海外のクリエイティブ事情~イスラム教の国でクリスマスの広告?”ショッピングホリック”が集まるドバイ

真夏のビーチにクリスマスツリー。平均気温25度前後の12月のドバイでは、よく見る光景です。世界唯一の7つ星ホテル、世界最大のショッピングモール、ラグジュアリーなホテルでもクリスマスツリーは堂々と、しかもわりと派手に設置しています。週末のビーチやレストランでは、サンタクロースが大きなプレゼントの袋を持って子どもたちに配り、またカフェやモールでもクリスマスグッズやクリスマス限定メニューが並び、観光スポットもクリスマスに染まります。
でもドバイはイスラム教の国。なぜでしょうか。

 

多様な文化と宗教が共存する、イスラムの先進都市ドバイ

ドバイがあるアラブ首長国連邦の国教は、一神教のイスラムです。
なぜイスラムの街で「クリスマス」がお祝いできるのか。それは決して、この街のイスラム信者の信仰心が中途半端であるからではありません。ドバイという街は人口の8割が海外移住者で成り立ち、キリスト教やヒンドゥー教の信者がとても多いからなのです。
10月にはハロウィン、11月にはインドのDiwali、12月にはドバイ建国記念とクリスマス、1月には中国の春節など、冬は毎月イベントがあり、そのたびに街はイベント色で賑わっています。

 

12月の建国記念日から徐々にクリスマスモードに!

12月2日のUAE建国記念日が1年で最も盛り上がるドバイ。その流れで街のイルミネーションから週末のマルシェ、音楽フェスなどクリスマス関連の催し物が目白押しとなります。

クリスマスがだんだん近くにつれて”Ugly Christmas Sweater”を着た西洋系のビジネスマン、トナカイやサンタの帽子をかぶった子どもたちも街に溢れ、その光景をガンドゥーラやアバヤの宗教服をまとうエミラティ(現地人)たちは寛容に見守るというスタンスが成立しています。
こういった多文化への理解や寛容さは、ドバイならではだと思います。

もちろん世界最大のショッピングモール「ドバイモール」もクリスマス一色。
MARKS&SPENCERやVirgin Radio、REISSやHamleysなどなど女性向けのジュエリーショップから子ども向けのおもちゃ屋さんまで、モール全体にクリスマスグッズが並びます。
もともとイギリス領だったドバイは、広告主もイギリス発祥のブランド勢力が強い印象。しかもこの広告たちは、実は、クリスマスが終わってからが勝負なのです…!

 

実はクリスマスが過ぎてからが本番!?

毎年12月末から1月末までの1ヶ月間、ドバイでは「ショッピングフェスティバル」を開催しています。クリスマスの時期に広告で宣伝した品々を、このショッピングフェスティバルで一気に売りさばこうという狙いがあるようです。

この時期は暖かい冬を求め世界中から観光客がやってきて、1年で特に滞在人口が増える時期です。特にヨーロッパまで飛行機で6~8時間の距離にあるドバイでは、西洋人が目立ちます。
また、年末にロンドンとNYに続き世界3大のカウントダウンイベントが開かれ、それを目当てにやってくる観光客も多いです。

世界最大のショッピングモールに実質隣接された世界一高いブージュ・カリファは、昼間は展望台などで楽しめ、夕方ころからライトアップに合わせて、これまた世界一高い噴水ドバイファウンテンのショーが30分毎に見られます。
そしてメインのカウントダウンには、カラフルなレーザーや花火が打ち上げられ、その数は、実にギネス記録にも登録された6分間に50万発。世界で最も高い位置であがる花火を見ようと、100万人以上が集まると言われています。
ブージュ・カリファだけでなく、ドバイではその他3〜5カ所で花火があがり、カウントダウンへのエネルギーの注ぎ方は一見の価値ありです。

もう1つ、ドバイの大きな特徴は、ショッピングホリック(買い物中毒者)に嬉しいTAX FREEの国であること。
物にもよりますが、ファッションブランドから電化製品まで元値が安く、さらに50-70%オフとなるこのシーズン。世界中から集まってくる観光客たちの目をいかにひくかが企業の勝負どころ。もちろん、エミラティ(現地人)もそのターゲットにあることは変わりなく、実際、観光客だけでなくエミラティも大きな荷物を抱えて街を歩いている姿をこの時期よく見ます。

 

他宗教・多文化に寛容な姿勢と、商業的利益の算出は、表裏一体

初めてドバイのビーチを訪れた時、ビキニ姿の若い男女の横で、ブルキニという全身を纏った水着を着たイスラーム系の家族がひとつのビーチ、空間を共有していることに多くの人が驚くと思います。
それは一見、一神教で厳格な信者が多いイスラムの街でありながら、他宗教・多文化を理解する姿勢や寛容な心を持つ、平和的な光景のようにも見えます。
しかし実際には、国籍で職業を分けたり、エミラティに手厚く優遇される公共施設や制度があるなど、格差社会の側面も目立ちます。

そんなドバイでしたが、オイルショック以降から商業的利益になるものは宗教を超えて取り入れる姿勢が目立ち始めました。ドバイの他宗教や多文化に寛容な姿勢の裏には、実は商業的な理由が見え隠れしているのかもしれません。

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