛らしい一軒家のデザイン。どちらも実際の時間に合わせて女性の仕草や部屋の様子が変わる、日が陰る、家の明かりがつくなど、機能とは離れた細かい部分まで飽きさせないデザインと工夫で、UIUXの参考にもなるでしょう。
■駐車場探しも支払いもノンストレスに『パルコフキ』
モスクワっこが必ず持っているアプリと言えば「パルコフキ」で、モスクワ市内すべての駐車場料金を、これ1つで完結できるアプリ。アプリに車種とナンバーを登録し、クレジットカードから事前入金しておくシステムです。
駐車場に止めてアプリを起動すると、GPSで現在地と該当の駐車場料金を計算、その場で駐車時間を決めて事前決済、もし駐車場を早めに出ることになっても返金システムがある上、アプリ内での返金なので早くて便利。駐車チケットを取り、帰りはチケットを出し、支払機を探し領収書をもらう。こんな手間がなく車内でたった「数分で完了」します。
さらに、このアプリは駐車場料金の支払いだけではなく、場所ごとの値段を地図検索し最寄りの最安値も探せます。
希望が見つかれば地図上でクリック。すると時間毎の料金・駐車場数・障害者用スペース数が表示、そして、駐車場所や駐車時間、支払い料金の履歴も確認でき、おまけに交通違反などの罰金も確認・支払いができる優れた多機能アプリなのです。
■笑いのスパイスを共有!? 『アイダプリコール』
ロシアには「アネクドート」というおもしろ小話があり、ロシア人は友人と会えば必ず、自分のお気に入りのアネクドートを話し笑い合う習慣があります。
『笑いは共有するもの』。そんなロシアならではのアプリが「アイダプリコール」。ブラックジョークを含む、大量の面白画像や動画を更新、1日4回、通知で新着通知してくれます。動画は平均3〜5秒、長いものでも30秒と気軽にシェアできると人気です。
アプリでは最新ものから表示、スライドで無限に閲覧可能、画像下にはライク・コメント・シェアの3ボタンのみのシンプルUI。あらゆるSNSやショートメールの共有やダウンロードや保存も可能で、いつでもお気に入りの鉄板ジョークを共有できるのです。
隙間時間に見る、笑いを共有するなど、ストレスフルなクリエイターにもおすすめです。
■とにかくサクッ! と音楽検索できる『Shazam(シャザーム)』
こちらはロシアではありませんが、ロシアで人気急上昇中のアプリ「Shazam(シャザーム)」。
音楽などを聴いた時に曲名や歌手名が思い出せない、そんな地味なストレスとモヤモヤを取り除く魔法のようなアプリ。
起動して、真ん中のボタンをタップするだけ。音声のデジタルフィンガープリントが作成され、数秒以内に数百万曲が入っているデータベースと照合。そこからはスライドだけで曲名とアーティスト名に加え、歌詞・ビデオ・アーティストプロフィール・コンサートチケット・おすすめトラックなど、あらゆる情報が表示されます。
ワンクリックで、オンラインミュージックストアにも飛べるので購入も簡単。気になった時に、サクッと最小限の操作とデザインが、ユーザー心を掴んでいるアプリです。
■まとめ
ロシア人は美術や芸術に関心が高く、少々飽きっぽいところがあります。そのせいか、ロシアの人気アプリはUIはシンプルながら、UXは工夫が凝らされたものが多い傾向にあります。
多くのアプリは、時間での壁紙が変化や挨拶があったり、少し人間味あふれるUXなど、飽きさせない工夫とデザインが見られます。
このようにユーザー目線を大事にしたつくりは、シンプルと機能性の高さを共存させ、UIUXデザインに新しい発想を吹き込んでいるのかもしれません。