《デザイナー編》クオリティを高め、スムーズに仕事を進めるための「クライアントの発注方法」はこうだ!

本コラムでは、クライアントがデザイナーなどに発注する際、イメージ共有や制作物の最終的クオリティーを高めるための発注手段のコツや指示方法などをご紹介していきます。また、デザイナーがこれを再確認することにより、クライアントを上手に誘導し、スムーズな仕事の流れや、自分の仕事をスマート化する手段として知っていただきたいと思います。
ちなみに筆者はデザイナーですので、受ける立場として「こうしてもらえると有り難い」といった話も進めながら、相互理解の助けにしていただけると幸いです。

 

受注が確定する前の「発注側」の注意点

まず、発注の前段階として仕事の依頼をしますが、連絡を取る前に最低限の情報は用意しておくべきです。

情報量は制作物により変化しますが、例えば、一般的には情報の少ない「名刺制作」を仮定すると、

・どんな制作物を作るか
・予算はどのくらいか
・納期はいつまでか

などは最低でも確定させておくと、デザイナーも返答がしやすいです。
そして、なるべく

・制作物 → 名刺(3名分、新規でデザイン)
・予算 → ◯◯万円(デザイン料、印刷代込み)
・納期 → ◯月◯週くらいまでに納品希望

というような具体的な提示をするとよいでしょう。
また、作業依頼前に見積依頼をしたい場合は、より実際の金額に近づけるためにも、作業範囲を確定させると正確性が上がります。

これがWebサイトなどになると必要項目は大幅に増えます。
通常は制作側からヒアリングが入りますので、質問・確認事項を提示されたときは、曖昧な表現はなるべく避けることがスムーズな受発注を進めるポイントとなります。

また不明点に関してはわかるまで質問し説明してもらいましょう。
未定項目は憶測で答えず未定である旨、またいつくらいになったら項目が確定するかなども伝えると相手の仕事にも無駄が出ません。

 

どんなイメージで作りたいか、なぜ作るか、どのような効果を得たいのかをはっきり伝える

その後、受注成立した場合、さらに細かいところをつめていきます。

現在は様々な打ち合わせシーンが想定されますが、いずれにしても「どんなイメージで」「なぜ作るか」「どのような効果をもたらしたいか」をできるだけ掘り下げ可能な限り具体例をあげて伝えると、制作サイドは内容や期間などが明確になりやすく、進めやすくなります。

「どんなイメージで」については、「柔らかい感じ」、「高級感のある感じ」といった抽象的な表現はイメージに幅がありすぎるので、一緒に自分のイメージに近いパンフレットや商品、色、写真などを見せるのもよいかと思います。具体性が高いほどイメージが湧きやすくなり、お互いの感覚のズレを防げるのです。
ですが「◯◯と同じで」といった表現は誤解を招くことが多いので、せめて「◯◯のような感じで」と伝えるのが良いでしょう。

イメージが湧かない場合は無理やり伝えるのではなく、一任したり相談することも必要です。ある程度経験を積んだデザイナーならば、問題解決に繋がる的確なイメージや方向性を提示できることも多いのです。デザイナー側も相手が伝えやすいよう、イメージが湧くように提示することが大切です。

「なぜ作るか」に関しては通常、集客や認知度アップなどがありますが、さらに踏み込み「なぜ集客したいか」や「なぜ認知度を上げたいか」を伝えられると、色使いや展開など、デザイナー側の提案もより踏み込んだものになり、双方のメリットにもなります。

「どのような効果を得たいか」も同様に、数値で表せるくらい具体的だと話の展開が早くなります。数値とは別に、受け取り側がどのような気持ち、どんなアクションを起こしてほしいかなどもオリエンテーションしておくと理解が一層深まります。

 

イメージ共有のために無料で利用できるWebサービスを使うのも手

現在はPinterestなどを使って、簡単に画像をクリップし、ボード状に並べて閲覧することができます。

参考URL: https://www.pinterest.jp

このようなイメージ共有のツールは、社内において複数のチェックが入る場合、発注前に用意しデザイン的な方向性を決めておくと、後で二転三転しにくくなります。特に決済権を持つ方まで何人か入るような場合、結局伝言ゲームのようになってしまい、いつまでも修正が終わらず、負のスパイラルに突入してしまいがちです。

本来、言葉でデザインや感覚を伝えるというのはプロでも難しいものです。デザインの能力に長けていても、感覚的なそれを言語化し伝えるのはまた別であり、イメージ共有をする際には文字や言葉だけではなく画像や動画などを用いて、感覚のズレを減らす作業が重要なのです。これはもちろん発注者も同様のことです。

 

「大きく、小さく」ではなく「mm、ptなどで具体的に」

次に、初案が上がって来た場合の修正指示方法についてよくあるのが
「もう少し大きく」、「ちょっとだけ小さく」、「この赤をやや薄く」、「写真を明るめに」
などの曖昧指示です。

「少し」や「ちょっと」などの言葉は、人によりかなりの違いがあるので使わないのがベターです。デザイナー側も具体的な指示への誘導をしてあげ、要らぬ修正でむだな時間を省くためのスキルを磨きましょう。

「もう少し大きく」は「◯◯mm程度」、「この見出しの大きさくらい」などの表現がわかりやすいでしょう。
また、色の指示も「明るく」、「暗く」ではなく、一番確実な色見本番号と言いたいところですが、色見本がないクライアントもいると思うので「◯◯のような赤」や、画像などを使用し伝えると食い違いが起こりにくくなります。

 

「こうして欲しい」ではなく「どうしたらいいか?」と訊く

デザイナーが提出したデザインを見た時に、「ちょっとここをこうしたい」と感じた場合、そのまま伝えるとその通りにしかできません。

指示以外にも「こういう感じもどうでしょうか」と別案を提示してくれる優秀なデザイナーもいますが、複数案件が同時進行している繁忙期だとそうもいきません。
クオリティーを高めるには「こうして欲しい」ではなく「このようにしたいのだけれど、どうしたら良いか?」と問いかけることが重要です。デザイナーは「こうしたい」に対する明確な答えを持っていることが多いのです。

 

デザイナーを信用し任せてみる

デザインには「なぜそこにあるか」「なぜその色か」一つひとつ理由があります。
ですから、上がったデザインに疑問が生まれた場合「ここはなぜこうなのか?」と尋ねてみるとよいです。デザイナーもきちんと理由を説明してくれるはずです。鋭い指摘であれば「この相手には手を抜けないな」と気を引き締めるはずです。

もちろん、ただ任せるだけではなく「なぜ」を潰していくと、デザイナーも見つけられなかった問題点に辿り着くこともあります。結果としてクオリティーも高くなり、基本は任せて疑問、不明点は確認することをおすすめします。

 

まとめ

端的に言うと、とにもかくにも「具体的」な例や数値を使って提示・指示するのが何より大切です。曖昧指示は曖昧な結果しかうみませんし、それが続くとコミニケーションも曖昧になってしまいます。
もちろんこの「具体的」は受発注者の双方です。「相手のことを考え、伝わるように説明する」という、基本的なことですが意外と忘れがちで、できていないことが多いのです。

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