海外のクリエイター・クリエイティブ事情特集・第3弾は、今EU離脱で揺れているイギリスです。
イギリスでは、デザイナーやクリエイターになる第一歩として特徴的なインターンシップ制度があります。今回は、このインターンシップ制度とネットワーキング術をご紹介します。
産業革命時代にジェイムズ・ワットやイザムバード・キングダム・ブルネルなど、今もなお歴史に名を残す偉大な発明家や技術者を生み、現代でもファッション・デザイナーのポール・スミスやヴィヴィアン・ウェストウッド、映画監督のガイ・リッチーやダニー・ボイルなど、次々に革新的なクリエイターを輩出するイギリス。
なかでもロンドンは、数百年の歴史あるレンガ造りの建物や倉庫を改装したデザイン事務所があったり、ガラス張りで吹き抜けの天井がある現代的なビルに建築事務所があったりと、歩くだけでもクリエイターのインスピレーションが湧く、アートの宝庫です。
目次
■クリエイターの登竜門！イギリスのインターンシップ制度とは？
一流のクリエイターになるためには大学や専門学校での勉強だけでなく、実務を学ぶ修行期間が必要です。そのため、イギリスでは在学中に学生のための積極的な就業体験＝インターンシップが行われています。
イギリスのインターンシップは日本とは形態が異なり『ワーク・プレイスメント』や『ワーク・エクスペリエンス』と呼ばれます。
『ワーク・プレイスメント』はチャリティーなど一部の特例を除き、基本的に有償です。
勤務先の探し方は、専門学校や大学に寄せられる求人広告やメディア／アート／デザイン／ファッションなど分野別のインターン生向け求人サイトから探す、学生自ら希望雇用先へ直接コンタクトする、などの方法があります。
就業期間としては、数週間のものから、通常3～4年間に渡る大学生活のうちの1年間を『ワーク・プレイスメント』に充てるカリキュラムが組まれているサンドイッチ・コースまで様々です。
一方、『ワーク・エクスペリエンス』は、直訳すれば「就業体験」であるように短期のものも多く、在学生のみでなく卒業生の実務経験期間として利用されるケースもあります。
いずれも『CV』と呼ばれる履歴書のほか、自分の作品をポートフォリオとして送り、面接を受けて合否が決まります。また、中には低賃金や無償のケースもあり、あのアレキサンダー・マックイーンが2013年にランチ・クーポンと交通費のみを支給する11ヶ月間のインターン生を募集したところ、大学関係者から強い抗議を受け、広告を取り下げるとともに関係者に謝罪したという”事件”もありました。
無名のクリエイターの卵たちにとってインターンシップは人気デザイナーや有名企業で腕を磨く絶好のチャンスであり、働きぶりが認められアシスタント本採用につながる可能性もあります。実務経験を積みつつ自らの適正を見極めることができるため、イギリスではよく利用される制度です。
今をときめくスタイリストで雑誌『LOVE』の創始者兼編集長であるケイティ・グランドも、あのキャサリン・ハムネットの下で『ワーク・プレイスメント』を行ったそうです。
筆者自身もロンドン・カレッジ・オブ・ファッションでプロモーション・メディアを専攻時に、大学の掲示板で見つけたアパレル会社のインターン募集広告に応募し、働いたことがあります。日本でいう銀座のような高級ショッピング街であるボンドストリートで、バイヤーの来社時にはショールームを案内したり、モデルが商品を着て見せる簡単なファッションショーの手伝いをしたり、商品管理のお手伝いをさせてもらい、海外での貴重な経験となりました！
■人種のるつぼロンドンで繰り広げられるネットワーキング
世界中から優秀で個性的な才能が集まる多様性・国際性も、ロンドンの特徴です。
ロンドンに集まる学生やクリエイターたちはまさに人種のるつぼで、ロンドンは他国のどの主要都市とも違う、自由で開かれたコスモポリタンな雰囲気を醸し出しています。
アートやデザインの発信地・東ロンドンや、メディア関連会社が多いソーホーなどにあるお洒落パブやヒップなバーでの思いがけない出会い、個人宅やオフィスでのカジュアルなパーティーでの異業種交流、クリエイター関係者のイベントやワークショップ(代表的なものは『It’s Nice That』、『Glug』など)での人脈作りなど、いつもどこかで何かが起こっているワクワク感が街中にあふれています。
このように、インターンシップ制度で磨かれた若い感性が、ロンドンならではのネットワーキングによって活かされることで新しい才能として花開き、ロンドンのカルチャーシーンをさらに盛り上げているようです。
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