こんにちは。クリエイターワークス研究所(CWL)のまるこです。
私はデザイナー専門キャリアアドバイザーとして長くクリエイターさんの転職支援をしてきましたが、景気や社会情勢に応じてクリエイターの転職課題の傾向や企業の採用ニーズも大きく変わってきたように思います。
採用方法も媒体に頼ってきた今までのやり方だけでなく、リファラル採用やSNS採用など自社の力で採用していく動きも活発になってきています。その傾向から、転職支援サービスもまたダイレクトリクルーティングを打ち出すなど、変化を遂げてきています。
そこで、上記のように多様な転職活動方法がある中で、正社員クリエイターがどういった方法で転職活動し、どのような判断基準で入社する会社を選んでいるのか?など、クリエイターの転職事情についてアンケート調査報告をしていきたいと思います。
まず、今回の調査に回答いただいた正社員クリエイターの属性は以下のとおりです。
クリエイターの転職経路は求人サイトが1位!2位はエージェントがランクイン
どのような経緯で現在の会社に入社したのか?回答はこの様になりました。
圧倒的に『求人広告・求人サイトからの直接応募』が多い結果となりました。
続いて多かったのは『エージェントからの紹介』。
最近では、弊社ユウクリのようなクリエイター専門の他、エンジニア専門やWeb業界専門など、専門職ならではの特化型サービスを売りとしたエージェントが増えていることで、クリエイター職でもエージェントを介しての転職が増えてきているのかもしれません。
また、『友人・知人からの紹介(リファラル)』や『前職の先輩・同僚から誘われた』の項目も上位にあり、クリエイティブ業界の狭さを有効に活用した転職成功事例もあるようです。
一方で、最近一般職で増えつつあるSNS採用は、クリエイティブ職ではまだ少ないようです。
では、デジタル系、グラフィック系で分類してみると違いは出るのでしょうか?
ただし、正社員のみでさらにデジタル系・グラフィック系で分類していくとn数が極端に減るため、統計上ベストなデータではありません。あくまで目安としてご参照ください)
※デジタル系(n=59):マーケター、Webディレクター、Webデザイナー、UI/UXデザイナー、コーダー/マークアップエンジニア、システムエンジニア、動画・映像編集、CGデザイナー
※グラフィック系(n=105):アートディレクター、グラフィックデザイナー、パッケージデザイナー、エディトリアルデザイナー、空間デザイナー、DTPオペレーター、編集ライター、制作進行管理
デジタル系とグラフィック系で比較してみると、『求人サイトからの直接応募』『前職の先輩・同僚から誘われた』という経緯での転職はグラフィック系の方が多いことが分かります。
一方、デジタル系は『企業サイトを見て直接応募した』がグラフィック系の倍以上、さらには『SNS経由で企業採用担当者から声がかかった』も多く、SNS経由でも転職成功している傾向が見られました。
『その他』の回答では、「アルバイト中にスカウトされた(グラフィックデザイナー/40代男性)」「派遣から社員化になった(グラフィックデザイナー/50代男性)」という回答や、「SNS経由で直接応募した(コーダー/30代女性)」「飛び込み(グラフィックデザイナー/30代女性)」という行動派の方も。
企業選びは『興味』『能力』『価値観』が合うかどうかがカギ!?
続いて、現在の会社を選んだ理由についてもアンケート調査しました。
1位は『仕事の内容に興味があったから』が最も多く、2位には『実務経験やキャリアを積めるから』『専門的な知識・技術を活かせるから』が続き、能力についての項目が伸びました。
6,7位に『会社の将来性が期待できるから』『会社の理念に共感したから』となり、価値観に関する回答が続きました。
このように、『興味』『能力』『価値観』が合致する会社を選ぶ傾向が見えました。
さらに、『社員の人柄がよかったから』という声も多く、人間関係もまた重視しているクリエイターも多いことが分かります。
一方で、休日や給料などの条件が良いだけの会社を選ぶクリエイターはやはり少ないようです。
では、入社の決め手についても、デジタル系とグラフィック系では違いが出るでしょうか?
