【リモートワーカーで成功する人のコミュニケーション術 】最終回:未払いや支払いが滞ったときの対応法とは

自分のワークライフバランスにあった働き方ができるリモートワーク(在宅勤務・在宅業務)。一方で、クライアントの顔が見えにくく、コミュニケーションの取り方が難しいと感じているフリーランスの方も少なくありません。
“ストレスを感じることなくリモートワークに取り組める環境づくり”を目的に、ディレクションの立場にいる筆者が、実際の現場の声をまじえて“しっかり稼げる”コミュニケーション術を綴ってきたこの連載。最終回は未払いや支払いが滞ったときの対応法について紹介していきます。

支払い予定日には、必ず入金確認をすべし

リモートワークをする中で、「支払いが滞る」ということは少なからずあったとしても、未払いに関してはレアケースといえます。
筆者はフリーランス時代を含め、四半世紀あまりリモートワークをしていますが、実際に、未払いの憂き目にあったのは、3回だけです。

この3回。ひとつづつ説明していきましょう。

1件目のケースは、出版社が相手でした。
大手の出版社で、受注前に契約書も取り交わし、そこに納品日や報酬支払い日の記載もきちんとありましたが、振り返ると、そこに安心しきっていたことが未払いの原因でした。

納品後、当然支払われているものと思って特に入金確認をしていなかったのですが、ふと口座残高が少なすぎることが心配になったのが数か月後。通帳の項目と仕事を照らし合わせ、何が入金されていないかをチェックしたところ、この出版社との仕事分が未入金であることに気付きました。

そこで問い合わせたところ、なんと、仕事の依頼者だった方が亡くなっており……。
経理から「どの仕事の支払いがないのか、リストアップしてくれ」と言われたものの、過去のことを整理する時間がなかなか作れず、そのままになってしまいました……。

リモートワーカーの方の中には、同時進行で複数のクライアントの仕事を請け負っている方もいると思います。
仕事をこなすことに集中してしまい、支払いがあったかどうかの確認を怠ってしまうと、非常にレアなケースかもしれませんが、このように未払いになる可能性が高くなります。逆に、支払のタイミングで未入金が把握でき、指摘できれば、単なる「入金忘れ」ということもあるので支払ってもらえます。

また、「急ぎの仕事を知人経由で依頼され、なし崩し的に仕事がスタートしてしまった」というリモートワーカーも多いと思います。

そういうときこそ、「報酬が支払われない可能性がある」ことを念頭においてください
押印して取り交わす契約書が発行されない場合でも、「スケジュールを組むので、納品日と報酬支払い日を教えてください」と伝えましょう。口頭だった場合は、リマインドとして、メールに書き起こし「この仕事内容で受注いたします」と送ってください。

受注した業務は、エクセルなどを使ってリスト化し、依頼者、納品日、支払い予定日、支払い日の項目を作って、支払い日には必ず入金の確認する習慣をつけましょう

納品物に文句を付けられて、「支払わない」と言われた場合の対応法

2件目の未払いは、広告制作物の仕事で起こりました。
グロス受注の業務で、スタッフのキャスティングからディレクション、予算管理などすべてを担当する仕事でした。

しかし、あとはクライアントの最終チェックさえ終われば納品、という段階で「やっぱり、これじゃダメになった」という衝撃的な鶴の一声で「受け取らないので、当然、お金も払わない」と言われてしまったのです。

驚いたのと同時に、大変に困りました。関わってくれたスタッフは、筆者から発注していますし、作業はほぼ終わっています。
「クライアントがお金を払わないと言っているから私も払えない、ごめんね」は通用しません。

このとき筆者が最初に何をしたかと言うと、大手広告会社の法務の知人に、この手のトラブルの対応法を聞きました。
どこの穴を突くとこういうことがまかり通るのかを聞き、その穴を埋めるべく作業に取り掛かりました。

