【ちょっと一息。趣味の教室】世にも奇妙な人々~クリエイターなら読んでおきたい本

クリエイターの感性を刺激する映画や書籍などをご紹介するこのコーナー。
今回は読書の秋ということで、4冊の書籍をご紹介します。どの本も驚くような実在の人物を描いたものです。「こんな人もいるか」と驚くか「自分に比べたら大したことはないな!」と感じるか、まずは手に取ってみてください。いずれも読み始めたら引き込まれるようなものばかりです。
どの本もamazonなどのオンラインショップで入手できますし、公立の図書館でも比較的在庫しているようです。ぜひ検索してみてください。

 

たった一人で巨大理想宮を作り上げた男!

『郵便配達夫シュヴァルの理想宮』(著者:岡谷公二/河出文庫)

今回の特集の最初を飾るにふさわしい、あまりにも奇妙な人物の話です。題名の通り、ある郵便配達夫の人生を紹介しています。

フランスの田舎町で来る日も来る日も郵便配達のために歩き続けていたシュヴァル。
彼はある日、石に躓きます。

見ると奇妙な石。

シュヴァルは帰宅後に道具を持って戻ります。そして掘り出した石によって彼の人生は大きく変化を遂げることになりました。
この石に触発され33年かけて、たった一人で驚くべく宮殿を作り上げたのです。
建築の専門家でも石工でもない彼は、見よう見まねの自己流で2階建ての、もちろん人が入れる宮殿を作りました。宮殿の名にふさわしく建物のあちこちには多くの彫像・装飾で飾られていますが、一部の人からはガウディを凌ぐとさえ言われるこれらの彫刻も全て彼のオリジナル製作なのです。

シュヴァルは言います。
「想像を絶する幻の宮殿を、並みの人間の才能が思いつく限りのもの(洞窟や、塔や、庭園や、城や、美術館や彫刻)を建て、原初の時代の古い建築のすべてをよみがえらせようとしたのだった。」と。

コツコツ、コツコツと33年もの間、たった一人で「想像を絶する幻の宮殿」を夢見て製作を続ける郵便配達夫。この真実の物語に皆さんも驚愕することでしょう。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%AB%E3%81%AE%E7%90%86%E6%83%B3%E5%AE%AE より)

 

目を見張る一大絵巻を描き、謎の失踪!

『君は墨田川に消えたのか ~藤牧義夫と版画の虚実~』(著者:駒村吉重/講談社)

ちょっとした事から版画家・藤牧義夫が描く隅田川絵巻を知り、まずはその絵巻に驚嘆しました。1930年代の隅田川両岸を延々と素描した、全4巻・全長60メートルにも及ぶ大作です。タイミングが合わず展覧会は見逃してしまいましたが、そのためか妙に気になりネットで藤牧義夫を調べていたところ、本書を知りました。本の解説にあった「失踪」と言う言葉を特に気にかけることなく読み始めると、読むのが止められなくなりました。ミステリー小説のようです。

24歳で突然「失踪」するまでの不遇な人生を綴り、そして後年明らかになった生前のミステリーに陽を当てるノンフィクションです。
本書を読む限り版画家としての才に恵まれていた藤牧義夫ですが、時代が、そして運命の巡り合わせが悪かったのか、大成することなく雨の世を境に忽然と姿を消したのです。失踪する前年に隅田川絵巻を描いています。そして、遺された版画のほとんどが贋作という謎が明らかになります。

作者は当て推量で容疑者を特定していません。
しかし読み進むうちに、誰の頭にも怪しい人物が思い描かれます。犯人探しに終始しない態度が逆に版画家・藤牧義雄へのリスペクトを感じました。

読後、作者と同じく「おーい、きみはどこへ行ったんだい」と言う気持ちがこみ上げます。

 

謎の楽器テルミン、その作者はさらに謎多き人物だった

「テルミン ~エーテル音楽と20世紀ロシアを生きた男~」(著者:竹内正美/岳陽舎)

『テルミン』という楽器をご存知でしょうか?弦を弾いたり鍵盤を叩くことなく、空中で手を動かすことにより音階を調整する楽器です。ロシアのレフ・テルミンによって1920年に開発されました。
無段階に音階が変わるので、ラジオのチューニング音のようなヒュル~ヒュルルル~と言うゆらゆらした音を発します。

有名なところではビーチボーイズの「グッドバイブレーション」に使われています。50年代のアメリカ製SF映画音楽でも重宝されていました。1951年のSF映画「The Day the Earth Stood Still(邦題:地球の静止する日)」のテーマ曲としてバーナード・ハーマンも使用しています。
日本の音楽シーンでは、近年、コーネリアス(小山田圭吾)、高野寛などが使用し話題になりました。

テルミンを演奏するレフ・テルミン
(テルミンを演奏するレフ・テルミン(1924年) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%AB%E3%83%9F%E3%83%B3

本書はそんな楽器テルミンの生みの親テルミン博士の不思議な人生を、数少ないテルミン奏者でもある竹内正美氏が描いたものです。

レフ・テルミンは優秀な科学者として栄光に包まれた輝かしい実績を築きましたが、スターリン政権下の粛清の嵐に巻き込まれ暗転した後半生を送ります。博士本人も不思議な人物であったと思えますが、時代に翻弄された数奇な運命はまさに1950年代のアメリカ映画を見るようです。
「テルミン」のタイトルで映画化されDVDも出ているので合わせて観るとより感慨深く捉えられるかもしれません。

 

可笑しくも思える、天才たちの数学との戦い

「天才の栄光と挫折~数学者列伝~」(著者:藤原正彦/新潮選書)

最後のこの本では、一気に奇人を9人紹介しています。
とは言っても数学が好きな方ならいずれもご存知の大数学者の面々です。

万有引力の発見だけでなく数学でも微積分法の発見をしているアイザック・ニュートン、天才的なヒラメキのインド人数学者シュリニヴァーサ・ラマヌジャン、コンピュータの原型とも言われるチューリングマシンのアラン・チューリング、江戸時代の和算家(数学者)関孝和、、、。

遥か彼方に栄光の光があると信じて黙々と日々研究し続ける、いや研究せずにはいられない天才数学者たち。最終的に輝かしい業績を残したことで天才として名を残す数学者たちは、その過程で幾度も失意と挫折に打ちひしがれていたのでした。

例えば、ラマヌジャン。彼は数学以外があまりにもできずについに退学をさせられ、後に英国ケンブリッジ大学に招聘されましたが、英国の地が合わずに病気になり帰国し亡くなりました。渡英中ヒラメキによる多くの数学的発見しましたが、証明という概念を持たなかったため、他の数学者が証明し没後に偉業が認められました。著者の数学者 藤原正彦氏は「なぜそんな公式を思いついたのか見当もつかない」と驚きを隠しません。
極めて個性的な天才たちの行いに驚嘆し、時に胸を締めつけられ、時に笑いを誘われます。

 

今後の連載予定
【ちょっと一息。趣味の教室】
『クリエイターなら観ておきたい映画』
~感性を刺激する映像体験~

 

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