
VR(仮想現実)は、もはや私たちの生活に浸透してきた感がありますが、同時にAR(拡張現実)もよく耳にするようになりました。
VRはすべて仮想であるのに対し、ARは現実空間とバーチャルの視覚情報を重ねられる技術で、その代表例として世界中で大ヒットした『ポケモンGO』ですね。
今回は、アメリカにおいてゲームやアプリ以外の分野で成功しているAR技術のうち、ビジネスでの利用例を取り上げてみたいと思います。
目次
■100名ものARレンズクリエイターとコラボした「スナップチャット」
画像の顔に眼鏡や化粧、動物の鼻などの加工ができることで有名なアプリ「スナップチャット」。
オリジナルのフィルター(レンズ)を作ってシェアが出来る「Lens Studio」を2017年にリリースして以来、さらなる進化を遂げつつあります。
2018年11月に、初めてグローバル・パートナーと手を組み、予算やブランド、ロケーション、地域の枠などを超えたARレンズの「クリエイター」とのコラボレーションを発表しました。100名以上のクリエイターを迎え、30才以下のユーザーに絶大な支持を誇る「フィルター機能」を強化するという計画です。
昨年12月には、何と自分が飼っている犬などにも同時に加工出来る「犬用ARレンズ」まで登場。SNSなどでも大きく話題となり拡散されたりしたことは記憶に新しいですが、今回の大規模なクリエイター起用により、今後もあっと驚くようなフィルターを提供してくれそうです。
クリエイター達が繰り広げる「発想の共演」がどんな化学反応を起こすか楽しみですね。
■企業によって社員の技術研修に採用される「MR(複合現実)」とは?
ARは、企業の社員研修の場にまで導入が広がりつつあります。その中でも、特に技術分野の研修において取り入れている企業が多いと言えます。
2018年に、テクノロジーおよび、製造分野でトップレベルの複合企業であるアメリカの「ハネウェル社」は、ARとVRをミックスした複合現実「MR」を用いた社員研修用シミュレーションツールの発表を行いました。
『リサーチによると、ミレニアル世代はより実験的な学習方法を求めている(ハネウェル社のブログより)』
同社では、研修生に対して実際の現場で「ホログラムレンズのヘッドセット」を装着させ、「デシジョンメイキング」と「パフォーマンスデータ」を捉えることを導く研修を行なっているのだそうです。通常、研修となると人が一から行うものですが、将来的に労働人口が確実に減少する日本の企業における選択肢の一つとして、当たり前の世の中になるかもしれません。
また、ARやMRを使った研修は視覚的な工夫も多く取り入れられることから、クリエイティブ業界においても有益であり、今後盛り上がる分野になりそうです。
■「医療分野」におけるAR活用例と今後
働き方改革に向け、残業が比較的多いクリエイティブ業界でも、社員の健康管理もますます重要になってくる中、ARの活用法として注目されているのが「医療分野」です。研修医の医療訓練を始めとして、診断や治療、遠隔治療などにおいてARの技術が導入されてきており、医師と患者の関わり方にも変化が訪れています。
例えば、医療においてARテクノロジーを活かした装置に「AccuVein」というものがあります。これは「非接触型静脈照射装置」と呼ばれ、簡単に言えば静脈を可視化するためのデバイスです。これによって、静脈を探す手間と労力が大幅に軽減されました。
Infusion Nurses Society Conferenceで発表された調査では、このデバイスによって45%ものエスカレーションコールの減少につながったとのことです。また、外科医などが手術前に切開術などの計画を立てたり、人間では限界がある病状の診断をサポートしたりできるアプリケーションにもARの技術が活かされています。
また、マネジメントコンサルティング会社「Detroit」によれば、医療分野におけるビジネスモデルや医療機関運営でARの存在が今後、さらに多大な影響を与えるだろうと予測しており、それはアメリカでは近いうちに現実のものとなり、日本での導入例も増えていくかもしれません。
■まとめ
このようにARは産業の枠を飛び越え、いろいろな可能性とともに数多くの分野に進出してきています日本のクリエイティブ分野にもさらなる活用が見出され、ARを軸とした新しい製品・サービスが生み出される日もそう遠くないでしょう。今後も、AR最新情報にはぜひとも注視したいところです。