フリーランスは世の中に対応し続けることが大事
― まるこ
先程、フリーランスと起業家では仕事に対する戦略が違うと仰っていましたが、フリーランスの方は、どのように仕事をしていったらいいと川端さんは思われていますか?
― 川端さん

フリーランスの方がやれる仕事は世の中に山のようにあると思うので、ちょっとしたきっかけで仕事になると思うんですよ。
だから、仕事が上手くいっていないフリーランスの方はアプローチが良くないのかも知れないです。見当違いなものを売っているとか。
― まるこ
ニーズに合っていないものを作っているということですか?
― 川端さん
例えば「ロゴを作れます」ということを、ロゴを求めてない人に言っても仕方ないじゃないですか。
お客さんとのコミュニケーションの中で、「こういうところが問題なんだ」と知り、じゃあそこをどういうアプローチで解決していくか?という方法を提案する。
その解決法の1つに「新しいロゴ」があるのであれば、そこに仕事が生まれる可能性があるんですけど、ロゴというものだけを売ろうとしてたら、今ちょうどロゴが欲しいと思っている人に巡り会う確率だけが案件受注の確率になるわけですから、難しいですよね。
― まるこ
確率論的にも、ピンポイント過ぎますね。
― 川端さん
世間のニーズの総量、その中には「必要性を感じていなかったけど、本当は必要だった」という“隠れニーズ”もあると思いますが、そういう掘り起こしも含めて、何かを欲している方々にいかに提案できるかが仕事の総数になっていき、後は金額と納期との折り合いがつけば、受注に繋がると思うんですよね。
デザイナーというのは制作する職業ですから、ロゴであったりLPであったり、何らかの納品物がありますよね。そのときに「納品したモノそのものを売る」のか、「納品したモノによって得られる便益を売る」のか、そこに違いが出ると思うんです。
例えばロゴを作ろうとした時に、お客さんたちと「御社の企業をブランドとしてどう見せていきたいのか」という話をすることでブランドの軸が固まり、「今までの見せ方は違う、こっちだったんだ!」ていう再発見があって、「ではそれを形にしていきましょう」という流れの中で、インナーブランディングも含めたコンセプトを決め、そしてそれを言語化していった最終納品物としてロゴがある。
だから、売ってるのはアウトプットとしてのロゴだけではなく、そこにたどり着くまでのフロー全てですよね。
そういうフロー全体を考えられない人がロゴを作っても、ニーズを満たすロゴにはならないから売れないでしょう。そこはちゃんとやろうよ、ということですね。
― まるこ
自分自身の売り方の問題もありますし、そもそもそういうパフォーマンスがちゃんと出せるのかどうかということも考えた上で、フリーランスになったほうがいいということですよね。
― 川端さん
世知辛い言い方ですけど、技術とか発想力とかそういうものがないと、もう売れない時代です。
求められてないものをいくら作っても売れないんですよ。
それは物販をやっているときからずっと思っています、本当に。
― まるこ
売る側をよくご存じの川端さんだからこそ言える、説得力のある話ですね。
― 川端さん
だから、対応しなきゃいけないですよね。
「今世の中にはこういうものが求められているんだ、じゃあそのニーズに対して、自分だったら何を提案するかな?」という風に、常にチューニングをしなきゃいけない。
なので、先程の話のように企業や商品のブランドのコンセプトがどうあるべきか考えるとか決めるとか、そういうところまでできる人であれば、この案件でロゴは求められてないとなっても、お客さんの課題を解決する別の形の最終納品物はいくらでも作れるんじゃないかと思いますね。
― まるこ
その着眼点がやっぱり必要ですね。
― 川端さん
大きな進化とか変化とかではなくて、世の中に生じる細やかニーズの変化を捉えながら、実質ベースで対応し続けるのが大事だと思いますね。
― まるこ
とても興味深く、勉強になるお話でした!ありがとうございました。

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編集後記

連載2回目は、川端さんが制作会社nanocolorを立ち上げた理由から、事業を継続するための秘訣ついてインタビューを展開してきましたが、いかがでしたか?
現在フリーランスで活躍されているデザイナーさんや、これから起業しようとしているデザイナーさんにとっても参考になるお話が多かったのではないでしょうか。
連載3回目は【nanocolorが構築する“新しい強み”とは?】についてのインタビューをお送りします!
川端さんの働き方やプライベートなお話も少し含めつつ、今後のnanocolorの展開について聞いていますので、こちらもぜひお楽しみにしていてください。