
経済発展著しいシンガポール。中心部には高層ビルが建ち並び、年間1500万人にものぼる観光客を魅了する様々なアトラクションに溢れ、東南アジアの中では突出して近代的イメージがある都市国家です。
そんなシンガポールですが、洗練された中心部、静かな郊外の住宅地問わず、「広告」と言う面では、東南アジア独特の「派手で目立つ広告」が多数を占めています。見る側を考えさせるとか、抽象的でイメージ優先の広告ではなく、とにかくパッと見てわかりやすいのがシンガポールの広告の特徴だと言えます。
目次
■視覚や聴覚に訴えるメガ広告が街中の至るところに!
写真は、ショッピングの中心地、オーチャード駅直結のショッピングモール内にあるエスカレーター。
2階分の長いエスカレーターを挟むように、両壁面に巨大な広告が展開され、壁に埋め込まれたテレビからは商品のプロモーションビデオが大音量で流れています。
エスカレーターに乗っている時間は20秒ほどですが、スマホに目を落としている人も多い中、あまりの音量に思わずみんな目が広告に行ってしまいます。天井一面の照明は常に色鮮やかに変化し、まるでアミューズメントパークに来たような感覚になり、そういう意味でも強く印象に残る広告です。
こちらの広告は約1か月ごとに差し替わります。新しい広告に替わっていると、ついこのエスカレーターに乗ってみたくなります。
お洒落ではないですし、デザイン的にも特徴はありませんが、消費者の興味を引くと言う広告の原点に特化していると思います。
こちらはビル壁面を大きく使ったルイ・ヴィトンのメガ広告。内容はシンプルながらその大きさに思わず目が留まります。
■公共の交通機関は絶好の広告媒体!バスやタクシーを使った広告
シンガポールでは車体全面を使ったラッピング広告をよく見かけます。車体の前後左右だけでなく、上部にも広告を載せて走っています。
バスやタクシーが安価なので、その数は日本に比べると非常に多く、特にバスはイギリス占領下の影響を受けてか2階建てタイプも多く走っているので、車体全面を利用した広告はインパクトも当然大きくなります。
観光客が全面広告のバスにカメラを向けている姿もよく目にするので、シンガポールの名物の一つとなっているのだと思います。
■治安が良い=犯罪がないわけではない。住民に近隣の治安状況を伝える看板広告
治安が良いと言われるシンガポールですが、空き巣や万引き等の軽犯罪は身近な所でも頻繁に起きています。
こちらは万引き防止のために設置された広告看板。「万引きは犯罪です」と日本にもあるコピーが大きく書かれたこの広告は、シンガポールのいたる所で目にします。
(余談ですが、実はこの広告の警察官は現職の警察官で、容姿が良いと評判が立ち、シンガポール女子の人気の的となりました。彼が結婚した時にはニュースにもなったほど!)
“2016年1月以来、万引きで2人逮捕”
スーパーの入口に置かれているので、犯罪抑止にもなっています。
こちらは犯罪告知のみのお知らせ。
“オーチャードでは、2016年1月から9月までで、221人万引きで逮捕”
逮捕者が出た店舗近くや周辺エリアにある看板には、「犯罪告知」として、犯罪内容や日時が明記されるのがこの看板の特徴。住宅街などで空き巣や強盗があった場合にもこのお知らせ看板が立ちます。これによって住民の防犯意識向上を狙っています。
■国民への啓蒙広告がプロジェクト化しているのもシンガポールならでは
こちらは、文化庁に属するMinistry of Culture, Community and Youthという機関が創立した「Singapore Kindness Movement(シンガポール親切運動)」の広告です。
説明には「私達はただ見ているだけ、動画を撮るだけと言う行動も取れる。同時に一歩踏み出して騒動を収める事もできる。シンガポールを親切な国として輝かせるかどうかは、私達次第です」とあります。
シンガポール国民としてのプライドに呼びかけているところにシンガポールらしさが出ています。
つい最近ですが、フードコートでテーブル清掃の方の手違いに対して、大声で罵倒する女性の動画が話題になりました。罵倒された清掃の方が聾唖者だった事もあり、特にその女性に非難が集まったのですが、同時に「動画を撮るよりもその場で直接言うべきだったのでは?」との意見も多く見られました。
この様な話題を素早くキャッチして、的確な啓蒙活動を広告として展開できるのも、とてもシンガポールらしいと思います。
こちらは地下鉄会社の広告。
思慮深い行動キャンペーンの一つとして、降りる人を優先しましょう、とマナー向上を訴えています。
マスコット的なキャラクターがシンガポールの典型的な中年女性っぽいのがミソ。
国民の内訳が中華系、インド系、マレー系と入り混じるシンガポールでは、文化的に派手で目立つ広告が好まれる上、総人口の約25%が外国人(うち、メイドや労働者が55%を占める)、年間観光客が1500万人を超えるという背景からも、言葉遊びやひねりの効いた広告よりも、文字が読めなくてもわかりやすい広告が主流のようです。