「ブランド再設計」というnanocolorの新たな強み

― まるこ
先程、最近はコンサルティング的なお仕事にも携わられているというお話がありましたが、現在のどんなお仕事の依頼が多いですか?
― 川端さん
コンサルティングとブランディングですね。
いわゆるブランディングを専門としている会社さんがどういうことをしているのか、僕はよく知らないので、いま僕たちがやっていることを、ブランディングと称していいのかどうか分からないですけどね。
― まるこ
具体的にはどういったことをされているんですか?
― 川端さん
LPを作る時には実際のユーザー、消費者のことを考えて設計していきます。
僕たちが作った、僕たちのクライアントの商品LPを見ている消費者は、その他のLPやWebサイトをいっぱい見ているはずです。
そういう消費者たちが「なぜこれを買い、買った後どう感じてどう評価して、その次にどういう行動を取っているのか」っていうところを、購入した方々の声から推測していって、「こういうカテゴリーの商品に対して、消費者はこういうものを求めてるんだ!」というユーザーマインドの集合体を理解していく作業をしていくわけです。
それを踏まえた分析として「このブランドは今どの位置にいて、ブランド価値を伝えやすい環境にあるのかどうか」をクライアントさんに伝えるんですが、分析の過程で、僕たちは「このブランドを価値として感じやすい人は、ユーザーの集合体の中のどの辺にいる人たちなのだろうか?」と考えたりするんですよ。
そうすると、「このブランドのありたい姿」と「ブランドを広げていく際にあるべき姿」がそれぞれ別々にあるんじゃないかと思うことがよくあって。
ユーザーが求めているものに対してきちんと応える文脈と、「このブランドはこうなんだ、こう理解されたいんだ」という売る側の文脈が、ちゃんとイコールになっていたらいいと思うんですけども、そうでないことも往々にしてありますね。
― まるこ
なるほど!分かる気がします。
― 川端さん
ブランド側は「こうだ!」と言いたいんだけれど、LPではその「こうだ!」をストレートに表現することが難しくて、グレーなことを言わざるを得ない場合もあります。
そうなった場合、ブランドのありたい姿を伝えるコミュニケーションとして適しているのか疑問ですし、消費者ニーズにマッチするあるべき姿とも微妙に違ってしまうかなと思うんですよね。
そうならないために僕たちは、ありたい姿をちゃんと言語化した上で、そこに紐づいたあるべき姿をユーザーとのタッチポイントごとに作るべきだと思っています。
こういう作業をこれまでもLPを作る前にやってきていたのですが、これっていわゆる“ブランドの再定義”に当たることだと思うんですよね。
ですから、これはLPを作る云々の話ではなくて、ブランドを再設計する仕事「ブランディング」としてセールスしている、というのが現状ですね。
― まるこ
商材として売っていけるぐらいまで、実績もついてきていらっしゃるということですよね。
nanocolorさんのお仕事の幅がどんどん広がってきていて、素晴らしいです!
一緒に働きたいのは“コミュニケーションを大事にできる人”
― まるこ
少しお話を変えて、経営者としてのお考えをお聞きしたいと思います。
nanocolorさんにはいろんなバックボーンを持った方がいらっしゃるとのことですが、例えばデザイナーとかプランナーを採用されるときに、どんな人と一緒に働きたいとお考えですか?
― 川端さん
会社としての採用の目線と僕の個人的目線だと多少違いはあるんですが、僕がずっと一緒に働くために重要視してるのは、デザイナーに関して言うと、ビジネスコミュニケーションが円滑にできるかどうかですね。
フィードバックをしても理解しているのかしていないのか、どっちか分からないコミュニケーションってすごく辛いじゃないですか。
分かる時は分かる、分からない時は分からないでいい。その上でどこが分かってどこが分からないのかを話し合って理解し合う方が早いし、お互いが出すパワーが最小で済むというか。
― まるこ
確かに、デザイナーこそコミュニケーション大事ですよね。

