第3回【編集ライター】経験者が戸惑うWeb媒体のギャランティと締め切りの違い~紙媒体出身者がWeb媒体で注意すること~

紙媒体出身の編集・ライターがWeb媒体の仕事に携わる際に注意すべきポイント。第3回の今回は、フリーランスの方であれば、皆が気になる「ギャランティ」についてと、「締め切り」の違いについて開設します。

連載いただくのは、第1回から執筆をされた簗場久美子さん。
ご自身も、紙媒体での編集・ライティングからWeb関連へのキャリアチェンジ経験があり、現在はWeb関連のコンサル・ディレクションでも活躍されているほか、セミナー等でWebライターの育成も行っています。

Web媒体における1記事の単価

スマホ端末の普及により、Web記事のフォーマットは、読みやすさの観点からジャンルを問わずほぼ画一化されてきました。キュレーション、インタビュー、取材ものから占いまで、文章がメインとなる記事は、どれもタイトルと本文内の見出し、そして本文に関連画像が配置されるという構造です。

そして、1記事の文章量も、おおよそ決まっています。一般的には1000文字から2000文字ほど。文字数が少ないとSEO的に不足であり、また、文字量が多すぎると、ユーザーが「読み飽きる」要因になるからです。タイトルなどに、総文字数を記載、可視化して、記事を検索したユーザーの「読むハードル」を下げている媒体もあるくらいです。

では、その単価はいくらでしょう。

現在の相場感としては、著名な作家やコラムニスト、ネット有名人や専門家が特別な記事を書く場合を除くと、500円から25,000円といったところでしょうか。
相場というのにはおこがましいほど幅がありますが、これが現状です。自身のSNSへの流入を目的に、他媒体に記名記事を無償で提供している方もいます。無償で記事を書いてくれるライターさんもいる。そういった概念があるため、Web媒体からの記事依頼は安価な場合が少なくありません。

紙媒体でライターの仕事をしながらWeb媒体に寄稿している人は、「Web媒体の単価が安すぎて驚く」「どうしてその価格で記事が制作できると思えるのだろうかと疑問すら沸く」といった声も聞こえます。

同様に、紙媒体の編集者からWeb媒体編集者になったばかりの人からは、「この価格で記事を書いてくださる方がいること自体が信じられない」「記事クオリティは担保したいが、紙媒体出身のライターさんには安価すぎてお願いしにくい」と愚痴ともつかない言葉をよく耳にします。

紙媒体の編集者、ライター経験者にとって、いちばん戸惑うのが、Web媒体の「記事単価の相場」かもしれません

紙媒体経験者だからこそ、自分ならではの「Web記事執筆の取り組み方」を持とう

この連載の第1回で、プロのWebライターは少数、と書かせていただきました。その中には、低価格でWeb記事を書きながら自身の執筆スキルを高めている方も多くいらっしゃいます。この方々と、紙媒体経験者の「書ける」ライターさんは、戦いにくい状況でした。しかし、「二足のわらじ」でライターさんをされている方々のスキルアップを受け、最近の傾向として、PV数によってインセンティブの支払いをするキュレーション系のWeb媒体が増えてきています。良質なライターさんの確保のためです。

これは、連載の第2回で書かせていただいたことですが、現状では、Web記事の質の指針はPVです。PVが多ければその分の原稿料が上がるというのは、ある意味健全なことだといえます。
キュレーション系サイトの原稿は収入的に見合わないのでは…というように思っていた「書ける」ライターさんにも、挑戦しがいのある環境ができつつあることを、まずは心にとめてみてください。

受注するときに指針にすべきこと

Web媒体で仕事をする際、気持ちよく仕事をするためにもっともよい方法は、時給換算することです。

原稿を書くためには、まず、単純に「キーボードに文字を打ち込む」時間がとられます。そして、原稿を書くための事前のリサーチ、構成づくり、校閲、納品までがWebライターの仕事です。全体として、どのくらい時間がかかるのか。それを時給換算すると、いくらになるのか。そして、それは納得できる価格なのか。

もちろん、実際に仕事を受けてみないと、どれくらいのレベルの原稿を各媒体が求めているのか、そのクオリティ判断は難しいかもしれません。仕事をしたい媒体をみつけたら、おためしのつもりで、書いてみることをお勧めします。意外と編集者とのやりとりに時間がとられたり、終わったと思った仕事の修正依頼が「至急」で戻ってきたりする場合が少なくないのもWeb媒体の“あるある”です。

締め切りのあいまいさに臨機応変に対応する

書籍でも雑誌でも、紙媒体には、「発売日が絶対に動かせないもの」として存在します。Web媒体では、それが比較的流動的。
また、Web媒体の場合、原稿をとりまとめる人が、「Web編集者」ではなく「公開作業担当者」ということも多々あります。そして、1日に数十の記事を公開させているWeb媒体ではとくに、記事を受け取ったものの、作業のタイミングで原稿をはじめて確認するということも。そのため、上で書いたとおり“終わったと思った仕事の修正依頼が「至急」で戻ってきたり”するのです。

紙媒体では「入稿」という作業工程があり、このタイミングで仕事完了を実感できますが、Web媒体の場合、仕事完了は、記事が公開された日ともいえます。その点も、紙媒体とはしくみが違います。知識として持っていると、気持ちにさざ波が立つことも避けられるでしょう。

 

<プロフィール>
簗場久美子(やなばくみこ)
四半世紀以上にわたり、女性誌やライフスタイル誌など、多くのメジャー紙媒体で編集・ライティングに携わる。現在はコラム執筆他、Webマガジンのコンサルティング、ディレクション等で活躍。未経験者のWebライター育成にも尽力、実践的レクチャーに定評がある。

『紙媒体出身の編集・ライターがWeb媒体で注意すること』シリーズ
第1回【編集ライター】紙媒体出身者がWeb媒体で注意すること~キャリアチェンジの心得~
第2回【編集ライター】仕事の受け方・編集とのやりとりの違い~紙媒体出身者がWeb媒体で注意すること~

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