【ちょっと一息。趣味の教室】感性を刺激する映像体験~クリエイターなら観ておきたい映画

クリエイターなら観ておきたい映画

趣味の部屋・映画紹介の第2回目。今回は、クリエイターの方の感性を刺激するであろう”少し変わった”映画をご紹介します。お馴染みのエンターテインメント映画とは違った表現の映画ですので、中には苦手意識のある方もいるでしょう。しかしどの作品も根強いファンがいるものばかりですので、好奇心を奮い立たせて覗いてみてはいかがでしょうか。


 

Dr.パルナサスの鏡

(監督:テリー・ギリアム 出演:ヒース・レジャー 2009年 イギリス/カナダ)
映画製作に中途で頓挫する話は付き物ですが、テリー・ギリアム監督の名を聞くと様々なエピソードが思い出されます。
「モンティ・パイソン」の名前を聞いたことがある人も多いでしょう。過激なブラックユーモアが看板の英国BBC製作の伝説的番組です。ギリアム監督はこの番組でアニメーションを担当していた才人です。

映画監督を始めた後、80年代に評価の高かった「未来世紀ブラジル」では編集に関して配給会社との間で大揉めに揉めました。著作にもその苦労話を書いています。その後も予算の問題であったり出演者が亡くなってしまったりで、実現出来なかった映画がいくつもありました。2000年には「ドンキホーテを殺した男」のロケ地が洪水に合い、出演者の故障も重なり断念し、この顛末も「ロスト・イン・ラマンチャ」として映画化しています。

そして本作ですが、「ダークナイト」のジョーカー役で強烈な印象を残したヒース・レジャーが主演で撮影に入りましたが、間もなく彼が急死してしまいます。彼の出演シーンは数多く残っており、完成が危ぶまれました。
ですが、ヒース・レジャーと親しかったジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルの3人が幻想世界のレベルが変わるごとに演じ分け、見事完成しました。
この主人公役が途中で交代するという離れ業により、映画はより魅惑的な仕上がりとなっています。

ちなみに、主人公役の交代の離れ業としては、トッド・ヘインズ監督が「アイム・ノット・ゼア」でボブ・ディラン役を6人の男優女優に演じさせていますが、その中にヒース・レジャーも含まれています。
 

ルネッサンス

(監督:クリスチャン・ヴォルクマン 声の出演:ダニエル・クレイグ 2006年 フランス)
近未来のパリを舞台にしたフィルムノワール(暗く退廃的な犯罪映画)ですが、ほぼ全編を白と黒の2トーンのアニメーションで描いています。フィルムノワールの映画にもコントラストの効いた暗い塗りつぶされたような画面作りが多々ありましたが、まさにハイコントラストの白黒2色イラストの人物が動きまわるこの映画では、黒い面は完全に塗りつぶされ時に何が描かれているのか分からない場面すらあります。

このモノクロ表現に最大の特徴がある本作ですが、画面作り(構図)、ストーリー展開、登場人物のキャラクター作りもとても巧くできており、フィルムノワール・ファン、ハードボイルド・ファンに留まらず、サスペンス映画ファンや、スタイリッシュ映像ファンの方も気に入られると思います。
 

ZOO

(監督:ピーター・グリーナウェイ 出演:ブライアン&エリック・ディーコン 1985年 イギリス)
とてもショッキングな映像を含む映画です。
交通事故で同時に妻を亡くした双子の兄弟が、動物の死体が腐っていく様の撮影に傾斜して行く話です。早回しで映し出される腐敗の美は、動きにコミカルさを漂わせますが、やはり嫌悪感を抱く人もいることでしょう。ご覧になる際は、くれぐれもご用心ください。

映画のストーリーからテーマを汲み取るのは非常に難解ですが、シークエンス(物語上の1まとまりのシーン)の紡ぎだし方、そして音楽や照明、映し出されている大道具・小道具たち。これら全てをまとまりの映像美として楽しむことができると、グリーナウェイ監督のファンになれることでしょう。評価が二分する映画監督の1人です。

この映画が気に入られた方には、グリーナウェイ監督「数に溺れて」もお勧めできます。
 

四つのいのち

(ミケランジェロ・フランマルティーノ 2010 イタリア/ドイツ他)
とても、とても、静かな映画です。南イタリアの山深い村で山羊の群れを追う老人。そしてその山羊、森の奥にそびえ立つ樅の大木、村の行事のために切られた樅から作られる炭。これらの繋がりをセリフもなく淡々と描き続けています。

人によっては退屈と感じる人もいることでしょう。しかし、人によっては、説明過多で目まぐるしく動き回る、見慣れたハリウッドスタイルに比べて新鮮さを感じることでしょう。
受動態でなく、こちらから能動的に「観る」ことを要求されているようにも感じます。画面の静かさに反して頭の中では思考し続けるかもしれません。

圧巻は、犬が山羊を逃してしまうエピソードを長回しで撮ったシーンです。これだけ何もなく、ある種のダイナミズムを感じさせてくれる映像に感服しました。
 

2001年宇宙の旅 / アルタード・ステーツ / インターステラー

・2001年宇宙の旅
(監督:スタンリー・キューブリック 出演:キア・デュリア 1968年 イギリス/アメリカ)
・アルタード・ステーツ
(監督:ケン・ラッセル 出演:ウィリアム・ハート 1980年アメリカ)
・インターステラー
(監督:クリストファー・ノーラン 出演:マシュー・マコノヒー 2014年 イギリス/アメリカ)
さて、最後にメジャーな映画を3本まとめて取り上げました。ただし、ここではこれらの映画のちょっと変わった点に着目してみましょう。

注目すべきは、主人公が異世界へジャンプする(跳ばされる)シーンの表現技術です。クライマックスでもあり、映像的に見せ場の1つです。
各々クセのある監督ですから、頭の中に強いイメージを描いていたことでしょう。しかし、いつの時代にも頭の中のイメージを完全に映像化することはできません。その時代、その時代の技術の中でしか表現できないからです。

「2001年宇宙の旅」は一般的に名作との呼び声の高い作品です。しかし、ボーマン船長が超えて行く時空の表現は、現代のCGを見慣れた目にはチープに映るでしょう。

その12年後に撮られた「アルタード・ステーツ」。この映画は今では忘れられた感もありますが、公開当時はSFファンの間では大きな話題になりました。生命の進化の記憶が1個体に詰まっているとして、それを遡ろうとする科学者の話です。ここでは画像加工が進みましたがまだまだチープ感は拭えません。

そして「インターステラー」。2014年、「アルタード・ステーツ」からは実に34年後に公開されたこの作品になると、ある程度監督を満足させる仕上がりになったのではないでしょうか。CGの進歩で抽象的なイメージ表現も豊かになりましたが、そこに頼りきらずに「本棚」と言う具象表現の使い方にも目を見張ります。

こんな観点から3作を見比べてみるのはいかがでしょう。

 

いかがでしたか?
感性を刺激する映画はもっともっとたくさんあると思いますが、今回は”少し変わった”映画を、様々な視点から選んでみました。

<今後の連載予定>
次回の【ちょっと一息。趣味の教室】は、『アイディア発想に役立つ本』をご紹介します。

 

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