下請法を管轄する窓口にも相談しましたが、新産業であるIT系やマスコミの業務については「詳しい人間が少ないから精査に時間がかかる」とのことで、「文書にまとめて送ってくれたら見る(それはいつになるかは言えない)」という回答でした。
あくまでも私見ですが、リモートワーカーにとって、下請法は、あまり役に立たないかもしれません。

そして、これまでの業務を細かく洗い出し、書類にまとめました。
ここでも活躍したのがメールでのやりとりです。

リモートワーカーの場合、業務中のやりとりはチャットワークなどを利用する人が多いと思います。
ただし、チャットワークは、先方が消去すると、やりとりしていたタイムラインからも消えるというデメリットがあります。LINEもFacebookも、相手からブロックされた場合、こちらにアイコンが表示されなくなります。その場合、誰と話していたのか、というエビデンスは取れなくなりますので十分注意してください。

発注者への業務報告などは、必ず、メールで残しておきましょう
また、チャットワークやLINE、Facebookのメッセージの場合は、トラブルのやりとりの部分は、キャプチャしておいてください。万が一、トラブルが生じたときのエビデンスに使えます。

この件では、筆者は「最終段階まで作業をしたので、9割の報酬は当然受け取るべきもの」という主張をし、結局、8割の額で落としどころを付けました。
これにより、私のギャラは0円になりましたが、スタッフへの支払いはできました。

100万円未満の未払いに法律は役に立たない

最後の3件目。
このときの業務は、月決めで、報酬は翌月末払いでした。

5月分の仕事の支払いは6月末。しかし、入金がない。
確認したところ、「おやおや? すぐに入金するね」とのこと。しかし入金がなく、毎日のようにメールで問い合わせをしましたが、そのたび「振り込んだけど?」という返事。
7月末にも入金が確認できないまま、そして8月末、やはり入金はなく、この時点で3ヶ月分が未払いという状況になりました。

そして、「入金してくれないのであれば、もう業務はできません」というメールを送って以降、受注者からはノーレスです。
LINE、Facebookはブロックされ、電話も着拒否。やがて、電話は「解約されました」というメッセ―ジが流れてきました。

会社に行ってみたところ、鍵がかかっていて誰も出ません。倒産したようでした。

そこでまず、弁護士に相談しました。1時間で1万円の相談料です。
セカンドオピニオンを取るために、3つの弁護士事務所を訪ねましたが裁判はできるし、勝てるけれど、相手に支払い能力がなければお金は回収できない、とのこと。加えて、「でも、弁護士費用はかかるよ」と。

弁護士を立てずにできる少額訴訟の相談窓口も訪ねましたが同様でした。
「支払い請求はできるが、先方にはがきを出すだけだから、相手が受け取らなければ意味はなくなる。そして、相手に強制的に支払わせる権力はない」とのことでした。

つまり、どんなに時間と手間をかけて手続きを取ったところで「お金を払う気がない人からは回収できない」ということです。

そのときの私が請求したい額は100万円以下でした。
ほうぼうに相談しましたが「怒りを爆発させて手間と時間、お金のかかる裁判をするより、その分、頑張ってまた100万円稼いだほうがいいよ」という意見が圧倒的でした。

世の中には、誠実でない人がいくらでもいます。その人と関わってしまったことは不運ですが、リモートワーカーには、そういったリスクもなきにしもあらずです。

3件目のケースでは、5月分の支払いがされなかった6月末の段階で見切るべきでした。
年間を通して継続している仕事の場合「支払われないのであれば、作業の手を止める」というのも、リモートワーカーが守りたいルールのひとつです。

リモートワーカーは自由度が高い分、社会に守られていない部分も現状では多々あります。「想定外だった」ということがないよう、常に目配りをしながら充実したワークライブバランスを生み出していってください。

【リモートワーカーで成功する人のコミュニケーション術】
第1回:電話とメール、チャットツールの使い分け
第2回:レスポンスでの注意点
第3回:メールでスムーズにコミュニケーションを図る方法
第4回:契約書を取り交わすときの注意点
第5回:googleスプレッドシートを味方につける

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