
クライアントの無茶ぶりや制作スタッフ内での紛争仲裁はWebディレクターの日常です。多発するトラブルの被害を最小限に抑えられてこそ「プロ」。今回は、現役Webディレクターが実際に体験したトホホなケースを3つご紹介しながら、Webディレクターの仕事ぶりを覗いていこうと思います。あなたにもこんな経験ありませんか……?
目次
■ ケース 1 :システムのクセがすごい
制作スタッフといちばん揉めるのが、他社が作ったシステムの改修業務。 “他人がつくったサイトなんて直したくない”っていうプライドというか、そういう気持ち? を持っているコーダーが多い印象を受けます。
先日も、既存サイトに新機能を加える改修業務で揉めました。サイト構築した制作会社はすでになく、クライアントは更新作業の手順書を持っているのみ、という状況でした。
社に戻り、エンジニアと中を見てみたら後付けされた機能が満載!負荷がものすごいことになっていました。例えるなら、プレハブ住宅に後から壁に穴をあけて、窓を無理やり作り、屋根に煙突と梯子を取り付けた、みたいな状態。しかも機能が複雑に絡みあっているため、使われていないシステムも落とせない。
制作スタッフからは“後付けは構わないが、さらに重くなる”、“動作確認にかなり時間取られると思うから、納期に間に合わせるのは100%無理。…っていうか、このシステムダメダメじゃない?”と大ブーイングの嵐。そっかー、そうだよね……と返事をしながら、そこでどうしたものかと考えあぐねてしまいました。
実は、クライアントからは「軽くしたい」という要望も一緒にもらっていたのです。
そこで考えたのが、現状システムに新機能を後付けするコストと理由に加えて、「システムをまるごと作り直す」という提案書を作りました。特に今回のケースは使っていない機能が実に多く、その反面、クライアントの要望に合致するサイトは非常にシンプルで、全取っかえした方が制作スタッフの負担も少なかったのです。
ということで、全取っかえの見積もりを後付けの見積もりより若干安く出しました。
軽くなるし安いしっていうことでクライアントも納得、制作スタッフもご機嫌を直してくれた。だからOKが出たときは、Good Job私!! って思いましたね
(34歳女性ディレクター)
■ ケース 2 :クライアントのジャストアイデアに翻弄される
システムのことを全く理解していないクライアントほど、システム構築はちゃちゃっとできる簡単なものだと思っている傾向があると思います。写真1枚差し替えるのなんて、15秒くらいでできると思っているんじゃないですかね。
でも、そういうクライアントから届く画像はなぜか、たいてい大容量で大量。ダウンロードの時点から時間を取られるんですよ。この前などは“この前渡したものより、こっちの画像の方がいいと思うので、この中から選んでください”と言われ、画像をダウンロードしたら約20分かかりました。フォルダには、お約束の大容量画像が200枚以上入っていました。全部見ろというのか……と絶望的な気分になりました。
また、デザインを固めた後、すでに制作が始まっているのに、急に“もし、リンクボタンをもうひとつ付けたらどうなりますでしょうか?” とか、“今このサイトが人気のようで、この方向性の要素も入れてください”など、しれっとメールベースで指示出しするクライアントも少なくないです。
こういうケースの場合、“納期と見積もりが変わりますが、これは決定事項ですか。すぐに見積書を作成します。間違いがあるといけませんので、現状の制作はストップさせます”と返すようにすることにしました。そうすると、すぐにひっこめる人が多い。ただ思いつきで言っているだけなんですよね。
そういう方はたいていこっちが全部言いなりになり、制作スタッフにすら頭を下げてやってもらっても仕上がりの段階で、またひっくり返したりするんです。
(38歳男性ディレクター)
■ ケース 3 :エンジニアとデザイナーの仲が悪い
デザイナーがつくった絵をエンジニアに“できない”と言われるのがいちばんキツイですね。
新人のころは、デザインを先にクライアントに見せてしまいOKをもらってしまっているのに、エンジニアが拒否ということをやらかしたことがあります。
今は、まず絵を見せるのはコーダーです。クライアントから、既存の別サイトを例に“これと同じようなものを作りたい”と言われた場合も、そこで即答せずに、コーダーに“このシステムのソースって簡単?”、“どんな環境条件が揃うとできる?”などと相談します。
基本的に、デザイナーはコード無視でデザインをつくるので、エンジニアが怒るという場合が多いです。そして、デザイナーも自分の絵には自信とプライドがありコーダーをちょっと見下しているところもある。だから、私は基本的にコーダーの機嫌を取り、愚痴や意思に一番寄り添うようにしています。そして、デザイナーの悪口が出たら“クライアントの意向なんです~。”と、クライアントを悪者にしてしまいます(笑)。
クライアントには申し訳ないけど、現場スタッフと円滑に仕事をする上では“いない人”をヒールにするのが一番よい方法なんです。
(40歳男性ディレクター)
■ Webディレクターが円滑に進めるためにする仕事のコツ
Webディレクターがよくやるコミュニケーション術のひとつとして、“クライアントにはWebのスペシャリストのように振る舞い、エンジニアにはWeb音痴を演じる”というものがあります。
クライアントの発言や要望をそのままエンジニアに伝えるだけでは、ただのトンネルです。場合によっては、クライアントを説得する必要もあります。毅然とした態度を取るためにも、クライアントには“Webの最前線を理解している人”として映らなければいけません。そのためには、当然知識も必要となってきます。
一方で制作スタッフには、絶対に“上から目線”にならないこと。
特にエンジニアは、プロ意識もプライドも高い人が多く、自分より能力の低い人間に生意気な態度を取られると何も教えてくれなくなります。
制作のバッググラウンドが多少あったとしても、Web業界は常に進化し続けていますから、”あなたの知識はすでに古い”という可能性も高いのです。謙虚な態度の心がけとコミュニケーションはスムーズな業務のため、そしてディレクターには必須スキルなのです。