全体的には似たような傾向となりましたが、違いが見える項目もいくつかありました。
例えば、デジタル系がグラフィック系よりも伸びたのは、人間関係や価値観に関する項目『社員の人柄がよかったから』『会社の将来性が期待できるから』『会社の理念に共感したから』。
さらには、デジタル系職種は比較的働き方がフレキシブルな環境が多いという利点からか、『リモートや出社など働き方を自由に選べるから』もグラフィック系より伸びた形となりました。
一方、グラフィック系が伸びたのは、能力に関する項目『実務経験やキャリアを積めるから』『専門的な知識・技術を活かせるから』となりました。
会社員クリエイターの現在の仕事の悩みとは?
クリエイティブ業界ではスキルアップのためにも転職が当たり前ですが、ようやく転職課題をクリアした転職先が見つかりしばらくその環境で働いていると、当然新たな悩みや課題が出てくるものです。
そこで、現在の本業の仕事での悩みについても聞いてみました。
最も多かったのは『給料(年収)が上がらない』。続いては『スキルアップできているのか分からない』。
少々残念に感じたのは、『目標となる先輩や上司がいない』が3位にランクインしたこと。
続いて、デジタル系とグラフィック系でも比較検証してみました。
デジタル系のトップは『スキルアップできているのか分からない』。
僅差で『給料(年収)が上がらない』『目標となる先輩や上司がいない』が続きました。
さらに、グラフィック系よりも多かったのは、『仕事の進め方や働き方の考え方が合わない』『仕事の量が多い』となり、社内体制に関して悩んでいるデジタル系クリエイターが多いようです。
前回報告したデジタル系クリエイターの仕事満足度の調査でも、『年収』『スキルアップの機会』『仕事の量』の項目は低く、リンクする形となりました(以下グラフ参照)。
一方、グラフィック系は『給料(年収)が上がらない』ことに強く課題に感じているクリエイターが多く、次に『スキルアップできているのか分からない』とスキルに不安を感じているクリエイターも多いようです。
『クリエイティブに対する会社の評価に納得がいかない』『会社の将来性に不安』といった評価や会社の将来性に疑問や不安を強く感じているグラフィック系クリエイターも多そうです。
前回報告した満足度の調査でも『年収』『スキルアップの機会』『仕事の評価』は低く、リンクする内容になりました(以下グラフ参照)。
クリエイティブ職種は転職が当たり前?
今まで見てきた通り、クリエイターの多くは『実務経験やキャリアを積めるから』という理由で転職をし、新たな環境で経験が蓄積できるとさらに新たなキャリアアップを目指して新境地へチャレンジしていく…というイメージがあります。
では、転職回数はどうなのでしょうか?
今回アンケートに回答した属性を見ると30~40代が大半を占めます(以下調査概要参照)が、意外にも最も多かったのは『1回』でした。
しかし、『3回』『4回』も比較的多く、スキルアップやキャリアアップのために転職をしてきているクリエイターも一定数いることが分かります。
では、デジタル系とグラフィック系で分類してみるとどうでしょうか?
いずれも『1回』が最も多いですが、デジタル系は『4回』『5回』『7回』においてグラフィック系より上回り、なかには『10回以上』というクリエイターもいることが分かりました。
まとめ
デジタル系クリエイター
▼転職の経緯
・企業に直接応募して転職成功している人がグラフィック系クリエイターの倍以上
・SNS採用も多い
▼入社の決め手
・仕事への『興味』と併せて『価値観』に共感して転職をするケースが多い
・働き方のフレキシブルさも重要視している傾向
▼現在の悩み
『スキルアップできているのか分からない』『給料(年収)が上がらない』『目標となる先輩・上司がいない』という悩みを抱えているクリエイターが多い
グラフィック系クリエイター
▼転職の経緯
・求人サイトからの直接応募が多い
・前職の先輩・同僚から誘われ転職するケースはデジタル系より多い
▼入社の決め手
・仕事への『興味』と併せて『能力』に関する項目が多く、スキルアップを意識した転職が多い
▼現在の悩み
上位3位はデジタル系とほぼ同じだが、特に『給料(年収)が上がらない』ことに対して悩んでいるクリエイターが多い
以上、今回は転職の経緯や入社の決め手、現在の悩みなどについての調査結果を報告させていただきましたが、いかがでしたか?
デジタル系とグラフィック系で分類し比較してみるとさらに傾向が分かりやすく、職種の特性が現れているようにも見えました。
その他、年収や労働時間についての満足度や実態についても以下の記事で報告していますので、ぜひ併せてご覧ください。
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