
自由な働き方を求め、フリーランスに転向する人が多いクリエイター。中でもWeb業界は、業界全体が非常に好調であるために業務委託・フリーランスでも活躍の機会が多く、多くのWebディレクター、デザイナー、ライターなどがフリーランスとして活躍しています。とは言えフリーランスにはお金にまつわる悩みも。今回はフリーランスの公的援助として知っておきたい「小規模企業共済」についてご紹介します。
目次
■「小規模企業共済」はフリーランスの退職金制度
小規模企業共済とは、個人事業主のためにある退職金制度です。対象は20名以下の小規模企業の経営者で、そこには「個人事業主」や「フリーランス」も含まれます。それらの人々が会社役員を退任した時や廃業した時などに、あらかじめ積み立てておいたお金を受け取れるという制度です。
正社員から独立を考える時に、ネックになるひとつが「退職金がもらえなくなってしまう」ということ。将来の不安へつながる要因です。それをフォローしてくれるのが小規模企業共済と言えるでしょう。
しかも平成28年4月に改正がなされ、加入時の申込金が不要になったり、分割共済金の支給回数が増えたりと、利用メリットが増えたことで加入を検討する人も増えているようです。
「iDeCo」や「国民年金基金」と大きく異なるのは、共済金を受け取れる時が”事業を止めた時”だということ。これが、小規模企業共済が”フリーランスの退職金”と言われるゆえんです。
■「小規模企業共済」は将来の自分への仕送りになる
小規模企業共済の加入手続きはさほど難しくありません。商工会議所などの委託団体や都市銀行などの代理店にインターネットなどで申込書を取り寄せ、必要書類とともに申し込みます。
掛け金は最低月額1000円からで、500円単位で最大7万円まで自由に選べます。
小規模企業共済の予定利率は現在1%。銀行の金利に比べると高いように思えますが、平成8年4月までは6.6%だったことを考えれば、それほどのお得感はないかもしれません。
しかし、小規模企業共済の掛け金はiDeCoや国民年金基金と同様、”全額が所得から控除”されます。
例えば、年収500万円程度で掛け金を最大の月7万円にした場合、1年間で84万円の控除となり、所得税や住民税の負担が軽減されて「最大50万円程度の節税」が期待できます。
予定利率はさておいて、年間50万円の節税効果を得つつ将来の自分に月々7万円の仕送りをすると考えれば、小規模企業共済の魅力が見えてくるのではないでしょうか。
■小規模企業共済の”メリット”と”デメリット”
メリットのひとつめとして、加入すると一定年齢まで解約できないiDeCoや国民年金基金と違って、小規模企業共済は「解約が可能」です。
また、その他のメリットとして、受け取る際の所得控除があります。
通常、保険などは満期解約で現金を受け取る際、所得とされるため課税されます。しかし、小規模企業共済は「分割受け取りは雑所得」、「一括受け取りは退職所得」となるので控除対象になります。つまり、掛けている時も受け取り時も”節税効果が期待”できるのです。
さらなるメリットに「貸付制度」の利用があります。
目的や用途を問わない一般貸付でも年利1.5%と比較的低金利の上、無担保で保証人も不要。フリーランスは信用という観点で金融機関からの貸付が困難だったり、借りられても高金利だったりすることが少なからず起こります。借金という事態はなるべく避けたいところですが、万が一のセーフティネットを持っているという安心感は保険がわりになるかもしれません。
これに対し、加入から1年未満は掛け捨てになってしまうこと、20年未満で解約した場合、基本的に元本割れとなってしまうデメリットがあります。
しかしながら、1年以上掛けて自分が解約したい時「必ず現金を手にできる」ことは、会社から独立して仕事をしていく上で起こり得る、「どうしてもキャッシュが必要!」といった事態にかなり心強いでしょう。
また、廃業したり事業譲渡した場合などの際には元本が100%戻ってくる場合もあるので、この部分も頭にいれておきましょう。
■「予定利率の運用」における掛け金増減の注意点
毎月の掛け金は、加入中であれば増減が可能です。しかし減額した場合については、その減額分について、それまで支払ってきた部分にも「予定利率の運用がなくなる」ので注意が必要です。
どういうことか一例をあげます。
加入時から5年間毎月7万円支払ってきたけれど、6年目からは5万円に減額したとしましょう。すると、予定利率が運用されるのは”月5万円×12ヶ月×5年=300万円のみ”で、過去5年間払ってきた差額分、月2万円×12ヶ月×5年=120万円については、年利1%が運用されなくなってしまうのです。
これをもったいない!と感じるか、金利のメリットはどうでもいいと感じるかは人それぞれですが、小規模企業共済にこのような仕組みがあるということは念頭においておきましょう。
■まとめ
掛け金の枠がiDeCoや国民年金基金より大きいため、より”節税効果”が期待できること、途中解約は元本割れするが廃業(あるいは譲渡)すれば掛け金は全額返金、ということを考えれば、筆者としては積極的な加入検討をしていいのではないかと考えています。
最大の掛け金月7万円の支払いは大きい……と思うかもしれません。しかし、生活費の先取貯金と同様にもともと「ないお金」と考えてしまえば、意外と生活できたりするものです。
将来の不安があるが故、独立に躊躇している……ということであれば、未来の自分に仕送りするためのこういった制度の知識をぜひお役に立てて欲しいと思います。
小規模企業共済
www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/