― 川端さん
なので、人とのコミュニケーションが普通に取れる人がいいです(笑)。
これって多分デザイナーのあるあるだと思うんですが、何故かコミュニケーションが不得手なデザイナーが多いんですよね。
営業とか販売とかどんな仕事でも、人がいて初めてお仕事が生まれるわけで、そこには直接的であれ間接的であれ必ずコミュニケーションがありますよね。例えばエンドユーザーと会わなかったとしても、社内には絶対人がいるわけで、コミュニケーションを取るのは当たり前のことなのに。
― まるこ
そうなんですよね。コミュニケーションが不得手なデザイナーさん多いですね。なぜなんでしょう?
― 川端さん
デザイナーの機能として、何かデザインを作って、そのデザインを納得してもらい、それをクライアントさんのビジネスに活用してもらう。そこまでが一通りあると思うんですけども、それは全部コミュニケーションじゃないですか。
「人と会わずに自分にフォーカスを向けてできる仕事=デザイナー」という印象があるのであれば、それは誤解ですね。アーティストになっちゃう。
― まるこ
そうですね。確かに商業デザインではなくて、アーティストになりますよね。
― 川端さん
もっと言えば、アートですら商業デザインに組み込まれる部分も多大にあるじゃないですか。アートも売られてるわけだし、逆を言えばファッションもアートの一部かもしれない。
芸術・文化・音楽とかも含めて、いわゆるアーティストと呼ばれる作家が何かを作り出している世界も商業に組み込まれることが多分にあるわけですけど、何者でもない人が数ヶ月でアート的な活動をして人の役に立つっていうのはなかなか難しい…。身も蓋もないこと言ってますけど(笑)。
― まるこ
なるほど(笑)。
― 川端さん
多くの方はそうじゃないとは思いますけど、コミュニケーションが大切なことを理解していることがまず大事ですね。
それから、着想が広げられること。「もしかしたらこれとこれを組み合わせることで、こういう風になるんじゃないのか?」という気づきを自分で生み出せることも求められる人材のポイントかなと思います。
ゼロからすごいもの作れるって僕自身できないですし、もしかすると多くの人もできないんじゃないのかなと思っていて。じゃあできないとすれば何をするかというと、1つ1つ「もしかしたらこうかな、こうかな」と積み重ねていく。全く異質なものと組み合わせたり、何らかのかけ合わせを試すアイデアこそが必要になると思うんですよね。
そして「そういえば、あの時こういう同じようなことがあったな」という経験則とか、「もしかしたらこれってキツイんじゃないのか」っていう実験思考があったりすれば、着想は広がりますよね。
― まるこ
確かにそうですね!
― 川端さん
一見するとイレギュラーかも知れませんが、「これとこれ、組み合わせてみたらどうなのかな?」とか「この部分ごっそり無くしちゃったらどうなのかな?」とか、そういうことを試したい欲望が圧倒的に僕は強いんですよね。
だから、王道を理解した上で違うものを組み合わせる発想ができる人が、僕にとってはすごく大事で。これは技術の話じゃなくて、元々そういう思考を持っているかどうかなのかも知れないと思いますけどね。
「何か面白いことしたいよね」と言う人がますけど、僕はどっちかというと「これしてみたら面白いんじゃないのか」っていう“何か”が先にあって、それを試したくなるんですよ。
― まるこ
あるものを別の全く違うものと組み合わせるとか、それをちょっと料理してみようという発想ができる人を魅力的に感じるってことですよね。
― 川端さん
そうですね。カップ麺にお湯を注ぐのでも、「ちょっと多めにお湯を入れたら、どれぐらい薄くなるんだろう?」みたいなことでいいと思うんですよ。それは普段食べていて、「この味濃いな」という感情があるから、その実験思考が生まれるわけじゃないですか。
そういう何か小さなことでも自分の感情のストックがあって、「こうしてみたら楽しかったな」「これしたら良かった」「喜んでもらえた」みたいな行動と情景と感情がちゃんとストックされていていないと、そういう経験ってなかなか活かしきれないんじゃないかなと思うんですよね。
― まるこ
確かに、日常的に実験思考を持っている人じゃないと、なかなかそういうアウトプットはしないでしょうね。こういうお話をされる方は今までいなかったので、面白いです!
― 川端さん
そういう発想って、本当は脳内で何らかのロジックはあるのかも知れないですけどね。
僕自身もアイデアを人に言うと「こんなこと上手くいくの?」て思われちゃうことが多いので、発想するだけじゃなく、ちゃんと論理立てて人に伝えられるということがセットだと思っています。
― まるこ
それがコミュニケーションの本質でもあると思いますし、双方納得したものを作り上げるために不可欠な要素、ということですね。川端さんの着眼点はとても面白くて勉強になります!
今回も貴重なお話をありがとうございました。

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編集後記

連載3回目は、川端さんのプライベートな一面を伺えたのと同時に、働き方やnanocolorの今後の展望、デザイナーとして一緒に働きたい人ついてインタビューを展開してきましたが、いかがでしたか?
今のポジションに満足せず、新しい領域へ積極的にチャレンジしていく姿勢に刺激を受けました。
これからのnanocolorさんに目が離せないですね!
次回、連載最終回となる4回目は【これからのデザイナーのあるべき姿とは?】についてのインタビューをお送りします!
まず始めに「川端さんにとってLPとは?」という問いから、今後のデザイナー像について展開していきます。次回もぜひお楽しみにしていてください。