
Webディレクターに必要なスキルは数あれど、中でもヒアリング術の重要性は高いといえます。特にクライアントとの打ち合わせにおいて、しっかり話しているつもりでも具体的に必要なことはヒアリングできていなかった…なんてことがあってはまずいです。そこで今回は、Webディレクターとして本当に必要なヒアリング術について、Webディレクターの端くれである筆者なりの現場で経験した見解を、新米ディレクターの方に向けてご紹介したいと思います。
目次
■ヒアリングでは真に受けてはいけないNGワードがある!
新米Webディレクターにありがちなことといえば、やはり完成した内容とクライアントの完成予想イメージの違いによるトラブルです。
経験豊富なディレクターであれば、過去の実績からクライアントの曖昧なリクエストに対しても自分の引き出しからイメージに近いものをサッと提示し、その場で具体的にできることでしょう。しかし、まだ経験値が浅いと、クライアントの言葉を一生懸命聞くことだけに集中してしまい、打ち合わせでうまくイメージを共有できない場合が多いのです。
たとえば「親しみやすい清潔感のあるイメージで」と言われた時、ぼんやり頭に思い浮かべるものが果たしてクライアントのイメージと合致しているかどうか。実はとってもあやふやです。なぜなら、「清潔感」といっても、「白い、青い、空、シンプル」といったように人によって思い浮かべるものはさまざま。
「清潔感を出すなら青や白をメインに使った方がいいと思いますが、どっちのイメージですか?」と探りを入れるなどして、お互いにイメージするものをどんどん具体的にしていくことを心がけましょう。
■専門用語を使ったヒアリングになってないか?
次にヒアリングで注意したいのが、専門用語の使い方です。
ヒアリングの際に、あまり難しい言葉を使わないように気をつけていても、Webディレクターにとって日常的過ぎる専門用語はついつい出てしまいます。
クライアントがみなWebサイトに詳しいとは限りません。むしろ、Webの知識はなく、知識やスキルを頼って我々に相談しているという側面もあります。
なので、専門用語を使う場合は、意味や使い方などを補足しながらヒアリングすることが大事です。
なお、私は、そういう専門用語を使ってはいけないとは思っていません。なぜなら、クライアントと共有しながら使っていくことで、クライアントもWebサイトに対する意識が増え、お互いに作業も進めやすくなるからです。
ではここで、私の経験から使う際に注意が必要な専門用語の代表的なものをいくつか紹介します。ほんとに、我々にとっては当たり前過ぎるのですが、意外とまだ知られていないものもあるのです。
ワイヤーフレーム(ワイヤー)
ご存知の通り、そのページにどのような要素が入るのか、また、大枠のレイアウトを決めるために必要なものです。
しかし、ワイヤーの必要性はクライアントにはなかなか理解されず、デザインを見ないと分からないとよく言われることも。デザインをする上で、ムダな工数をかけないために必ず必要なことなので、用途・必要性をしっかり理解してもらう必要があります。
また、逆にワイヤーをレイアウトの完成形と勘違いされてしまうケースもあります。
その場合は、デザイン時に変更を加えた箇所について「聞いていたことと違う!」となってしまうことがあります。このケースも、やはりワイヤーフレームの意図がしっかり共有できていないと言えるでしょう。
SEO対策
SEO対策については、クライアントも何となく知っている人も多いという実感はありますが、対策の内容や、対策した結果がどのようになるのか等、知識が中途半端であることが否めません。そのため、ともすると、Webサイト作りに際してSEOを軽視するクライアントもいるのです。
検索上位とそうでないサイトのクリック率の違いを見せるなど裏付けも用意し、しっかり説明できるようにしておくとよいでしょう。また、意外と費用がかかることや難易度が高いケースも多いことも理解させたいところです。
CMS
コンテンツマネジメントシステムの略で、Wordpressなどが代表的。現在では多くのWebサイトで使用されているので、ヒアリング時に話に挙がることも多いと思います。実際、Web知識があまりない担当者でも更新がしやすいので、運用時にクライアント側での更新を想定する場合は、実装を提案する可能性が高いでしょう。
しかしながら、「ではCMSを搭載しましょう」とさらりと言うと、「そんな難しいことはしてほしくない」と予想外の反応をされることも…
Webの知識の少ない方でも簡易的に使える便利なシステムなのに、聞きなれない言葉ということだけでアレルギーが出てしまう可能性があります。どのようなシステムなのかきちんと説明を行いましょう。
■ただの雑談ではなく、考えて、工夫して、「会話」をする
Webディレクターに求められるヒアリング術は、ただ質問して解答を得るようなやりとりではなく、「会話」をするということです。
新米ディレクターがやりがちなのが、あらかじめチェックリストを用意して、その内容を聞けばヒアリングは終了というパターン。それだと、クライアントから聞き出したいことが十分得られない場合があります。
大概のクライアントは、作りたいWebサイトの曖昧なイメージはあるものの、どういうWebサイトにするのがベストなのか、具体的なデザインはどうしたいのかといったイメージは持っていないもの。クライアントのイメージとディレクターのWebサイトの知識・経験を擦り合わせていく事が「良いWebサイト」を作る基本になります。
もちろん、あらかじめ聞く事をまとめてチェックリストにしておくことも重要です。その上で、チェックリストにもない、クライアントのいろいろな思いを引き出して整理してあげる、ヒアリング力が必要になります。
ぶつ切れの質問を繰り返すだけでなく、「会話」をしていくと、クライアントもだんだん思いややりたいことを話してくれます。ディレクターはその一つ一つを整理し、繋げてあげることを意識しましょう。
会話をしながらクライアントからイメージをどんどん引っ張り出し、共通認識を深めていくヒアリング術は、一朝一夕では身に付きません。場数を踏むこと。ヒアリング力を鍛えていくのは、それが一番の近道ですよ!
筆者/Webライターぴえろ
Webディレクター兼Webライター。
フットサル、料理、お酒(特にワイン)が趣味。 イタリアンシェフ、バーテンダーの経験を経て、独学で勉強してきたWeb業界に転職。現在Webディレクターとして活動中。 その他、自身でWebディレクターの為のメディア「webディレクターTalk」を運営、Webライターとしても配信中。