【BGM5選】「怖いもの見たさ」が運の尽き!? まったく作業がはかどらないBGMをご紹介します!

「仕事がはかどるBGM」はたくさん存在していますが、それと同じくらい「作業がはかどらないBGM」も存在します。今回のコラムでは、フリーランスでデザイナーを営む傍ら、週に2回ほどミュージックバーで働き1日10時間ほど選曲をしている筆者が、作業中はおろか、バーですら流せない音楽を紹介していきます。ちょっとした息抜きの面白ネタとしてお楽しみいただければ幸いです。

 

1. ヤーヴォル・ラースロー『Gloomy Sunday』

1曲目は都市伝説好きな方にはお馴染みの楽曲、ヤーヴォル・ラースロー作詞、シェレッシュ・レジェー作曲の『暗い日曜日(Gloomy Sunday)』です。

歌詞の内容は、ある女性が亡くなってしまった恋人のことを嘆き悲しみ、最後は自ら命を絶ってしまうといったことが歌われています。

このような、いわゆる「失恋ソング」はたくさん存在していますが、本曲は発表後に欧州や米国のリスナーのなかで自殺者が多発し、BBC(英国放送協会)では放送禁止局として指定されたほどいわくつきの1曲です。とくにハンガリーでの自殺者数は群を抜いており、その数なんと200人超。都市伝説化するのも頷けます。

とはいえ、美輪明宏や浅川マキなど、日本人にもカヴァーされていますので、曲の効能・効果についてはオカルトの類であると断言できるでしょう。しかし、陰鬱なメロディーとリズムはまさに『暗い日曜日』と呼ぶに相応しい節回しです。仕事がはかどらないだけでなく、日曜日に聴くと「明日から月曜日か……」と軽い絶望を味わえますよ。

参考動画
https://www.historicmysteries.com/gloomy-sunday-suicide-song/

 

2. ジョン・ケージ『0’00″』


お次もその筋では有名人、ジョン・ケージの『0’00″』です。彼の作品としては『4分33秒(4’33″)』のほうがポピュラーではありますが、こちらもなかなかのもの。タイトルこそ『0’00″』ですが0秒で曲が終わるわけではありません。「独奏として、誰が何をしてもよい」と記述がされており、演奏者は字を書いたり、ヴァイオリンを磨いたりと日常的な行為をし、そこから生じる音をもって「演奏」とします。

「誰が何をしてもよい」と記載されているものの、厳密には演奏者自身が習熟した行為を行うことが重要で、さらに次の「演奏」をするにあたっては、以前の演奏と同じ行動・行為をしてはいけないといった決まりもあります。つまりBGMにすらならなず「はかどるとかはかどらない以前の問題である」という凄さから選曲の運びとなりました。

ちなみに実際の曲はどうなっているかというと、それらの音を増幅させながら大音量で鳴らす形式がとられます。

 

3. ジェム・ファイナー『Longplayer』

前曲の『0’00″』と違い、意外と聴けてしまうのが『Longplayer』です。一種の環境音楽、アンビエント的なテイストなので、「意外とはかどるのではないか?」と思ってしまうかもしれません。

しかし!
この曲の演奏時間はなんと「1000年」。コンピューターがアルゴリズムを用いて音の処理をおこない、ベースとなっている音のバリエーションを演奏し続けるという仕組みになっています。演奏時間の長い曲で有名なものですと、先程登場したジョン・ケージの『オルガン2 / ASLSP』も639年と桁違いではありますが、本曲には敵いません。しかも『Longplayer』は演奏終了後にリピートされ、1000年もの間、ひたすら流される予定だそうです。

2001年1月1日に開始された演奏は未だに続いており、とりあえずの終演は2999年末。「あと900年以上続くのか……」と思ってしまったが最後、永遠に続くかのような締め切りとリンクし、テンションも落ち、どう考えても仕事になりそうにありません。

 

4. カールハインツ・シュトックハウゼン『ヘリコプター弦楽四重奏曲』


『ヘリコプター弦楽四重奏曲』は現代音楽作曲家、カールハインツ・シュトックハウゼンが作曲した弦楽四重奏曲です。その名の通り、4台のヘリコプターにヴァイオリン(2名)、ヴィオラ(1名)、チェロ(1名)が乗り込み、ヘリのなかで演奏した音と映像をコンサートホールへ中継します。

本曲は、作曲の締切を延ばし続けていたシュトックハウゼンが、ある日「ヘリコプターに演奏者が乗って旋回しながら演奏をする」という夢を見たことから着想を得て制作されたそう。弦楽の調べだけを取り出すならば美しいのですが、いかんせん「ヘリの轟音」がミックスされてしまい、作業中に聴くには明らかに不向きでしょう。

ですが、「工事の音を聴くと、作業がはかどるんだよね。」という人にはもってこい!? の楽曲かもしれません。

 

5. エリック・サティ『ヴェクサシオン』

世界的に有名なピアニストであるエリック・サティも、作業をしながら聴くにはやや辛い楽曲を発表しています。タイトルである『ヴェクサシオン』ですが、これを日本語に訳すと「嫌がらせ」。まさに本コラムに相応しい1曲ですね。

ちなみに1963年に初めて演奏が行われましたが、その演奏者の1人は、本コラムでも何度か登場したジョン・ケージです。日本での初演は1967年、12月31日より年をまたいで実に15時間以上にも及ぶ演奏が行われました。

この曲は、「不穏で不安定な旋律」からなる1分程の曲を840回繰り返すことが必要で、演奏時間は18時間〜25時間といわれています。短いフレーズを繰り返す曲は、得てして一定のリズムが保たれるので作業がはかどりやすいものですが、この曲に関してはプレイヤーや聞き手の中に幻覚症状を起こす人々もいるらしく、長時間聴き続ける場合は注意と覚悟!? が必要です。

 

まとめ

今回は、ちょっとした息抜き(嫌がらせ?)として「作業がはかどらないBGM」をご紹介させていただきました。どの曲もまったく作業がはかどらない楽曲ばかりですが、「作業がはかどらない」=「悪い曲」というわけではないんですよね。どの曲も音楽的に見れば素晴らしいものかもしれません。そして、いろいろな意味で考察の余地があるものばかりですので、怖いもの見たさという感覚で一度は聴いて見るのもよいかもしれません。意外にはかどる!! という人がいるかも!?

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