「Digital 2019」の統計によると、アメリカのインターネットユーザーのうち「Youtube」を使っていると答えた人は82%にものぼり、Youtubeはもはやアメリカの国民的ソーシャルメディア（以下SNS）と言える状況です。今回のアメリカ編では、そんなYoutubeを利用し、自分の生き方を前向きに捉え、体やデザインを美しく導き自身も輝くアメリカの女性達にスポットを当てて、現代の女性リーダー像に迫っていきたいと思います。
目次
■ユニークな目線とコンパクトな作りが共感を生む大ヒット『フィットネス動画』
先の統計によれば、アメリカ人の95%（約3億1,200万人）がインターネットを利用しており、アメリカにおけるSNSのアクティブユーザーの割合は70％となっています。これは他の先進国の平均が50〜60％代であることに比べると、かなり高い普及率と言えます。
そんな中で、今年アメリカの『ネットインフルエンサー』に選ばれたのが、ベトナム系中国人のキャシー・ホー氏。今やYoutubeのチャンネル登録者数約461万5,000人で、タイム誌が選ぶ『ネットで最も影響力がある人物』を受賞しました。
彼女はピラティスを中心としたフィットネス動画をヒットさせました。
フィットネス動画がたくさんある中で彼女の動画が人気な理由は、多くが1回10〜15分ほどの動画で、忙しい現代女性の隙間時間を有意義に活用できること、また、ブライダル用や愛犬との運動用、運動しながら悩み相談といったユニークなテーマのもと利用しやすいことです。
１つひとつの動画が短時間かつ効率的なエクササイズになっています。さらに「ワンダーウーマンエクササイズ」や「セーラームーンエクササイズ」など、人気アニメの主人公を模したオリジナルエクササイズも投稿しており、若い女性たちに人気です。
家での運動は得てして怠惰になりがちですが、特別な道具なしで出来る上に、コンパクトでオリジナリティある彼女のエクササイズは人々を飽きさせることがありません。
ずっと洋服のデザインをやってみたかったという彼女は、ヨガウェアやヨガマットのデザインでも成功を収めました。フィットネス動画の序盤でそれらのヨガウェアやヨガマットを紹介はもちろん、その日のネイルや髪型までも紹介します。
単なるトレーニングではなく「映え」を気にしながら、気分を上げてトレーニングする心意気も伝わり、おしゃれ女子からも支持を受けています。おしゃれなヨガウェアやヨガマットを使うと、「モチベーションもアップする！」とポジティブなコメントが殺到し、動画のみならずデザインでの人気も伺えます。
■「女性目線」の生き方や働き方を捉えた、共感が成功のカギ
また、彼女はSNSを通して自身が経験した「摂食障害」や世間の「理想体型への圧力」について赤裸々に話し、女性達からの強い共感を得ています。
『ネットで最も影響力がある人物』と言われる彼女ですが、とにかくファンとの距離が近いのも特徴です。今も自身の体型に悩んでいること、働く女性として子供は持つべきかなど、プライベートな相談もファン達にSNSで公開。何百万といるファン達は、そのワークアウトだけではなく、彼女の考え方やライフスタイルまでもフォローしています。
両親から医者への道を強く希望されていた彼女でしたが、興味のない専門を学ぶことは自分の心とクリエイティブな能力を押しつぶす毎日だったと言います。
しかし、医学部在学中、両親のために生きることに嫌気がさし、自分の情熱へ素直になることにしたそう。その選択は『今までの人生で一番怖かった』と後のインタビューでも告白しています。
彼女は、今世界で一番有名なフィットネストレーナーの1人です。タイム誌に向けたスピーチでは「6パックの腹筋も、大きいプリプリのお尻もない、アジア系アメリカ人である（彼女は無理なトレーニングによる肉体改造に反対しています）。ありのままの私が世界に受け入れられたということに、感謝しています」と話しました。
キャシー・ホー氏のInstagram
