
シリーズ最終回は、デザイン事務所、Webプロダクション、クリエイティブエージェンシーなどクリエイティブ系の会社を設立するための準備です。すでに会社設立を心に決めている方は、とても気持ちが急いていると思いますが、今一度落ち着いて様々な事柄を確認していきましょう。
フリーランス活動で予定の方も目を通してください。共通する部分はあると思いますし、逆に差異を見つけることでより明確にフリーランスの立場が見えてくると言えます。
目次
■起業とフリーランス、一番の違いは?
自分だけのたった1人の法人の場合は、連載第2回でも触れたように公私のケジメの意識が最も大きいように思います。
今回は自分以外の第三者を雇う法人について書きましょう。この「第三者を雇う」ことこそがフリーランスと最も違う点です。
1人であれ2人であれ人を雇うことはとても重大なことですし、また非常に労力を使うことです。
○従業員への責任
従業員を雇うことは大きな責任を負うことになります。その人の人生の一部を支えるわけですから。
法的に賃金、社会保険などで生活を支えるだけでなく、道義的に人生相談に乗る場面も出てくるでしょう。
○従業員との関係
会社内の人間的な距離感も意識しないといけません。
よく「部下と友達になってはだめ」と言います。馴れ合いになり過ぎるなと言う金言ですね。逆に一方的で良いはずもありません。会社員時代に責任を負うべき部下がいた方はある程度うまくこなせるでしょう。
○従業員の教育
従業員が育つことは会社が育つことでもあります。人的資源という言葉がある通り会社の重要な資源ですから、ある程度の成長計画は必要かもしれません。半年先には1人で○○ができるように、1年先には○○が任せられるようになど。
○従業員の目
会社員時代に「だめ上司」、「だめボス」と思う人はいましたか?自分を客観的に見てその人と本当に違うと言えますか?
あなたが良かれと思ったことが意図通りに伝わっているとは限りません。従業員の視点を思い出すようにしましょう。
■用意するもの、手続きなど
○法人登記
起業に当たっての手続きで最も厄介な事は法人登記かもしれません。
一般的な法人の登記について解説・説明しているサイト、書籍が多数あります。これらを参考に自分自身で登記することもできると思いますが、手間なようであれば司法書士、代理業者に依頼するのも一つの手段です。
○資本金
10年ほど前までは会社設立の資本金として最低300万円が必要でした(以前あった「有限会社」がこのパターンです)が、現在は1円でも株式会社を設立することができます。
しかし、資本金は会社が業務を行うための資金ですから慎重に検討が必要です。
○自社のロゴ、ブランディング
クリエイティブ系でもありますし自社のロゴは必須です。
会社の業種、規模にもよりますがある程度は「自社の業務内容、イメージ、規模、そして将来の展開」を考えてロゴを作ります。それを使って外部へ自社をアピールしていくことがブランディングになります。
ロゴ制作が得意でない方はプロに発注しましょう。
○部屋、スペース
従業員を雇う場合を想定してお話ししているので、この場合においては自宅以外に部屋を借りることが望ましいでしょう。
クリエイティブ系に多い小規模企業では個人向けのマンションを借りる方々も多いようですが、法人としての利用を事前説明し納得してもらうことが後々のトラブル回避になります。
※部屋を借りる時に確認すべき点
・賃料と広さのバランス
・間取り
-作業上の動線(入口、作業場、打ち合わせスペース、トイレ、キッチンなど)
-部下との仕分け
-打ち合わせスペース(クライアントの鉢合わせに備えるなど)
・交通の便(取引先への経路、自宅への経路)
・近隣の配慮(人の出入り、深夜作業の際の騒音など)
・感性もウリにしている事務所では見た目も大事
○上記以外、フリーランスの方と同じように以下のものも必要です。
・名刺、封筒、レターヘッドなど
・請求書、領収書、各種事務書類
・印鑑、スタンプ
・事業用のメールアドレスを作成
・クレジットカード、ローン、年金、保健など
・ポートフォリオ
参照:優クリ-Lab for Creator【フリーランス・起業への道 第2回】
■目指せ!一国の主人=会社の定款
会社を設立するには定款が必要です。会社に取って最も基本的な礎石となるものです。
2名、100人、1,000人を越えるもの、どんな規模の会社でもその礎石から未来へと向かっているのです。これは会社を支える精神的な礎になります。法的にも一応ここから逸脱しないように決められています。
どんな国の主人となるのか、よく考えてください。
■資金計画
第1回目の[6]で資金を計算することの重要性を伝えましたが、さらに法人となればより重要な意義を持って来ます。
○開業資金
開業前に準備する上記の「用意するもの、手続きなど」にかかるお金です。
○運転資金
会社を運営していく上で毎月毎月かかるお金です。人件費、光熱費、通信費、交通費、材料費、消耗品費、福利厚生費、、、などです。人件費や部屋の賃貸料など売り上げに関係なくかかる固定費に注意が必要でしょう。固定費が多いと売上が少なくなった場合にすぐ響いて来ます。
また、第2回でも書いた通り、クライアント側からの支払いにも充分気を使ってください。手形での支払いなんてこともあります。筆者はこれで痛い目に合いました。。。
なお、資金は、すべて自分で賄わなくとも設立計画がきちんとしていれば、公的機関や金融機関から借り入れることも可能です。
■広告
業種によっては広告も必要でしょう。しかし設立から不必要に費用をかけるのは避けたいものです。
最近であればインターネット利用でお金をかけずに宣伝できると思います。ただし今時、HPを作っただけで仕事が来るほど甘くないと言うことはお分かりだと思います。アイディアを出しましょう。
■会社にとっての人間性
最後に筆者として最も必要だと思えることを記しておきます。
会社はただ単に利益追求ではダメだと思います。世の中に還元できる仕事を目指して欲しいと思います。
きれいごとと捉える方もいるかもしれませんね。しかし、これと同様の事を京セラの稲盛和夫さんがおっしゃっています。「稲盛和夫 人間性」で検索すると幾つかの記事がヒットすると思います。ぜひご覧ください。
3回に渡って独立の準備に関してお話をしてきました。会社員ではない厳しさを乗り越え、独立の楽しさを感じ、さらには夢を手に入れる。これらの参考になることを望みます。幸運を!
【連載1/3】 独立を考えたらチェックする7項目
【連載2/3】 フリーランスになるには
【連載3/3】 起業するには
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