
デザイナーや編集、コピーライターなど、専門スキルを武器として働くクリエイター。様々なアイデアを駆使して新しいものを創りあげていく仕事ですから、「集中力」や「情報管理能力」の高さが必要になると考える人も多いでしょう。たしかにクリエイティブ業界には、「集中すると、周りの音が一切耳に入らなくなる」「記憶力が良くて、一度耳にしたことなら大体何でも覚えている」といったハイパフォーマーも多いような気がします。
しかし、ノースウェスタン大学の最新の研究では、注意散漫な人ほどクリエイティブであるという、真逆の結果が出たそうです。今回はその興味深い内容についてご紹介します。
※なお、この記事は研究結果からの1つの見解です。
すべての「注意散漫な人」=クリエイターに向いている、あるいはその他の性格の方は向いていないと限定する内容ではありませんのでご注意ください。
目次
■調査内容
ノースウェスタン大学の調査チームは、100人を対象に「感覚ゲーティング」と呼ばれる脳が不必要な情報をフィルタリングする動きのテストを行いました。
また、被験者にはこれまでのクリエイティブの業績をアンケートで報告してもらうと共に、「限られた時間の中で、1つの問いに対して可能な限り多くの回答をしてもらう」という筆記テストも実施。その回答数と、斬新だった回答の数をそれぞれ集計し、divergent thinking(発散思考)のレベルを数値化することで、独創的な認識力や多様な思考力を測りました。
※発散思考とは、論理や根拠に固執せず、あらゆる視点から答えを導き出そうとする考え方のことをいいます。
■データの分析結果
調査内容の分析したところ、クリエイティビティの高い人のほうが、感覚ゲーティングにおける情報漏れがあることが分かりました。
日常の無関係な知覚情報、いわゆる「雑音」をシャットアウトできない人ほど、現実世界におけるクリエイティブな業績が高かったのです。また、そういう人は振り分けなどの作業を苦手とする傾向もあったとのこと。
つまり、クリエイティブな人ほど注意力が散漫で忘れっぽいという可能性が示されたことになります。
ちなみに、テストのスコアが高かった人は学校のテストの点数も高いという相関関係があり、多様な考え方ができる人は情報のフィルタリング能力も高いことが判明しました。「多様な考え方ができる=クリエイティビティが高い」というわけではない、と示されたことにも大きな意味があったと言えます。
■調査チームの考察
この研究を行ったDarya Zabelina氏は、「クリエイティブな人は、日常の中の一見無関係と思われる知覚情報を簡単にフィルタリングできないからこそ、無意識のうちに広い範囲の情報を感知し、頭の中のアイデアと上手く融合させてクリエイティビティを発揮しているのではないか」と考えているそうです。
たしかに、クリエイティブな人の代表格であるデザイナーの方は、趣味に絵画展や美術館巡り、写真撮影などを上げるケースが多く、あるいは街中に溢れる様々な広告や流行にアンテナを張っているため、普段から大量の情報に触れているでしょう。自身の経験から、後輩のデザイナーやクリエイターを目指す学生に、様々なクリエイティブを目にするようアドバイスしたことがある方もいると思います。
そして、その大量な情報を、脳内ではすべてを管理・把握することができず、自然と感覚ゲーティングにおける情報漏れが起こりやすくなっている、という流れも想像できます。
■「集中力」や「情報管理能力」はクリエイティブとは別問題…かも
ここまで読んで、「まさに自分のことだ!」と思われたデザイナー・クリエイターの方も、かなり多いのではないでしょうか。
また、日頃から「すぐに集中力が途切れてしまう…」「情報過多になりすぎて、頭に入れたはずの内容をすぐに忘れてしまう」などという悩みを抱えている方も、きっと少なくないはずです。
ですが、今回ご紹介したアメリカの研究結果を踏まえると、上記のような方もそこまで悲観することはありません。「集中力」や「情報管理能力」は、クリエイティブスキルとは切り離して考えられるからです。むしろ注意力散漫で忘れっぽい人は、豊富な情報から斬新なアイデアを生み出すことができる、クリエイティビティの高い人材である可能性が高いとも言えます。
たとえ不注意で何かミスをしてしまったとしても、反省することは反省しつつも、「自分はこの仕事に向いていないかもしれない」などと落ち込みすぎず、こんなときこそ、自分のクリエイティブセンスの高さと未来の可能性を信じて前向きに仕事に取り組み、挽回を図っていきましょう。
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