■びっくり発想で子供達が夢中になるヨガ!! 『キッズヨガ』の第一人者
アメリカで『コスミックヨガ』を運営する、ハイメ・アモール氏。彼女は世界で最も有名なヨガ講師の1人で、アメリカで関心が高まる「キッズヨガ」動画を2012年から配信し続けています。
動画は、飽きやすい子供に合わせた15〜20分の短め時間設定で、まるでおとぎ話やゲームの世界に迷い込んだような構成で子供達から爆発的な人気を得ています。
彼女はその動画に主人公、かつヨガ講師として登場します。どんどん変わる背景や登場人物、映画やアニメの決めセリフに合わせ、彼女がヨガのポーズをしていくのです。
ハイメ氏はヨガ講師資格を取得前、ロンドンの歴史あるブリストルオールドヴィック劇場で演技を学び、その演劇力が動画にも大きく反映されています。
とてもコミカルな動きとオーバーな表情、ビビットな色合いとコンピューターグラフィックスを駆使した背景は、子供の興味をそそる内容です。
ヨガと瞑想を子供向けの楽しいものにしたいと情熱を注ぐ彼女。
動画の最後には必ず瞑想を入れ、「自分をありのまま愛すること」と、子供達に何度も何度も直接語りかけ、アメリカでは毎日16万人の子供たちが彼女の動画でヨガをしていると言われています。
口コミでは、「3歳の落ち着きがない息子が、20分の動画を最初から最後までやった！」とか、「子供達だけでヨガをやっている。動きは大人にはバカバカしく思えるが、子供への効果は抜群だ！」など、子供目線で作られた動画に高い評価が集まっています。
■「ターゲティング」が成功のカギ！ 計算され尽くしたデザインと構成
上述の2人を見てみると、その成功理由の一つとして、ターゲティングが上手く対象に合わせた企画とデザインを組み立てていることが挙げられます。
Youtubeでは動画のサムネイルが一番目に着く形式でアップロードされるため、サムネイルにおいてもターゲット層への訴求を魅力的にする必要があります。
例えば、ハイメ氏の動画は子供からの支持率は抜群です。サムネイルも色彩豊かでビビットにし、文字は少なめにすることで子供の視覚的興味をそそります。逆にホー氏は20〜30代女性向けに淡い優しい色使いで、フェミニンな大人の女性をイメージしたサムネイルが多くなっています。
しっかりターゲットを絞ったうえで、構成やデザインを行っていることがわかります。これらのような、計算されたターゲティングとデザインが閲覧数の増加につながっていることは、言うまでもありません。
■あらゆる経験を自分の強みに 現代の女性リーダー達
彼女達の動画は、訴求力と女性らしい目線に立った背景や小物のデザイン、色使いなど彼女達の細かいアイデアやこだわりが光ります。そして、視聴者に合わせ、短時間でテーマごとに構成し、隙間時間にトレーニングできることやワンクリックで手軽に何度も繰り返し視聴できることが、現代の忙しい女性や子供のニーズにぴったりと合ったのでしょう。
また、一見、関係性がないと思える自身の経験や能力も、デザインとの掛け合わせで最大限に活かしています。回り道とも思えるようなことも自身の強みに転換させました。
今、自身の夢とは異なる道にいる人や、並行して色々なことに挑戦する人へ、きっとその先へつながる道があるはずと言ったように勇気づけています。身体とともに心も磨いてくれる、一石二鳥のトレーニング動画として人気を博しています。
■まとめ
後編では、アメリカの国民的SNSであるYoutubeで活躍する女性リーダー達をご紹介しました。自身のアイデアや信念ととも、悩みまでもシェアするオープンな姿勢は、企業や仕事の枠を越えた現代の女性リーダー達の姿としてトレンドになりつつあります。
より身近に感じられる彼女達の姿は、今まで雲の上のような存在だった「経営者」という架空の偶像を打ち壊しています。それらが多くの人々の共感を呼び、彼女達の人気に繋がっているとも言えるのです。
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